Piccola Fantasia。子供の頃は、目に映る全てが小さな冒険だった。「常識」というものを知らなければ、どれほど科学的根拠のある世界でも幻想的な物語と変わりはない。
大人になればなるほど、人は賢くなっていく。それと同時にあのわくわく感を忘れてしまう。
だが幸いにも遊び心に溢れたジャケット生地は、心に小さな冒険を取り戻してくれる。そう、Piccola Fantasia(小さな幻想世界)を。
ということで、ランバルディの生地棚から選ばれた生地を夏のスペシャル価格でご紹介するサマーセール=Rambaldi’s Stock「ランバルディの生地棚」第四弾である。
第二弾《Breathtaking Vintage》息を呑むビンテージ
第三弾《Unique & Secret Classic》門外不出のクラシック
(売り切れと表記が無くても既に商談済み、売り切れの物が多々あるので、まずはお問い合わせ頂きたい)
Piccola Fantasia No.1《LINO D’ARGENIO》
ナポリは息をしている。いわば大きな鼓動と、不気味な脈動で生きる巨大な怪物のような場所だ。そこには情熱と諦めがあり、享楽と苦悩がある。燦々と降り注ぐ太陽が青いナポリ湾を照らし、決して“日の当たらない”ナポリ北部には覗き込んではいけない深い闇が横たわっている。
もうすっかり勝手の分かってしまったこの世界だが、最初に私がナポリに行った時には……天地が裏返るような感覚だった。そしてその恐ろしい初冒険の中で手に入れたものが、このリネンだった。
これはナポリで長い歴史を誇る紳士用品店「アルジェニオ」が長年にわたって生地棚に仕舞っていた1着分だ。
こんなにも雰囲気のある格子柄に今まで出会ったことがあるだろうか?
単なるウィンドウペンとは異なる、クラシカルで文化的な風格だ。何よりベースのライトブルーがとんでもなく美しい。まるで色鉛筆で丁寧に塗り上げたかのような自然なメランジ感だ。
それにリネン生地としては珍しい深いツイルの表情がたまらない。ツイルの織り柄が煌びやかに輝く姿は、ひと目見たらもう忘れられない。
ジャケットに最適な300g/m前後のウェイトだがしなやかで柔らかい生地感だ。それにまるでウールのような生き生きとした弾力がある。ジャケットで仕立てたときに美しいシルエットを描くリネンは実に希少だから、それだけでもこの生地は特別だ。
スキャバルのリネンというもの自体が珍しいし、海外ではこの珍しいリネンを着分20万円を超える値段で取引したりしている。(理由は分からない。彼らにとってはそれほどに貴重なのかもしれない)
だがそんなことは関係がない。大切なのは純粋な感性を取り戻してくれるようなブルーと優雅な質感だ。こんな素敵な冒険は、忘れられない体験になるだろう。
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Sartoria Piccirillo ジャケット MTM 生地・仮縫い込み 421,000円 → SOLD
この素晴らしいリネンを最高の美しさで仕立てられるのは、マエストロ・ジャンニ・ピッチリーロしかいない。
あの途方もない手作業と、丁寧なハ刺し、そしてフランチェスコによるハンドステッチがCi Vuole=絶対に必要だ。
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Piccola Fantasia No.2《UN MONDO》
この生地もまた実に興味深い。これはあの…..ナポリの怪しげなビンテージ生地店で手に入れた物だが、センスの良いアンチテーゼみたいなビンテージウールだ。
極上の質感で、なめらかな手触りの相物ウール。素晴らしい光沢感でわずかに起毛した約280g/mのウーステッド。最高のバランスを持つ生地だが、そのチェック柄は異質である。
iPhone13proと比較してもらえばわかるが、この格子柄は通常よりも少し大きい。それに線の数が多く、まるで旧式の織機が縦糸と横糸を伸ばしたときのような独特の雰囲気がある。
よく見るとブラウンの地にベージュのかすれた糸がランダムに走っており、これもまた素敵だ。一見するとクラシックでエレガントなグレンチェックなのに、見れば見るほど不思議で幻想的な世界が広がっているのである。
それにしても素晴らしい生地だ。
この生地でジャケットを仕立てたら、ちょっとしたディナーやカジュアルパーティで大いに活躍するだろう。着こなしは簡単だ。シンプルに、そしてエレガントにモノトーンと合わせて。それがこのUn Mondo(一つの深い世界、底知れぬ世界、ナポリでよく使われる言葉)の楽しみ方だ。
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Nicola Giordano ジャケット MTM
このジャケット生地を楽しむなら軽快な仕立てがおすすめだ。
少しギャザーを抑えて、クラシックな雰囲気に仕立てることで色柄が際立つ。
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Piccola Fantasia No.3《SETA FANTASIA》
シルクという素材は、個人的には最も魅惑的な世界だ。ウールに比べれば決して万能な素材ではないが、しかし混紡されることによって生地の表情を全くの別物に変えてしまう。
SETA FANTASIA、幻想的なシルク生地。そしてこれは数あるシルク混生地の中でも、最も新鮮な感動をもたらしてくれる1着だ。
それもそのはず、30年以上も前に作られたタリア・ディ・デルフィノのウールシルクである。(この時代のウールシルクは、実に珍しい)
まずはこの硬質な光沢…..というより煌めきを見逃すことは不可能だ。シルクは数ある素材の中で最も華やかで、貴金属ジュエリーのような光沢を持っている。この生地もグレーというよりはシルバーという印象だ。それにシルク特有のゆらぎのある質感….(これで伝わるだろうか。あのリネンとも異なる独特のネップ感だ)もたまらない。
だがそれ以上にこの生地はモチーフが面白い。シンプルなグレンチェックに色気あるアクセントのペーン。シルバーのベース色に相まって、なんとも艶やかな雰囲気だ。
見る人が見ればビンテージであることはすぐにわかるが、かといって古臭さもない。色柄だけ見ればドーメルの最新ジャケット生地のような雰囲気もあるが、質感は明らかに今では手に入らないビンテージシルク混である。
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Sartoria Piccirillo ジャケット MTM 生地・仮縫い込み
贅沢で柔らかなシルクの質感ゆえに仕立ては慎重に選ぶ。
羽織るように着たいならNicola Giordano、しっかり美しいビスポークジャケットとして仕立てたいならSartoria Piccirilloだ。
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今回も1着分ずつ限定である。
お問い合わせはコンタクトフォームから。