こんにちは、プロフェソーレ・ランバルディ静岡の大橋です。
最近は「仕立てもできるビンテージ・デッドストック生地屋」のような形相を呈している当店ですが、当然最も情熱を捧ぐ部分は仕立てそのものに他なりません。
そういうわけで今回は、Nicola Giordanoでお仕立ていただいた2着のスーツをご紹介しましょう。
Nicola Giordanoのスーツの美しさは難しくありません。均等の取れたスタイル、ナポリらしい軽快さと洗練された仕上がり。ナポリ仕立てというものを究極的に突き詰めていくと、この美しさにたどり着くものです。
襟幅やゴージの高さはあくまでスタンダード、しかし決して凡庸ではなく、堂々とした存在感もある。またボタン位置でウエストを美しく絞るスタイルは抑揚に富む。よく既成服で見られるような無理のあるタイトさではなく、ビスポークらしい自然なシャープさです。
今回のスーツはロロピアーナのビンテージ・ウーステッドを使用したもの。目付けの良い高番手のウールほど、格式高いシルエットを描く生地はありません。
ヘリンボーンの艶やかさ、チャコールグレーのエレガントさ。全てがNicola Giordanoの立体的な仕立てと相まって素晴らしい風格となっています。
そしてもう1着は、当店の象徴的な生地ともなりつつあるEUROTEX ユーロテックスのウールを使用したスーツ。
控えめに浮かび上がるようなグレンチェック。先ほどのロロピアーナに比べると軽めの生地ですが、しっかりと腰のある生地なので立体的なシルエットを損なうことはありません。
また注目したいのは襟のロール感。柔らかな芯地とハンドワークによって生み出されるNicola Giordanoのスーツの襟は、往年の偉大なマエストロ達の仕立てるスーツのように美しい襟を描きます。
袖付けは先ほどと同じ仕様ですが、生地感が軽い分少しリラックスした雰囲気に。すらりと落ちる肩のラインからボリューム感のある胸周り、バルカポケット、そしてウエストへのドレープはいつまで見ても見飽きることがありません。
裾まで切ったダーツ特有の雰囲気と、体から離れることなく包み込むシルエットは、ナポリ仕立てにしかない美しさと言えるでしょう。
すっかり当店で一番人気のラインとなってしまったNicola Giordanoですが、その美しさは時が経てば経つほど高く評価されることでしょう。
当店が変わり映えもしないサルトリアを何年も取り扱う理由はそこにあるのです。
時代が移り変わり、流行りやトレンドがすっかり入れ替わった数年後、十数年後になっても、これらのスーツはあなたのワードローブに残るでしょう。
そしてそれらのスーツが擦り切れてしまったときにも、相変わらず当店は同じサルトリアを取り扱っていて、同じ採寸データで新しいスーツを仕立てるのです。なんとも素敵なことではありませんか……！