優雅なるヴィンタージュ・ジャケット(1) – Nicola Giordano 起死回生の物語

 

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Nicola Giordano 誰よりも愛するのは

ニコラ・ジョルダーノが言った。

「この名前で仕立てるジャケットには全て、私たちの最善の手仕事を施すことになる。それは実に限定的で、他に類を見ないような試みになるだろう」

これがNicola Giordanoというエクスクリューシブなブランドラインを設立したときの、最も重要な理念だった。しかし私はそのとき(今思えば実に英断だったと言えるであろう)一つのアイデアを彼と共有していた。

それは何かといえば、Nicola Giordanoを“アジア内に限って” Professore Rambaldi限定のブランドラインにするというアイデアであった。

最上クオリティのハンドメイド、極上のファブリック、トラディションを辿りながら革新を感じさせるシルエット。全てがあまりにも魅力的だったし、ヨーロッパやイタリア国内でこれをニコラ・ジョルダーノ本人が展開することで、彼自身が最高にこのブランドラインを愛するようになったのである。

だから新しく腕利の職人を迎え入れて彼が真っ先に取り掛かったのは、このNicola Giordanoのジャケットとコートだった。

仕上がったものは……まさに比類なきジャケットだった。

優雅なるヴィンタージュ・ジャケット

ナポリの社交界において彼らが最も重視するのはなにか。

車?時計?はたまたブランドバッグだろうか。残念ながら違う。

ナポリ屈指の富裕層であったとしても、金無垢のロレックスや限定モデルのノーチラスを街中で腕に巻くことは滅多にない。

真っ赤なフェラーリ・488スパイダーや、シャンパンゴールドのベントレー・コンチネンタルGTをコレクションしている愛好家も、街中では空中分解寸前のフィアット・パンダをぶん回している。

記念日にミッレ通りで買ったルイヴィトンのハンドバッグも、次の記念日がくるまでクローゼットに一番高いところに飾られてしまう。

しかし一つだけ彼らが毎日欠かさず身につけ、堂々と誇示しながら街中を歩くものがある。

それはジャケットだ。

彼らにとって装いとは、その人そのものである。自分の哲学や理念を表現してくれる最も根本的なアイテムだ。だから彼らは決してジャケットを手放さないし、ナポリのキアイア地区を歩けば思い思いの色柄のジャケットを身に纏って歩いている。

この文化はもう彼らの祖父や曽祖父の時代から変わらない。Nicola Giordanoが老練の職人を迎え入れて実現したのはまさに、そんな文化が花開いた1930年代〜60年代のジャケットである。ロンドンハウス的、ヴィンツェンツォ・アットリーニ的といっても良いスタイルだろう。

優雅なるヴィンタージュ・ジャケット。

あえてこう呼ぶことにしよう。Lo Stile Vintage  ロスティーレ・ヴィンタージュすなわちナポリ往年のビンテージ・スタイルを最も美しく現代に体現する服として、このジャケットが当店の定番に加わることになった。

Gran Bar Riviera – グランバル・リヴィエラ

ナポリで最もエレガントなキアイア地区の海沿いはRiviera di Chiaia リヴィエラ・ディ・キアイアと呼ばれ、数多くのブティックやバル、レストランが立ち並んでいる。

かの有名なピッツェリアであるSalvoはこの通りの271番地、1780年から続く老舗の紳士洋品店M.Cilentoは203番地、そして朝6時半からネクタイを売る奇特な店……E.Marinellaは287番地である。

さて、そんなリヴィエラ・ディ・キアイアをメルジェリーナ駅方面に少し歩いて行くと、181番地にGran Bar Rivieraがある。この生地を見たとき、私はついこの店のことを思い出した。なぜならばこの店にはいつも、こんなガンクラブチェックのフランネルジャケットを着た紳士がたむろしているからだ。

親愛なるFOX BROTHERS、悠久のフランネルよ……。

秋冬のジャケットについて執筆しようとすれば、上機嫌なゲーテが書いても不機嫌なボッカチオが書いても、書き出しはどうせこうなるものである。

そしてこの認識はナポリの紳士達は全員が持っている。だからGran Bar RivieraのカウンターはFOX BROTHERSのガンクラブチェック・ジャケットを着た男で満員になってしまう。

