【ご納品】Sartoria Caracciolo カシミアシルクのジャケット

美しいジャケットが仕上がってきたときの感動といえば、到底言葉で言い表せるものではない。

そしてロロピアーナのカシミアシルクを使用したこのジャケットに関して言えば、仕立てる前からもはやその感動があった。生地そのものを見ただけでもあまりに素晴らしい色で、高貴で、艶やかだったのである。

しかし柔らかなカシミアシルク、それもとろけるような生地感のロロピアーナを目の前にした時、私には不安があった。

果たしてサルトリア・カラッチオーロの柔らかな芯地と仕立て、そして何よりもMTOでこの生地がうまく仕立て上がるだろうか……と。

大抵の場合、私はサルトリア・カラッチオーロには「ずっしりとしたビンテージ」や「モヘア」や「ヘビー・ウーステッド」などを送るものである。だがこの不安は、まったくの杞憂であった。

美しいドレープ感に、丸みを帯びたラペルロール。カシミアシルクの羽織るような柔らかさは生かしつつも、非常に立体的な仕上がりになっている。

ラペルはサルトリア・カラッチオーロの特徴的なカーブを描く。生地の柔らかさを考慮し、シングルステッチにすることで全体を洗練された雰囲気にしている。

襟から肩、袖までの曲面も美しい。肩線は大胆に背中方向に流れ、日本人の前肩もしっかり包み込む立体を作り上げている。

この手間のかかる造形を見て誰がこのジャケットをMTOだと思うだろうか?それもそのはず、MTOと言っても製作方法はビスポークとなんら変わりないのである。

背中も丸みを帯びていて非常に美しい。大胆に登る襟みつのシルエットもまた、ビスポーク的である。

こういう色のジャケットを仕立てるのは勇気がいる。しかしいざ仕立ててみると、そのエレガントさにうっとりとするものである。こういう挑戦をするときはMTOで仕立てると良い。

それでは、ご機嫌よう。