美しいジャケット生地は稀な存在だ。しかし美しいスーツ生地はもっと稀だ。
なぜならスーツ生地はただ美しいだけではいけない。美しく、格式高く、そして強くなければいけないのである。
スーツを着る機会が少なくなっている、という話はお客様からも頻繁に聞いている。
これは洋服屋にとってはdisastro 災難だが、しかしお客様にとっては幸いである。これまで毎日着ていたスーツを週に一回しか着なくてよくなるということは、それだけスーツへの負担が少なくなるということだからだ。
ということは、今まででは仕立てることのできなかったラグジュアリーで特別な一着を仕立てることも不可能ではないということだ。
The Superfine。非常に繊細で力強いスーツ生地を2つ、ご紹介しよう。
飛び抜けた美しさ、圧倒的な贅沢さ。限りない存在感、息を呑むような上品さ……そして実に現実的な価格だ。
Super 170’s Worsted 380g/m
さて、まずはミッドナイト・ネイビーの秋冬デッドストック生地だ。それもSuper 170’sのウールを贅沢に使用し、約380g/mの重厚なウーステッド。
ビンテージ・ウーステッドさながらの目付けでありながら、あくまで柔らかな質感で織り上げられた生地だ。重厚さよりもむしろ、しなやかさを強く感じる。手触りはカシミアのように滑らか。濡れたような奥ゆかしい光沢は、明らかに普通のウールではないことがわかる。
しかし柔らかいからと言って、弱さは一切感じさせない。あくまでビスポーク向きの生地だ。美しいシルエットを描き、立体的なラペルロールと力強いドレープを実現してくれるだろう。
それにしてもネイビーの色合いが絶妙だ。白い光の下では格式高いミッドナイト・ネイビーに見えるが、夕暮れや暖色のライトの下では黒のように見える。そういう意味では最もエレガントなダークスーツとしてもふさわしい生地である。
華やかなチーフを挿せば非常に洗練されたオケージョンでもそつなくこなすことができるし、白シャツにクラシックなネクタイを締めれば重要な会議を成功させられるはずだ。
だが私のお気に入りは、ハイゲージのタートルネックとの組み合わせだ。史上最も優雅に力を抜くことができるからだ。
100% Cashmere Worsted Gray Stripe 340g/m
全くもって、驚くべき未知の存在である。
何の気なしに上品なストライプを纏ったこのグレースーツ生地は、何を隠そうピュアカシミアを贅沢に織り上げたカシミア・ウーステッドなのである。
ジャケット生地ではお馴染みのウーステッド・ピュアカシミアだが、スーツ生地ではどうだろう?流石にキートンやブリオーニの特別顧客向けのビスポークでしかお目にかかれないような逸品だ。
しかしそれに比べてもこの生地は……特別だ。
明らかにピュアカシミアであることが分かる質感でありながら、目を閉じて触ってもスーツ生地であることがすぐに分かるほどに力強く、目が詰まっている。ちょうどエスコリアルのウーステッドのような風合いと言っても良いだろう。
贅沢な質感に、光沢感。しかしそれを上回る力強さ。まるで「自分で運転するロールス・ロイス」のようである。
この生地が実際にスーツに仕上がったとき、どれほど芸術なドレープを描くだろうか?想像しただけでも、あまりに魅惑的で落ち着かない気持ちになる。
シングルでも良いし、存在感のあるダブルでも良い。私ならむしろ、特別な機会に着るような堂々としたダブルを仕立てるだろう。(こんなにも素敵な楽しみが残っているとは、世界もまだ捨てたものではないようだ)
2 Abiti Pregiati × Nicola Giordano
ということで、キャンペーンである。
この非常に価値のある贅沢なウーステッド達は、Nicola Giordano ニコラ・ジョルダーノに託すことにしよう。いつも通りしなやかに、そしてドラマティックに仕立ててくれるはずだ。
The Superfine × NICOLA GIODANO MTM
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