ジャンニ・ピッチリーロ的な愉悦 ① カシミアシルク by Loro Piana

「まだ小さい頃に、ドゥオモ通りにサルトリアを構えていたルイジ・ダルクオーレのところへ働きに行った。すぐにこの仕事を気に入ったんだ。瞬く間にね。それから私はテーラリングの学校に行き22、23歳のときにサルトリアを構えたんだ」

ジャンニ・ピッチリーロは不器用な表情で笑う。その間も手先はずっと動き続けている。彼は冗談が大好きで、いつもナポリ式のジョークを放っては小さなサルトリアに集まる皆を笑わせている。彼のサルトリアはまるで夢の中に出てくる書斎のように小さく、人で溢れ、そして洋服へのパッションで満ちている。

Stile di Piccirillo ジャンニ・ピッチリーロ的な

私とサルトリア・チャルディは非常に強くパートナーシップで結ばれていて、私はエンツォ・チャルディを尊敬し、彼のプロフェッショナルとしての仕事に絶大な信頼を置いている。

一方、私はサルトリア・ピッチリーロの洋服を愛している。しかしそこにはもう少し別の感情がある。サルトリア・ピッチリーロは「職人」という生き方そのもののを、壮大で美しく、そして儚い映画で見ているような存在だ。もっと言えば、服をオーダーする私たちが映画の登場人物になるといっても良い。

彼の作った服を羽織ったときには、誰もが魂の真髄に響く深い感動を覚える。仕立てることに人生を捧げてきたジャンニに仕立ててもらうこと、それは「職人の人生の一部を譲ってもらうこと」に他ならない。それを着る人は無意識に感じ取っているのだ。

そんなジャンニ・ピッチリーロの着る服というのは、日々に小さな楽しみを見出すかのように茶目っ気がある。だがハサミを通すからには最高の素材でなければならない、という彼の哲学も感じさせる。実にラグジュアリーで、そして洒脱感がある。

今回はそんな、ジャンニ・ピッチリーロのアトリエから選んだ極上生地のキャンペーンである。

①Loro Piana Cashmere & Silk “Cashmere Raw”

なんと美しいトーンだろう。これはロロピアーナの極上生地であるカシミアシルクの中でも、非常に珍しいアンダイド(無染色)の原毛を使用した、Cashmere Rawというスペシャルコレクションの一着である。

ナチュラルな色味を生かしたシンプルなグレンチェックに、美しく上品なシルクの光沢。そしてウーステッドカシミアの軽やかさと、目の詰まった腰の強さ。全てを兼ね備えた合物生地だ。そしていうまでもなくこの羽織るようなラグジュアリーサマーカシミアと、構築的な美しさを特徴とするジャンニの仕立ての組み合わせは最高だ。何年着ても常に美しく、芸術的なシルエットを描き続けるだろう。

もちろんカシミアシルクという生地についてだけ言えば、当店では決して珍しくはない。(これからのキャンペーンで、またDRAPERSのカシミアシルクを山ほど紹介することになるだろう。)

しかしこの色合いは格別だ。例えば、色を際立たせるためだけに横に並べられた可哀想なホップサック生地を見てみよう。これはロロピアーナの最高級ウールのジャケット生地だが、この色のトラウザーを合わせれば完璧だ。トープブラウン、あるいはモカブラウン。グリーン、それにカーキ。アースカラーのボトムスはなんでも似合うはずだ。

残念ながらロロピアーナのカシミアシルクはもはや、値上がりで天文学的な金額になっていて、涙を流さずには触れることも許されない極上の生地だ。

ジャンニ・ピッチリーロが気まぐれに「大セールだ!」と言い放たなければ、こんな末恐ろしいキャンペーンにはならなかっただろう。

Sartoria Piccirillo Bespoke MTM ジャケット 仮縫い&中縫い付き 

通常価格 543,400円 → 特別価格 390,000(税込 429,000円)

②Loro Piana Cashmere & Silk “Sunset”

先ほど紹介したCashmere Rawは、いわば着道楽のための一着だ。もうありとあらゆるジャケットを仕立ててきたビスポーク愛好家が、リラックス感と茶目っ気のあるエレガンスを求めてたどり着く生地と言っても良いだろう。

それに対しこの”Sunset”には同じロロピアーナのカシミアシルクでありながら、誰にでも着こなせるような器の広さがある。決してベージュ内装のイタリアン・オープンカーに乗らなくても、街中を歩いているだけで優雅かつシックな佇まいを醸し出してくれる。

これはネイビージャケットの次に来るジャケットとして、この上ない最適解だ。極上のカシミアシルクの風合いを我が物にしながらも、ストイックなネイビーと扇情的なブルーの間で決してやりすぎにならない。シンプルなグレンチェックのおかげで、無地と同じように気軽に着こなすことができる。

シンプルにチャコールグレーのトラウザーに合わせて着こなすのは簡単だ。場合によってはライトグレーでコントラストをつけて華やかにしても良いし、黒の上下を合わせて色気あるモダンカジュアルを作っても良いだろう。ジャンニ・ピッチリーロ的に着るならカーキのコットンパンツに白シャツ、なんていうのも悪くない。

春夏の軽やかなスパンカシミア&シルクだから、気取ってきる必要はない。シャツやカットソーの上にさっと羽織るのが最もラグジュアリーに見えたりするものだ。カシミアシルクという素材はいつだって際立つし、羽織る人やその瞬間をいやおうなしに特別なものにしてくれる。

Sartoria Piccirillo Bespoke MTM ジャケット 仮縫い&中縫い付き 

通常価格 543,400円 → 特別価格 388,000(税込 426,800円)

 

いつもながら一着分ずつで、早い者勝ちである。

(今回は艶やかなジャケット生地を紹介したが、次回以降はおそらくコート生地や、少しクラシックな無地系のジャケットになるだろう。)

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