【残り2着】NEAPOLITAN VINTAGE《ナポリ的なビンテージ》 × Sartoria Caracciolo

時代は変わった。

2年前、まだ日本はイタリアファッションブームとでも言うべき空気を漂わせていた。しかし今はどうだろう?この2年間が全てを変え、多くの人がスーツやジャケットを着る機会を失った。仕立て服の時代など遠い昔のように感じるだろう。

世の中はより便利になり、クリーンになり、効率が求められる。私はそれをひしひしと感じていた。

……しかしどうだろう?

2年ぶりにナポリ中央駅に到着した瞬間、全く違う空気に全身が包まれたのである。

喧騒、生活、混沌、ナポリ湾のざわめき、鮮烈な色。物がひしめき合う小売店に、まがい物を並べた露店。それをかきわけるように建つバロック様式の教会、子供の呼ぶ声、そして職人たちの作業台。

ここにはまだ、オールドスタイルな生活と文化が息づいているのだ。

私は呆れたが、それと同時に安堵を覚えたのである。人間には変革が必要だ。しかしそれと同じくらい、心の拠り所が必要なのだ。

ここ……ナポリでは、まだ遠くの人と繋がれる新しいアプリケーションよりも隣人との“Ciao”に価値がある。高度な計算で生み出される最新のシステムよりも、1960年代から変わらない職人の手が頼りだ。

The Neapolitan Vintage 今回は変わらないナポリの空気を感じさせるビンテージ・ジャケット生地を紹介しよう。数年前に生地屋で仕入れ、ランバルディ・ストックヤードで保管していたものを今回の出張でやっと持ち帰ってきたからである。

1. Blu Pianissimo(売り切れ)

春秋スリーシーズン 約270g/m 微起毛 ウール/カシミア

ネイビー系のチェック柄は言わずもがな定番であり、バンチブックを開けば必ず一つはラインナップされているものだ。しかしこの生地のようなチェック柄はどうだろう?

極上の光沢を放つネイビーのカシミア混ウーステッド。そして、ミケランジェロの素描のようにうっすらとしたチェック柄である。しかしその控えめなチェック柄が、驚くほど魅力的な雰囲気を醸し出しているのである。

これは非常に面白い現象だ。

素晴らしいオーケストラ音楽の中では盛大なユニゾンで奏でられるフォルティッシモよりも、ふとした拍子にあらわれるピアニッシモの方が深く感情に訴えかけてくることがある。また美術館では色鮮やかな水彩絵の具で描かれた大型の作品より、小さな鉛筆描きのスケッチに心を打たれることがある。

そしてこのチェック柄は、まさにその現象を生地で体現したようなものだ。どんなに派手派手しいチェック柄のジャケット生地と比べても、決して見劣りしない独特の存在感を放っている。

滑らかなカシミア混ウールの手触りと、軽めながら目の詰まった生地感についても触れておこう。この光沢感と手触りからは信じられないほどコシの強い生地である。強く握ってもシワにならず、跳ねるように復元する。ジャケットに仕上がったとき、どれほどゴージャスで洗練された雰囲気になるか想像してみよう。

2. Vintage Cashmere & Silk

春秋スリーシーズン 約290g/m 微起毛 カシミア/シルク/ウール

ナポリでは時々、はっとするような絶品の生地に出会うことがある。生地棚から取り出すまでもなく、特別な生地だということが手触りで分かるような物だ。

広げてみればこの世のものとは思えないほど美しい光沢と、見たことがないような独特の素材感に驚くことになる。そして店主を問いただすと、それがビンテージのカシミア・シルク・ウールだということが分かるのである。

カシミアのとろけるような柔らかさと、シルクのざっくりとした風合いを兼ね備えた生地だ。どちらかというとライトツイード調で、時々ネップが混じっている。しかしあくまで薄手のウーステッドで、秋冬物というよりは冬も着られる春秋物というべきだろう。(この曖昧さも非常にビンテージらしい)

ブラウン&カーキのヘリンボーンの色合いが絶妙だ。黄金のような華やかさと、メンズジャケットにあるべき控えめなエレガンスの両方を兼ね備えている。

しかしこれほど上質な素材を使用しながらも、ベーシックなフランネルではなく遊び心のある春秋物ジャケット生地を作り上げたのはなぜだろう。

このカシミア&シルクの生地感を好んで用いるのは世界でもキートンくらいのものだ。この耳なしのビンテージ生地はそのうちの一つとして昔別注されたものではないか…と勘繰ってしまう。この生地感はよくあるバンチブックに向けたものではない。世界屈指のラグジュアリーブランドのために織られた、至極贅沢な物だ。

3. Terracotta

やや軽めの秋冬ウーステッド 約310g/m 微起毛 ウール

色の組み合わせ、というのはある意味魔法のようなものだ。

例えば黒を単色で見ても、特段深い印象は得られない。しかし黒と朱色、金色の組み合わせをみれば我々は漆塗りの和食器を連想するし、黒とライトブラウンを組み合わせれば自ずとレザー製品を連想する。

このテラコッタ&ブルーほど、イタリアを感じさせる色の組み合わせはなかなか無いだろう。もっと言うならば、こんなに美しいグレンチェック柄もまたそうそう現れないものである……。

なんと風合い豊かな生地だろう。洗練されたシンプルなウールのウーステッドながら、美しくきらびやかな織糸のおかげで驚くべき奥行き感が表現されている。ベージュとブラウンで表現されたテラコッタのトーンは、イタリア人にしか作れない色だ。

鮮やかなサックスブルーのシャツ、クリームホワイトのパンツを合わせて着こなすところを想像してほしい。どれほどエレガントな着こなしだろう。イタリア人の着こなしの中で、最も完成された組み合わせの一つだ。

チェック柄の端正な雰囲気も良い。線がはっきりとした都会的なチェック柄でありながら、主張が強すぎず柔らかな印象に仕上がっている。グレンチェックのサイズ感も日本人が着る42〜50のジャケットにちょうど良いサイズだ。(これより小さいと柄がうるさく感じるし、大きいと服に着られがちだ)

ビンテージ生地であるというだけで有り難がられるご時世だ。良い色柄を見つけるのは難しい。これほど美しく象徴的なテラコッタのグレンチェクは…..次いつ会うことができるだろうか?

Neapolitan Vintage × Sartoria Caracciolo MTM

今回の3着も、全てのサルトリアで仕立てることが可能……しかし何とも有難いことにサルトリア・ピッチリーロは当店の注文で身の置き場もない状態、あの老舗サルトリア・チャルディすら製作途中の服を掛ける壁一面の棚の半分が当店の注文で埋まっているという状況である。

そこで今回もニコラ・ジョルダーノと結託して、扇状的なプライスで皆さんのうっかり(つまり、思いもよらず送ってしまう問い合わせメールのようなもの)を誘う次第である。

Sartoria Caracciolo MTM(来店、東京出張、オンラインいずれも可能)

1. Blu Pianissimo 通常価格 283,800円(税込)→  売り切れ

2. Vintage Cashmere & Silk 通常価格 301,800円(税込)→ 198,000円(税込)

3. Terracotta 通常価格 283,800円(税込)→ 198,000円(税込)

ご注文は各1着のみ(先着順)、コンタクトフォームからお問い合わせを。それではご機嫌よう。