キアイア地区には数多くのブティックがある。世界屈指の品揃えを誇る高級香水店やハイセンスなメンズのブティック、ジュエリー店、ハイブランドのみを扱う眼鏡店……。

そしてそれらの個人商店のオーナー達は一人残らず洒落者で、このFOXのガンクラブチェックを着て、海沿いのグランバル・リヴィエラでシエスタ(昼休憩)を過ごすのである。

というわけでこの美しく艶やかなFOXのフランネルで彼らの仲間入りをしよう。

グレーのガンクラブチェック・ジャケットは、もはやデファクトスタンダードというべき存在だ。マリネッラを訪れる客の二人に一人はワードローブにこのジャケットを持っている。ブルーのデニム、白のチノパン、タートルネック、デニムシャツ、全てを受け入れてくれる。

ブラウンの方を選ぶなら、このジャケットを参考にすると良いだろう。

これはまた異なる生地を使って仕立てられたジャケットだが、ブラウンのガンクラブチェックの魅力を実に優雅に表現してくれている。

実にナポリ的、そしてキアイア的。

ヴィンタージュ・ジャケットの第1章としてこれらのフォックス・フランネルよりも適したものはないだろう。

Gran Bar Riviera – グランバル・リヴィエラ  2色(グレー/ブラウン)

Nicola Giordano Jacket MTO 通常価格 430,000円 → 年末特別価格 240,000円(+税)
※仮縫い付きMTMは20%UP

Alta Moda Italiana – アルタ・モーダの世界観

私が大昔、かのランバルディ夫人に出会ったとき当店にはまだ名前がなかった。結局この店は彼女と偉大なドクターの名を戴いてプロフェソーレ・ランバルディという名前になった。

「私の夫は最もエレガントな紳士だったわ。彼はヴィンツェンツォ・アットリーニのところで何着も服を作って、マリネッラのネクタイを結んでいた。ほとんどはもう片付けてしまって、ここに残っているのは一部だけ」 – ジュゼッピーナ

しかしそのとき、彼女は私の店にいくつかの名前を提案してくれた。そのうちの一つがAlta Moda Italianaすなわち「イタリアのオートクチュール」というものだった。

これはまさにアルタ・モーダ的なエレガンスを持った生地だ。実に洗練された引き算のグレンチェック。チェック柄の大きさも模様もあまりにも絶妙で、ミラノ・コレクションで見るようなモードさとサルトリア的なクラシックさの両方を併せ持っている。

手に触れれば圧倒的なクオリティと柔らかさ、そして艶やかさが一気に押し寄せてくる。それもそのはず、これはエルメネジルド・ゼニアのウールカシミアだ。濡れたような光沢がグレーに生き生きとした表情を与えているのも魅力的である。

生地自体は300g/mと重くはないが、実に目の詰まっている。しなやかさの中に力強さがあり、サルトが描いたラインを迷いなく描く意思を感じる。

とてつもなく洗練された世界観のこの生地がサルトリアの手仕事で生み出すのは、唯一無二の世界だ。それは完璧を求めるオートクチュールとは異なる、ハンドメイドの粋が作り出す世界。

ジュゼッピーナが提案してくれたアルタ・モーダとは、まさにこの世界観のことだった。私がその名前を店につけられなかった理由は単純だ。これほどまでにRaffinato(洗練された)世界観を、常に表現し続けられる自信がなかったからである。

(ちなみにこの生地はジャケットといいつつ、3mのカットになっている。本当にアルタ・モーダに挑戦したい人がいればスーツでも仕立てられるということである)

Alta Moda Italiana – アルタ・モーダの世界観

Nicola Giordano Jacket MTO 通常価格 445,000円 → 年末特別価格 249,000円(+税)

Nicola Giordano Suit MTO 通常価格 524,000円 → 年末特別価格 279,000円(+税)

※仮縫い付きMTMは20%UP

 

お問い合わせはコンタクトフォームから。

次回もジャケット生地をご紹介していくので、お楽しみに。