ビスポークスーツ 最高の一着が仕上がるビンテージ生地の選び方

こんにちは、プロフェソーレ・ランバルディ静岡の大橋です。

最近はビンテージを中心として大量に生地を入荷して浮かれておりますが、生地は仕入れるだけでは仕方ない。お客様にどんな生地があるのか、ブログで紹介しなければ意味がないのですね。

ところが先日もいらっしゃったお客様が、新入荷した極上の3PLYのモヘアウールをサルトリア・チャルディのために選んでくださり、結局ご紹介する間も無く売り切れてしまっていくのです。

そこで私は持ち前の怠惰な心と狡猾な思考をフル活用して、生地を一種類ずつ紹介するのではなく、ざっくりとビンテージ生地の選び方を紹介し、その中で当店をゴリ押しするという画期的な方法を思いついたのです。

ビスポークスーツでビンテージ生地を選ぶ理由とは?

しかし世の中にこれほどまでたくさんの生地メーカーがあり、星の数ほど生地が織られているのに、どうしてビンテージ生地を選ぶのか。

実際のところ、生地の製造過程はどんどん改良されています。昔よりも短時間で文句のつけようのない高品質な生地を織り上げることのできる機会が開発され、色柄も以前より細かかったり、繊細な表現ができるようになりました。

またSUPER 〜 に表現されるように、軽くて滑らかな生地も技術の改良で織ることができるようになりました。

全体的に見れば、スーツ生地のクオリティというのは非常にレベルが高くなったのです。

例えば当店で現在メインに扱っているHolland & Sherry ホーランド&シェリーはもちろんのこと、バンチから選ぶことのできる極上の生地は少なくありません。

しかしどうでしょう、生地一つを取ってみて、それを昔の上質な生地に比べてみると、どうも昔の生地に惹かれてしまうことがある。

それは、昔の生地にしかないクオリティがあるからです。

このクオリティは品質というよりは、性質と表現すべきものでしょうか。

例えばイタリア語のQualitàという言葉には品質の他に、性質や素質という意味がありますが、これらの言葉はどう違うのか。

品質というのは単純に表現すれば優劣の程度です。しかし性質はそのものだけが持つ固有性を指しています。

ビンテージ生地はゆっくりとした昔ながらの織機で、時間をかけて織り上げられる。その結果、生地は均一とは言えないものですが、しっかりと目が詰まっており、そのうえ表情豊かです。

それは完全ではないが、その不完全さが美しい。言ってしまえば人間的な仕上がりなのですね。

そして人間は言わずもがな、世界で最も人間的な生物ですから、こういう生地に親近感を持ちやすいのですね。

世界中の優れた職人を差し置いてイタリアの仕立てを好むような物好きな人々は特に…。

ビンテージ生地の選び方

しかしビンテージだからと言って、どんな生地でも良いというわけではありません。

ビスポークスーツにはそれにふさわしい品質というのもやはり必要ですし、その服の用途によっても選ぶべき生地は変わるでしょう。

では実際にどうやってビンテージ生地を選ぶべきなのか。

ビンテージ生地でビスポークスーツを作りたいという方のために、少し細かくお話していきましょう。

ビンテージ生地に関する情報を取り込みすぎないこと

このトンデモブログをお読みいただいているお客様には申し上げにくいことながら、実は一番大事なことはこれでしょう。

情報を取り込みすぎないこと。

まあこのブログに関しても大変な眉唾物なのですが、ここで言いたいのは「ドーメルの〇〇というシリーズが一番良い」だとか「〜年代以降には良い生地はない」などという情報を取り込みすぎないことが大事だということです。

ビンテージの生地は、基本的には非常に手に入りにくいものです。

在庫が限られているうえに皆が探していて、もはや残っていないものもある。その中で「これが良い」「あれが良い」という情報を追いすぎると、底のない沼にハマってしまう可能性があるのです。

しかしそういった情報を一旦置いておいて、いろいろな生地を見てみましょう。

すると無名なブランドでも、はたまた耳のついていないような生地でも、素晴らしいクオリティのものはたくさんあるのです。

ドーメルのトニックが有名だからといって好きでもないストライプのトニックを選ぶよりも、同じ時代に作られていた小さなメーカーの好きな色のキッドモヘア生地を選んだ方が、20年後の自分に感謝されるかもしれませんよ、ということです。

仕立てる用とに合った生地を選ぶこと

先日いらっしゃったお客様は仕事にも気兼ねなく着ることができるマスターピースが欲しい、とのことでしたので、この紺無地キッドモヘアの3PLYをお選びいただいたのですね。

もう何着も仕事用のスーツは持っていて、今度は少しいかにもビンテージ感の漂うような、とはいえ普通に着こなすこともできるスーツが欲しければ、ピンヘッドなんかも良いでしょう。

こちらは写真ではわかりにくいですが、ベージュの地にネイビーが入ったピンヘッド。3PLYでコシのあるしっかりとした生地ですし、見る人が見ればすぐにビンテージだとわかります。

ぶっちゃけこの生地はしばらくライティングビューローの後ろに隠しておいたあげく「売れなかったし、うんうん、仕方ない、うんうん」と何かしらケチをつけて自分のスーツにしてしまう予定なのですが。

探すのではなく、出会いを大事にすること

もう一つ、これはとてもおすすめなビンテージ生地との付き合い方なのですが、ある一定のブランドやシリーズを探すのではなく、その時々の出会いを大事にするのが良いのではないかと個人的には思うのです。

例えばある生地を執念深く探し求めたとすると、その途中でせっかく見つけた素晴らしい生地も見落としてしまいがちです。

しかしあまりこだわりすぎずその時々に「これだ!」と思ったものを選ぶと、結果的に納得のゆく素晴らしいスーツが仕上がってくるものです。

例えば上の写真はメーカーもわからない、ビンテージのリネンです。光沢と色合い、所々現れるネップが美しい生地ですが、もしアイリッシュリネンという言葉にこだわれば選ぶことのできない生地です。

もちろんこのリネンはアイリッシュリネンかもしれないし、そうでないかもしれない。しかしただ一つわかることは、重量感があって、素晴らしい風合いのリネンだということです。

これだけで十分に、選ぶ理由になります。

プロフェソーレ・ランバルディ静岡でビンテージ生地と出会う

今、プロフェソーレ・ランバルディ静岡にはたくさんのビンテージ生地がございます。ざっと数えて100着分以上はあるようです。(ああ、期末の在庫の恐ろしさよ)

この瞬間にしか手に入らないのはもちろんのこと、仕立て栄えするものを選んで入荷していますから、きっと次のビスポークスーツにぴったりの生地が見つかるはずです。

ちなみに生地代も、バンチから選ぶものとそれほど変わらないものが殆どです。

あなたも一生付き合っていきたくなるようなビンテージ生地と、プロフェソーレ・ランバルディ静岡で出会ってみませんか。

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