“GOLD” ロロピアーナの黄金

あのギリシャの猥雑とした神話によれば紀元前8世紀のアナトリア、現在で言うところのトルコ中部にミダス王という人物がいた。

彼はその時代に栄えたフリュギアの王であり、大きな富と権力を持つ人物であった。しかしミダス王が満足することはなく、彼は常にさらなる財を求めていた。

あるとき酒の神ディオニソスが彼に欲しい報酬をなんでも選択するようにいった。

彼はある力を求めた。それは「どんなものにも触れれば黄金に変わる」という実に魅惑的な力であった。

ミダス王は歓喜し、そして己の新しい能力に陶酔した。

しかし彼の喜びは長くは続かなかった。

ミダス王が腹を空かせ食事を取ろうとすると、食べ物も水も全て黄金に変わり、口にすることができなかった。さらに彼が愛する娘に触れた瞬間、その力は彼女をも冷たく硬い黄金の像へと変えてしまった。

この瞬間、ミダス王は自らの欲望がいかに盲目であったかを悟ったのである。そしてディオニュソスに泣きついて許しを乞うた。

それからエーゲ海に程近いパクトロス川で禊を行うと、彼は富と贅沢を捨て田舎へと旅立ったのである……。

 

おそらくこれが、ゴールド(黄金)に関する最も有名な神話である。あのギリシャ神話の中ではずいぶんと訓戒じみた、「らしくない」話だ。

それにしても、「どんなものにも触れれば黄金に変わる」とはミダス王もまったく愚かな力を望んだものである。

私ならばそんな馬鹿げた力は望まず、このように願っただろう。

「どんなものにも触れれば黄金色のロロピアーナのカシミアに変わる力を私に授けてくれ」と………。

GOLD 黄金

結局(私が摂取し、消費している酒の量を鑑みれば腑に落ちないことではあるが)酒の神ディオニュソスは私に力を与えず、私の手が触れたものが全て黄金に変わることはなかった。

しかし言い伝えによれば2024年4月末頃、イタリア南部のナポリの街でエンツォ・チャルディにひたすら葡萄酒を飲まされて酩酊したプロフェソーレ・ランバルディ店主の携帯に「素晴らしいロロピアーナのカシミアが一着分あるが、買わないか」とメッセージが来た。

それは決して安いものでもなく、むしろ高いといってもよいほどであったが、しかし彼の側には酒の神ディオニュソスがいたのである。

彼はほとんど考えることもなく「Certo(もちろん)」と返信し、ここに一着分のGold 黄金が紹介されることになったのである……。

Loro Piana 100% GOLD CASHMERE

さて、これがそのゴールドである。

もちろん厳密に言えば美しいベージュのカシミアコート生地だが、ロロピアーナの美しいカシミアが上品で甘美な光沢を放つ時それはもうベージュではなくゴールドなのである。

あまりにも柔らかくしなやか、それでいて470g/mの肉厚感のあるゴージャスなコート生地。もう今のレートでバンチから買おうと思えばメートル10万円……1着分で30万円というのも決して大袈裟ではない価格になってくる。

だから巷のブティックではカシミアのコートが当然100万円を超える時代になっているし、そもそもそのレベルのカシミア自体お目にかかることが少なくなっているのである。

But here it is! (だがここにある)

あの天地創造の日の次にやかましいと言っても過言ではないチャルディ兄弟との会食の次の朝。

ナポリの狭いアパートメントで目覚めたら、無愛想なバイク便の青年が手渡してきた包の中に入っていたこの生地を見たときといったら、それこそ光あれ!である。

黄金。光り輝くカシミア。この美しい生地で仕立てたコートは一体どんな風格になることだろう?

私はこの生地を私に早々に送りつけた友人に感謝し、それからこの生地は絶対にどんな生地とも併せずに一着で紹介しようと心に誓ったものである。なぜならゴールドがシルバーと並べて売られることは無いからだ。

Loro Piana GOLD ロロピアーナの黄金 

Sartoria Ciardi Bespoke Trunkshow仮縫い付き チェスターコート
通常価格 785,400円 → 特別価格 540,000円(税込594,000円)

Sartoria Piccirillo MTM 仮縫い&中縫い付き チェスターコート
通常価格 675,400円 → 特別価格 440,000円(税込484,000円)

Nicola Giordano Eta D’oro(黄金時代のポロコート)仮縫い付き ポロコート
通常価格 583,000円 → 特別価格 350,000円(税込385,000円)

※チャルディ、ピッチリーロのポロコートはアップチャージのため別途お問い合わせくださいませ。

一着分のみの在庫のため、お早めに。

お問い合わせはコンタクトフォームから。