Camiceria Piccirillo – ビスポークと同じ工程で作られる既製シャツ

Camiceria Piccirillo カミチェリア・ピッチリーロ、この小さなナポリシャツのブランドをご存知の方はおそらく殆どいないはずです。

なぜなら今回プロフェソーレ・ランバルディ静岡がオーダーしたものが、日本初上陸のCamiceria Piccirillo カミチェリア・ピッチリーロのコレクションとなるからです。

しかしこの無名とも言えるブランド……正確にはビスポーク専門のカミチェリアの作るシャツは、おそらく日本のナポリ製シャツ好きの皆さんのイメージを覆すことでしょう。

それは今までのナポリ製シャツとは、全く似て非なるものなのです。

Camiceria Piccirillo カミチェリア・ピッチリーロ

まずはこのカミチェリアがどのようなものなのか、紹介いたしましょう。

ナポリ旧市街の有名なスパッカ・ナポリが尽きて、ドゥオモ通りを横切ると、その先にヴィカリア・ベッキア通りという庶民的な通りがあります。その途中にひっそりと佇むのが、Sartoria Piccirillo サルトリア・ピッチリーロです。

実はこのサルトリアは兄弟経営で、ジャンニ・ピッチリーロがスーツを仕立て、マウリツィオ・ピッチリーロが同じそのサルトリアの中でシャツを仕立てているのです。

キートンやチェザレ・アットリーニなどのブランドはもちろんスーツやジャケットと同時にシャツも展開していますが、ナポリのサルトリアの多くはシャツを作ることができません。

しかしPiccirillo ピッチリーロ兄弟はそれぞれが自分の仕事に情熱を持ち、それぞれのバックヤード工房を持ちながらも、同じ小さな屋根の下で働いているのです。だからSartoria Piccirillo サルトリア・ピッチリーロが同時にCamiceria Piccirillo カミチェリア・ピッチリーロでありえるというわけなんですね。

彼らはあるときは二人でひたすらジャンニの顧客のスーツのためにハ刺しを縫い続け、あるときはマウリツィオのシャツの仮縫いで二人してああだこうだ言ったりしている。

さらに一緒に働いているのは、主に二人の青年。二人ともPiccirillo ピッチリーロの家族です。サルトリアにはしょっちゅう彼らの家族や親戚がやってきて、なんだかんだ喋っては帰っていく。

一体誰なのか詳細不明のおじいちゃんがなんとなくサルトリアの中で椅子に腰掛けて仮縫いをぼんやり見ていたり、近所の超有名ピッツェリア「ディマッテーオ」の親方(こちらも親戚)が適当に座って話をしていたりする。

ナポリ現地の洒落者達がこよなく愛するこの兄弟の店は、私がナポリで見たいくつものサルトリアやカミチェリアの中でも最もナポリらしく、ある意味では懐かしささえ感じる本物のサルトリア・ナポレターナとカミチェリア・ナポレターナなのです。

ビスポークと全く同じ工程で作られたハンドメイド・シャツ

このシャツはそんな工房ピッチリーロのマウリツィオに特別にお願いして作ってもらった既成シャツ(着用画像のシャツはサイズを私に合わせてあるオーダー品ですが、仕様や作りは同じです)。

マウリツィオは基本的にはビスポーク専門のシャツ職人ですが、以前からプロフェソーレ・ランバルディ静岡のinstagramを見てくれていたらしく、私の店で展開することにはとても乗り気で、既製シャツを心よく引き受けてくれました。

ちなみにマウリツィオの顧客はナポリの上流階級の人々だけではなく、一般庶民も少なくありません。そのため彼の作るシャツにはクラシックなものだけでなく、若者のオーダーによるキャッチーなものや、ちょっと変わったデザインのものも少なくありません。

しかし彼は常に真剣にシャツと向き合っており、どんなシャツであっても丁寧に、オーダーする人の意志を汲みながら作っています。

今回私がオーダーしたシャツは、「クラシック」の一言で済まされてしまいそうなベーシックな仕様です。しかしそのおかげで、Camiceria Piccirillo カミチェリア・ピッチリーロの本気とも言えるシャツが出来上がったわけですね。

そしてこれはおそらくナポリでも最高峰の既製シャツでしょう。

ビスポークと全く同じ工程で作られるシャツはふんわりとしたギャザーが美しく、驚くほど立体的でエレガントな雰囲気です。

ビスポーク専門カミチェリアだからこそできる大胆ないせ込みは、可動域をぐっと大きくしており、デスクワークでも車の運転でも、全くストレスを感じません。

袖付けやボタンホールはもちろん、ヨークやガゼット、前立てなどを手縫いでこなしていますが、ただ手縫いというだけでなく、全てが丁寧にこなしてあります。

ボタンは千鳥縫い。前たてのステッチは途中で止めるのが普通ですが、別注で上まで全て縫い上げてもらっています。これはセンツァ・クラヴァッタの時に美しいアクセントとなって、特筆すべき陰影を生み出すからです。

美しいシルエットにはそのビスポーク的な美意識を感じ取ることができます。ビスポークでシャツを作るときには、必要な部分にたっぷりと余裕を作るのが非常に重要ですがそれと同じだけ、必要ない部分をしっかりとスマートに作るのが大切です。

そしてCamiceria Piccirillo カミチェリア・ピッチリーロのシャツは、そのあたりが非常に大胆かつ繊細で、メリハリの効いたシルエットとなっています。

襟型はナポレターノ達が愛してやまない、大きめのワイドスプレッド。ジャケットを着たときに襟の収まりが良い、生粋のクラシックです。ネクタイをしても、しなくてもエレガントな雰囲気です。

Camiceria Piccirillo カミチェリア・ピッチリーロのコレクション

現在プロフェソーレ・ランバルディ静岡では、Camiceria Piccirillo カミチェリア・ピッチリーロによるコットンリネンのシャツコレクションを展開中です。

今回セレクトした生地は、極上のコットンリネン。さらりとしたリネンの手触りと生地感の生きたファブリックでありながら、コットンとミックスのためハリがあってドレッシーな雰囲気も漂います。

ナポリでは年中通して着られているコットンリネンは、本物のエレガンスを知る洒落者のためのシャツと言えるでしょう。

それにしても、もう8月も中旬。他のお店では秋冬物、例えばフランネルの案内が始まっている季節です。それなのにどうしてコットンリネンなのか。

ともすると日本では夏の終わりや秋の始まり頃から、無理や我慢をして秋冬物を先取りしようとしがちです。しかし本当の優雅さは、その季節と気候を楽しむ余裕にあるのではないでしょうか。

そして秋の合い物ジャケットに合わせるコットンリネンのシャツほど、余裕を感じられるアイテムはないでしょう。

だからこそ、この時期にコットンリネンのシャツを提案させていただくのです。

Camiceria Piccirillo カミチェリア・ピッチリーロが一枚一枚と向き合って生み出すこのシャツを、ぜひあなたも体感してみてください。

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