こんばんは、プロフェソーレ・ランバルディ静岡の大橋です。
今日は、以前出張採寸をさせていただいたときの様子をご紹介いたします。
ホーランド&シェリーのビンテージモヘア生地にてオーダー頂きましたが、これは私がランバルディ開店当初にまとめて手に入れたビキューナ入りの春夏生地。
「このビキューナ混生地4種類さえあれば10年は安泰である、しめしめ」などと言っていたものの、早速一番奥底に隠していた紺が3ヶ月で売れ、その後みるみるうちに完売してしまったシリーズです。
このグレーは絶妙なトーンで、個人的には最もお気に入りの一着。これに白シャツやサックスブルーシャツを合わせてブラウンの靴で着こなすのが、いかにもナポリの紳士らしい雰囲気です。
ちなみにこの生地はなんともジャケットが仕立てられそうな、仕立てられなさそうな用尺分残っておりますので、ご興味のある小さめサイズの方は是非お問い合わせくださいませ。
さて、仕立てはサルトリア・ピッチリーロの仮縫い付きのMTMです。
MTMとはいうものの、実態は殆どビスポーク。
当店の大人の事情でMTMに分類しておりますが、ジャンニ・ピッチリーロが写真と数値を見て、ビスポークと同じようにコツコツと作る服なので、ナポリの工房に飛び込んで作るのと全く同じクオリティです。
それにしてもサルトリア・ピッチリーロは、仮縫い状態でも驚くべきフィッティングの良さ。
今回のスーツも細かな体型補正がメインです。
ほんのわずかなことですが、肩の傾斜を合わせたり、肩幅を右だけほんの僅かに詰めたり。あるいは胸回りのフィッティングを、線でマークして微調整したり。
サルトリア・ピッチリーロ MTM(仮縫い付き)の良さは、点ではなく線での補正ができることでしょう。
例えば通常のMTOでは、数値を胸囲や胴囲というようにポイントで指定して調整します。
それに対してこの仮縫いでは実際に私が確認し、さらに写真でも記録します。例えば「肩線はそのままに、前肩から胸囲までの部分を少し削る」というような線で繋ぐ補正ができるのです。
また私が書いた数値はもちろん重要なのですが、それよりも大事なのが写真からの情報。ジャンニはフィッティングのレベルが高く、写真でも的確に必要な補正を判断します。
逆に言えば仮縫い時にはお客様に「1cm詰め」とお伝えしていても、実際にはジャンニの判断で0.5cmの詰めになる、ということもあります。
そういう部分もビスポーク的に楽しんで頂けるのが、サルトリア・ピッチリーロのMTMです。(その代わりにこの数値で、というような指定はちょっと苦手です……)
それにしても実に魅力的なスーツです。生地の上品な光沢感が、ジャンニの生み出す芸術的な立体感を、より鮮やかに映し出します。
ちなみにこちらのお客様は、モヘアのお仕立てにも関わらず、着心地が大変良いことに驚かれていました。確かにモヘアでビスポークをした場合、伸縮性がないために着心地に苦労することが多いのです。
その点、確実に体型補正を行なっていくジャンニのお仕立てでは心配ありません。腕を前に出しても突っ張りが少なく、モヘアのジャケットを着たまま1980年代のアバンギャルドなランボルギーニを運転することも可能です。
サルトリア・ピッチリーロのMTMは場所によって出張での採寸や仮縫いの対応も可能です。
ぜひこの機会に、マエストロが仕立てる作品を、あなたの選んだ生地で体験しませんか。
それではご機嫌よう。