ナポリ特別企画 #2 “Dreamy Loro Piana” from Sartoria Piccirillo

ここ数日私がよく分からぬ北イタリアでほっつき歩く写真をSNSで投稿しているのを見て、「もしかして店主は仕事をしていないのではないか」という懸念を持った人もいるかもしれない。

しかし安心してほしい。…..勿論やや仕事をしていない日があったのは事実だが……それは日曜日の話である。(北イタリアでどんな怪しいことをしていたかは、いずれ話すとしよう)

私にはナポリで素晴らしいものを見つけ、紹介するという仕事がある。そこでジャンニ・ピッチリーロのコレクションである。

今回は数ある彼のコレクションの中から、美しいロロピアーナの生地を選りすぐって紹介する。

ロロピアーナについて誤解している人も多いが、ロロピアーナのクオリティは素晴らしい。ナポリでは富裕層だけが着ることのできる超高級生地という扱いだし、事実その品質はIL CAPO(トップ)だと言われている。

ここには一つ、日本とナポリでの感覚の違いが働いている。

日本のビスポークの世界は、ある意味非常にマニアックでそれ自体が通好みの分野だ。だからビスポークする人はビンテージ生地や、とにかく目付の重い英国生地を選ぶことが多い。

それに対してナポリでのビスポークはあくまで贅沢品だ。誰もが知っているし、結婚式があれば誰もが一度は仕立てるし、それなりに豊かな人は日々の生活の一部として服を仕立てている。だから日本のビスポーク愛好家よりもよほど知識はないし、生地も一般的なものが好きだ。しかし慣れている分、非常に小慣れているしエレガントなのである。

そういう意味で私は、ゼニアやロロピアーナの生地もEUROTEXやビンテージ生地と同じ位お勧めしている。こういう生地を選ぶことは、ナポリの日常的なエレガンスに近づくことになるからだ。

そういうバックグラウンドを踏まえての、ロロピアーナ特集である。

①Loro Piana Dream Tweed Jacket

さて、良いツイードを見つけるのは難しい。しかしもっと不条理なのはこれほどまでに美しいツイードとなると、急に人々がツイードと呼ぶのをやめてしまうことである。

しかし幸いなことに今回の生地には織元であるロロピアーナが、DREAM TWEEDという素敵な名前をつけてくれている。そしてこれはまさに夢のようなツイードである。

かつてツイードがここまで贅沢だったことがあるだろうか?

勿論スコットランドの本格的なツイードの素晴らしさを忘れてはいけない。ツイードはUn Mondo(一つの世界)であり、一面的な魅力で優劣をつけてはいけないものである。

しかしロロピアーナの生み出したこのDREAM TWEEDに関しては少なくとも、世界で最も贅沢な風合いのツイードの一つだ。

贅沢な質感の高番手ウールにシルクを混紡することで、しなやかな中にざっくりとした新しい風合いを生み出している。見た目はまるでシェットランドウールのように表情豊かだが、手で触れればそれこそエスコリアルやカシミアのように柔らかい。

ツイードを探している人は多いが、美しいツイードを手に入れて….十分に納得いくような風合いが出るまでにはきっと21世紀も中盤に差し掛かっていることだろう。

それならば代わりに、この最も贅沢なツイードはどうだろう。仕上がったその日からしっとりと身体に馴染み、その瞬間から目を奪われるほど美しく、そして着込んでいくことで更に風合いを増す。

少なくとも私が思うところでは……実に素晴らしい選択だ。

②Loro Piana 100% Cashmere Twill Jacket

次はピュアカシミアのA Fare Dealといこう。なぜならロロピアーナのカシミアなどというものは、バンチから買おうものなら一財産崩さなければならなくなるような、超高級品だからである。

このジャケット生地もそうだ。350g/m程度の一般的なジャケット生地だが、カシミアの質があまりにも贅沢である。手の上に乗せると体温でとろけてしまうような柔らかさ、そして暖かな風合い。あまりにも通常のカシミアとはかけ離れたゴージャスさだ。

何を隠そう、これはロロピアーナのカシミアの中でも最上級なSuperchinaなのである。Loro PianaのSuperchinaというのは、ゼニアのインナー・モンゴリアンカシミアと同様、内モンゴルでのみ得られる最高級のカシミアを使用した文字通りロロピアーナの中でも最も高級なジャケット生地である。

