どんなものにも利点と欠点がある。完璧なものは稀有だ。
色も同じだ。どれほど美しく、魅惑的な色にもある種のDifetto=欠点が存在する。素晴らしい発色と引き換えに僅かながらエレガンスを失ったり、鮮烈な存在感が他の色とのコンビネーションを阻害したりする。
しかし一つだけ《Colore Impeccabile》非の打ち所のない色 が存在する。
グレーだ。
この「色のない色」はスーツ生地特有の光沢がもたらされることで、単体でも素晴らしい存在感を持ち、かと言って何一つ拒むことない完璧な色になる。
ということで、ランバルディの生地棚から選ばれた生地を夏のスペシャル価格でご紹介するサマーセール=Rambaldi’s Stock「ランバルディの生地棚」第五弾だ。
第二弾《Breathtaking Vintage》息を呑むビンテージ
第三弾《Unique & Secret Classic》門外不出のクラシック
(売り切れと表記が無くても既に商談済み、売り切れの物が多々あるので、まずはお問い合わせ頂きたい)
Colore Impeccabile No.1《GRIGIO ESTIVO》
完璧な色は稀有だ。しかしそれ以上に珍しく、手に入れるのが難しいのは「美しい春夏物のスーツ生地」だ。
こればかりは美しいグレーの1963年式フェラーリを手に入れるくらいに難しい。だからこそ私はこの生地をこれまで隠し通してきたし、いつか自分のスーツを作ろう….という信念を今の今まで曲げることがなかったのである。
往々にして春夏のスーツは、美しく柔らかい代わりに繊細すぎて仕立て映えしないか、仕立て映えするかわりに艶やかに欠け存在感がないかのどちらかだ。
しかしこの生地に関しては….完璧だ。約260g/mと軽いのにもか関わらず生地に腰があって、上質なウーステッドならではの強さを感じる。手にした瞬間に感じる軽快さと、その後しっとりと伝わる目付けの良さ。二つの相反する要素がまるで魔法のように秘められた生地だ。
それにこの華やかな光沢と滑らかな手触りだ。こんなにも官能的で、しかも実用的な春夏ウールには中々出会うことができない。
だがこの質感はある意味当然なのだ。なにも驚くことはない。なぜならこれはあまりにも希少な、古いエルメネジルド・ゼニアのウーステッドなのだから。(まだ自社ブランドでスニーカーやブルゾンを売ることに熱中する前の、あの伝説的なゼニアだ)
あまりにも惜しい生地だからこればかりは売れて欲しいような、売れ残って欲しいような複雑な気持ちである。
—————————————————————————-
Sartoria Piccirillo スーツ MTM 生地・仮縫い&中縫い込み SOLD
この生地を最もよく生かしてくれるのは、マエストロ・ジャンニ・ピッチリーロだ。
仮縫いと中縫いもサービス。仕立てて後悔はない。後悔するのは生地を手放してしまう私の仕事だからだ。
—————————————————————————-
Colore Impeccabile No.2《Pied de Poule》
エレガントさではNo.1のゼニアに叶わないかもしれないが、個人的に最もよく着るグレーはこのPied de Poule=千鳥格子だ。
千鳥格子ほど多様な側面を見せてくれる色柄はない。特にそれがモノトーンであるグレーにもなればなおさらだ。
単調なソリッドのグレーと同じようにスーツで着こなすことができるにも関わらず、着こなしを工夫すれば崇高な英国のビスポークのオマージュに見せることもできるし、あるいは軽快にイタリア的な雰囲気を醸し出すことも可能だ。
また通常のウーステッドであれば難しいジャケットの単体使いも非常に容易になる。デニムやチノパンに合わせて、それにグレー無地のトラウザーに合わせて着こなすにもソリッドよりも数倍着こなしやすい。
これは私たちが親しみを持って愛するHarrison’s of Edinburghのフロンティアという300g/mの生地で、実用的かつエレガントな絶妙なラインを突き抜けるウーステッドだ。(Holland & Sherryにおけるクリスペアのようなものだ)
強撚糸なのでシワに強く通気性が良い。また腰が強くてスーツになったときに描くラインは実に立体感に富んだものだ。かといってよくあるフレスコ生地のように沈んだ風合いではなく、滑らかな風合いと優雅な光沢を兼ね備えている。
この絶妙なバランスを、私たちがどれほど強く求めているか思い出して欲しい。そうすればこの素敵な千鳥格子が、もっともっと魅力的に感じられるだろうから。
—————————————————————————-
Sartoria Caracciolo スーツ MTM 生地込み
—————————————————————————-
Colore Impeccabile No.3《OYSTER》
このOYSTERという生地もまた親愛なるHarrison’s of Edinburghのものだが、この生地にはちょっとした歴史がある。
というのもこのOYSTERという生地は以前別のブランド名(織元の名称)で売られており、その名前が一人歩きするほどにサヴィルロウのビスポークテーラー達に愛されていた。
そして時代が降りこの織元の生地がハリソンズの赤いバンチに収められるようになってからも、このシリーズだけは名前もそのまま、さらには生地の織りネームすら元々の織元LEAR BROWNE & DUNSFORDのものが付属している。
いかにこの名作生地が愛され、不変的な存在であるかをそれ自体の歴史が示しているのである。
だがメインの話題は常に……美しさだ。400g/mのウーステッドとはいかにも英国的だが、しかしこの艶感と奥行きのあるグレーの色合いは、英国のトラディションの枠を超えて感覚的に訴えかけてくる。
理想的なウーステッドに多くの言葉は必要がない。この染み渡るような上質な質感を一度手にすれば、一生忘れることができないからだ。(それに一度仕立てれば一生着ることができるだろう)
私がNicola Girdanoでスーツを仕立てるときは、こういう生地を見つけたときだ。ウーステッドの強さと仕立ての柔らかさが、ジェラートとコーヒーのように溶け合う様子を、肌で感じることができるからだ……。
—————————————————————————-
Nicola Giordano スーツ MTM 生地・仮縫い込み
—————————————————————————-
今回も1着分ずつ限定である。
お問い合わせはコンタクトフォームから。