優雅なるヴィンタージュ・ジャケット(2) – Nicola Giordano 起死回生の物語

 

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今日もNicola Giordano 優雅なるヴィンタージュ・ジャケットのキャンペーンである。今日の生地は非常にユニークだ。それゆえに物語は長引くことになるだろう。

Homespun Dream – ホームスパンの夢を見るカシミアシルク

もうかれこれ12、3年も前のことだ。

12月のスコットランド・エジンバラ市街はいつものことながらひどく鬱蒼とした雲が掛かり、もの寂しい空気を漂わせていた。暗いグレーの旧市街、カールトンヒルのモニュメント、全てが寒々しかった。

しかしあの場所で私には二つの救いがあった。一つはパブで並々と注がれるパイントのビール、もう一つはスコットランド北部の田舎町で買った古着のツイードジャケットだった。

それは実に味わい深いジャケットだった。ホームスパンで色とりどりの糸で織り上げられたツイードはそれこそ柊の葉のようにチクチクとしたが、なぜだかいつも非常に暖かかった。仕立ては随分と粗雑だったし、サイズにしてもいくぶん大きかった。しかしあのジャケットの温かみを忘れたことはなかった……そのジャケット自体がどこに行ってしまったか、という点を除いては全てが鮮明だったのである。

この生地をナポリの生地棚で見かけたとき、私はまっさきにあのホームスパンのジャケットを思い出した。織りはこれよりも随分と荒かったが、色がそっくりだったからだ。

しかし生地棚から広げたとき、あの物語は終った。そしてこのあまりにも美しく、それでいて牧歌的な雰囲気を持ったジャケット生地が、全てを覆してしまったのである。

手織りされたかのようなホームスパンの空気、テラコッタの郷愁、それにカシミアとシルクの愉悦。

これは生地屋の主人が15年ほど前に仕入れた、Kitonのストックだ。極上ウールにカシミアとシルクが織り込まれた合物〜冬物の極上ジャケット生地である。目付けは300g/mと重すぎず、かといって軽すぎもしない絶妙さがいかにも「彼ら」らしい。

しかしなんといってもこの濡れたような光沢、そしてとろけるような手触りだ。あまりにもラグジュアリーである。そしてこれらが、私からあの愛すべきホームスパンのツイードジャケットの記憶をすっかり取り除いてしまったのである。

パイントのPale Ale、ごわごわのツイードのジャケット。Leith Walkを走り抜けるバス、タータンチェックのスカートを履いた紳士が奏でるバグパイプの Auld Lang Syne(ほたるのひかり)…….寂しいことにもう全て失ってしまった。

しかし嘆くことはない。ここにはクレマの立ったエスプレッソがある。太陽の光を浴びて輝くナポリ湾、メルジェリーナの街並み、そしてホームスパンを夢を見るカシミアシルクウールの極上ジャケット生地がある。

実に退廃的で愉悦に満ちた変化だ。

Homespun Dream – ホームスパンの夢を見るカシミアシルク

Nicola Giordano Jacket MTO 通常価格 450,000円 → 年末特別価格 272,000円(+税)
※仮縫い付きMTMは20%UP

 

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