Sartoria Piccirilloの美しいビンテージ生地ジャケット(ご納品)

こんにちは、プロフェソーレ・ランバルディ静岡の大橋です。

今日ご紹介するのは、当店ストックのビンテージ生地から選んでお仕立て頂いた一着。実に雰囲気のあるグレンチェックのジャケットです。

サルトリア・ピッチリーロのMTMは最近、当店も大変人気です。

長らく月間5着という非常に限られた生産数で続けていましたが、昨年12月からは注文があまりにも増えており、ジャンニ・ピッチリーロにお願いして最大10着まで対応してもらえることになりました。

殆どミシンを使わない究極のハンドメイドであり、しかもマエストロ本人が仕立ての多くの部分を自分でこなすという稀有なサルトリア。

これはある意味、ル・コルビジェがデザインした椅子を自分でパイプを曲げて製作しているようなもの。

天才的なカッティングが出来るにも関わらず、それを売りにして現場を他の職人たちに任せるようなことは絶対にせず、常にジャンニ自身が手を動かしています。

マエストロ・ジャンニ・ピッチリーロの生粋の職人精神が生み出す奇跡のスーツと言っても過言ではありません。

さて、そんなサルトリア・ピッチリーロのMTMですが、MTMと呼んではいるものの、実態は完全にビスポークです。

現在はオプションの仮縫いが無料サービスになっていることもあり、仮縫い&中縫いで納得いくまで調整を行います。

肩幅や袖丈といった必須部分だけでなく、前肩の補正、筋肉のつき方に合わせたカッティング、前後左右の微細な差異などすべてに渡って補正を入れていきます。

そうして出来上がるジャケットは、ナポリの工房に飛び込んでオーダーするものと一切変わりない、妥協のない作品です。

今回のジャケットを見てみましょう。まずは肩のラインですが、上の写真のようにぐっと後方へ流れていきます。これは前肩に合わせて肩の前方に立体を作っている証拠です。

また今回のジャケットはグレンチェックであることもあり、肩周りからチェストに掛けてアイロンワークで巧みに形作られているのが一目見てわかります。

肩のシームから押し出されるように前方のきたグレンチェックの縦ラインが、チェストになると今度は脇の方へと入り込んでいきます。つまりチェストにボリューム感が作られているということです。

丸みを帯びた立体的なチェストは、着込んでいっても変わることがありません。常にジャケットに美しい起伏を描きます。

さて、チェストから前身頃のダーツで一気にウエストが絞られているのがわかります。グレンチェックの雰囲気をスポイルしないように丁寧にダーツが取られています。

このジャケットの場合はダーツが裾まで抜けていますが、実はサルトリア・ピッチリーロの場合には抜ける場合とそうでない場合があります。それは着る人の体型によって使い分けているからです。

「よりナポリらしいから」という理由で他のサルトリアでは疑問なく全てに用いられる裾までのダーツですが、ジャンニは写真でお客様の体型を見てどちらにするかを決めます。(もちろんこちらから希望を伝えることもできます)

再び肩に視点を戻しましょう。なんと美しいシルエットでしょう。背中のチェック柄に注目すれば、後ろ身頃も滑らかな曲線を描いていることがわかります。

トルソと違って、人間の背中には肩甲骨の出っ張りがあるからです。その分の立体を考慮してジャケットを仕立てると、一見平面に見えるジャケットの後ろ身頃も写真のようにカーブを描くのです。

ちょっと蘊蓄が長引いてしまいました。

サルトリア・ピッチリーロのスーツやジャケットは、巨匠の作品を買うようなもの。こういうディテールの話も、本当は不要なのです。

今、当店のリピーター様はサルトリア・ピッチリーロのオーダーでカルロリーバ生地を使用したカミチェリア・ピッチリーロのシャツをプレゼントしております。(残り2着)

ご新規のお客様にもセール期間中は、実に素敵らしいサービスをさせて頂きますので、ぜひこの機会に。

それではご機嫌よう。