【再入荷】ジャンニ・ピッチリーロ的な愉悦 ③ 華やかなるパシュミナ

絵画に人物を描くときには、「彼の所作」を通して「彼の人が考えていること」を観る者が容易に理解できるようにすべきである。

《アトランティコ手稿》

1452年から1519年まで約40年間にも渡ってレオナルド・ダ・ヴィンチが書き綴ったレオナルド・ダ・ヴィンチ手稿と呼ばれるノートの中に、このような一言がある。現在はミラノのアンブロジアーナ図書館に所蔵されているアトランティコ手稿の一節だ。

絵画に人物を描くなら、その人物の意思を読み取れるように所作を描きなさい。これはシンプルだが真理であり、ありとあらゆる仕事について流用することができる言葉である。

「何か仕事をするときには、その仕事を通して自分の意思が伝わるような仕事をすべきである」し、「何か作品を作るときには、その作品を通して意思が伝わるように作るべき」だ、とそういうわけだ。

そして私はこの言葉を聞いた時に、ふと(彼はどちらかというとレオナルド・ダ・ヴィンチというよりはミケランジェロ的だが)かのジャンニ・ピッチリーロのことを思い浮かべたのである。

意思の伝わる洋服

ジャンニが仕立てる服からは明確で強い意思が伝わってくる。

カッティングの躍動感、アイロンワークで描かれる丸みを帯びたフォルム、それに彫刻的なショルダーライン。全てのパーツから「仕立て服かくあるべき」、もっと言えば「ジャケットのドレープはこのように」「袖付けはこのように」という彼の思いが伝わってくるのである。

しかしこのビスポークの世界には、絵画や芸術の世界にも勝るとも劣らない面白い独自要素が存在している。それは題材とキャンバス、すなわちモデルと生地をオーダーする顧客が決めるという点である。

いくらジャンニ・ピッチリーロが素晴らしい仕立てをしようとも、モデルや生地が彼の意思に強く反発するものであれば、その服は呼吸することをやめ、ありとあらゆる意思を引っ込めて沈んだ表情に仕上がるだろう。

逆に彼に美しいキャンバスとモデルを与えたとき、彼の仕立てる服はまるでオリーブの枝をくわえた鳩のように生き生きとした表情になり、そしてワードローブの中で昂然と輝く Capolavoro(傑作)となるわけだ。

【再入荷】華やかなる Pashmina

さて、そこで今回の生地である。ラファエロにもレオナルドにも、へそ曲がりのミケランジェロにも胸を張って差し出せるキャンバスだ。まったくこれほどまでの生地がまだ眠っていたのかと思うと、ナポリという街は恐ろしい場所である。

パシュミナという稀有の生地については、一度このブログで紹介したことがある。まずはそちらを引用するとしよう。

そもそも世界屈指のラグジュアリー生地ブランドであるドーメルは、王族や貴族、そして一部の超富裕層に向けていくつかの「例外的なコレクション」を作っている。

例えばVanquish IIというビキューナ、パシュミナ、キヴィックのバンチだ。これはビキューナに(これから解説する)パシュミナと希少な牛の毛=キヴィックを混ぜて織り上げた生地だが、その値段はスーツ一着500万円は下らない。

東洋の王女と呼ばれるPashmina パシュミナはカシミアの中でも、標高4,000mの山岳地帯に生息する希少なヒマラヤ山羊の毛だ。あまりにも貴重、そして少量しか取られないせいで、その価値はほとんど宝石のようである。世界で最も柔らかく、軽く、そして美しい獣毛の一つとして古くから愛されてきた。

……これはナポレオンがエジプト遠征のお土産としてジョゼフィーヌ皇后に渡した、あのパシュミナである。(インドの薄いスカーフをパシュミナと呼ぶ習慣があるが、それとは全く別物だ)

そしてこれこそが私がこの生地を愛する理由である。その出立ちとは裏腹に控えめで洗練された佇まいは、まるでそつなく仕事をこなす王妃のようだ。天使の羽のように軽く、そしてカノーヴァの彫刻のように立体的で優美なジャケットに仕上がることだろう。

このような書き添えと共に前回紹介したパシュミナ&シルクは、正直なところ当店始まって以来最も素晴らしい春夏ジャケット生地だったと言わざるを得ない。

パシュミナの美しさと柔らかさをあえて硬質でパリッとしたウーステッドに織り上げたジャケット生地は、サファイアとプラチナで織り上げたかのような華やかな美しさだった。ちょうど先日中縫いを終えたところだが、この生地はまるでジャンニ・ピッチリーロという職人を待っていたかのようだった。それほどまでに素晴らしい相性だったのである。

一方今回のパシュミナは軽快な春秋オールシーズン物で、非常に上品なツイル織のウーステッドである。そして驚くべきことに……ピュア・パシュミナである。

世界に存在するカシミアの中でも最も高級とされるのがインナーモンゴリアンカシミア、ホワイトカシミアと呼ばれる内蒙古産のカシミアなのはもうご存知だろう。その原毛は14.5ミクロンという驚くべき細さである。だがパシュミナは時にそれを遥かに超える10ミクロンに達する。これはビキューナの12ミクロンをも超える数値である。

これは決してこれ見よがしな生地ではない。しかしエレガントさのヴェールで包まれた中に、明らかに異質なオーラを潜めている。カシミアであって、カシミアではない。それは例えば大富豪がフェラーリやロールス・ロイスに何十億という大金を積んで作らせたワンオフカー(特注モデル)のようなものだ。そしてこのジャケット生地はまさに、そのような人々のために織られた生地である。

もちろんこれは繊細な生地である。改めて書くがこれはドーメルが特別な顧客のために作る「例外的なコレクション」の生地であり、毎日着て出かけるような気軽なネイビージャケットにはならないだろう。正規ブティックでの仕立て代はそれこそ程度の良いマセラティが買えるような金額だ。

しかし幸運なことに、ここはプロフェソーレ・ランバルディである。「お釣りでエスプレッソを飲んで帰れる値段」をテーマとしている以上、この希少な生地もまた特別価格だ。

もっと幸運なことにマエストロ・ジャンニ・ピッチリーロにとって、この生地はお手のものである。ナポリでは珍しく芯地と毛芯を使いながら、気の遠くなるような手作業で柔らかく立体的なシルエットを作り出してく彼の手法は、ラグジュアリーで柔らかい極上生地に命を吹き込んでくれる。

着れば着るほどに立体感を増し、決して美しさを損なわず常に一張羅として、あるいは人生最高の傑作としてワードローブに居続けてくれるだろう。

【再入荷】Dormeuil 100% Pashmina × Sartoria Piccirillo Bespoke MTM ジャケット 仮縫い&中縫い付き

通常価格 1,320,000円 → 特別価格 630,000円(税込693,000円)
ジャケットはシングル・ダブルどちらも同じ金額だ。個人的にはパッチポケットにシングルステッチの仕様がおすすめである。

以上で「ジャンニ・ピッチリーロ的な愉悦」のシリーズは完結である…。

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※今後、全てのキャンペーン商品につきまして決済完了後に生地の確保とさせて頂きますがご了承ください。