どうしてこのような高級品がナポリの小さなサルトリアにあるのか、到底理解に苦しむほどである。しかしこの生地は…ここにある。

ロイヤルブルーにわずかな起毛感、そしてツイルの織り柄が非常に美しい。ほんの少しだけ色味の違う糸を混ぜているおかげで、シンプルな無地でありながら海のように無限に深い色合いを持っている。

この生地の使い方は自由だ。だが自分ならシンプルなシングルのジャケットにするだろう。ただしブラウン系の靴を愛用する人ならば、美しい水牛の茶ボタンをつけてもらうようにお願いすると良いかもしれない。実にエレガントなアクセントになるはずだ。

③Loro Piana Wool, Silk and Cashmere Jacket

これまでさまざまなホップサック生地を紹介してきたが、この色味と生地感はロロピアーナにしか織ることのできないものだ。

実にイタリア的でありながらcafóne(田舎者っぽい野暮さ)にならない、エレガントなジャケット生地である。

まず一目見て忘れることができなくなるのが、この美しい素材感だ。ウールにシルクとカシミアを混紡することで、非常に柔らかなカシミアの風合いにシルク硬質な光沢感と、ウールの腰の強さを加えている。

光を当てるとホップサックの織り目にシルクが浮かび上がる。この美しさを伝えるためにナポリの太陽を持ち帰りたいが….そうはいかないのが残念だ。

そして上品にメランジがかった色味も素晴らしい。深い青を基調に明るいブルーが浮かび上がる絶妙なトーンは、実に色気がある。比較的カジュアルなジャケット生地でありながら悪目立ちしないし、むしろ大人っぽい余裕すら感じさせる。

この美しい生地感で仕立てるジャケットは、シングルのいかにもナポリ的なパッチポケットジャケットでも良いかもしれないが、あるいはダブルのブレザーでも良いかもしれない。

ダブルブレステッドにチェンジポケットをつけ、マザー・オブ・パールのボタンを着けてややクラシックに仕上げるのはどうだろう。明るいクリーム色やグレーのトラウザーに合わせても、ボルドーのトラウザーに合わせても実にエレガントだ。

④Loro Piana Superchina 100% Green Worsted Cashmere

最後の生地だが…これに関しては実に紹介するのが惜しい生地である。

これは先ほども紹介した、ロロピアーナの最高峰ジャケット生地であるSuperchinaのカシミアウーステッドである。

しかしそれだけではない。これはジャケットに仕立てたとき、あまりにも美しい立体を描く合物ウーステッドスパンカシミアだ。先ほどの生地よりもさらにドレッシーで薄手に織られているので、ジャケットにした時に角が立つようなシャープな仕上がりになる。

カシミアの極上の手触りはそのままだが、生地感はまるでスーツ生地のようにしなやか。ジャケットに仕立てると非常に洗練された雰囲気になる上に、着込んでいくことで風合いが増していく。

そして当たり前だが、ロロピアーナである。いくら素晴らしい生地がたくさんナポリに存在するとはいえ、トップランクのカシミアはやはりロロピアーナしか織ることができない。

色味も素晴らしい。単調さを一切感じさせることのない優雅なグリーンと、上品な滑り感。これがジャケットになるところを見られる私は幸いである。しかしそれを着ることができる人は、もっと幸せだ。

※間違えてブラウンと記載しておりましたが、正しくはグリーンでした。大変失礼いたしました。実はブラウンも在庫していてうっかり取り違えてしまったのですが、その生地については商談中です。

ナポリ特別企画 #2 “Dreamy Loro Piana” from Sartoria Piccirillo

大胆なキャンペーンである。

実は来月1日よりサルトリア・ピッチリーロの工賃が値上げされることになったので、私も値段を改定するか悩みに悩んでいたところである。しかし結果として思いついたのは….キャンペーンだ。何故ならこういう鬱蒼とした情勢のときこそ、人の手によって作られる感動が必要だからである。

①Loro Piana Dream Tweed Jacket 通常生地代 58,000円 → 特別価格5,800円

②Loro Piana 100% Cashmere Twill Jacket 通常生地代 98,000円 → 特別価格10,000円

③Loro Piana Wool, Silk and Cashmere Jacket 通常生地代 64,000円 → 特別価格6,400円

④Loro Piana Superchina 100% Worsted Cashmere 通常生地代 98,000円 → 特別価格9,800円

上記の料金にSartoria Piccirilloのジャケット工賃を足したものが総額である。仮縫いと中縫いも今回はサービス(無料)としておこう。

勿論どれも1点ものの生地なので早い者勝ちだ。

お問い合わせはコンタクトフォームから。