The Museum Piece – Holland & Sherryの芸術品

いくら奇跡的に素晴らしいワインでも博物館で展示されることはない。なぜならワインが非常に感覚的な世界であり、飲まなければ理解できず、そして飲んでしまえば終わりだからである。同じくしてHolland & Sherryの生地がどれほど奇跡的で希少でも、博物館では見られない。なぜなら生地というものは未完であり、ジャケットとなって着る人のライフスタイルに溶け込んだ時に初めて完成する「恐ろしく高尚な芸術の下書き」のようなものだからだ。

私たちがHolland & Sherryのビンテージカシミアを手にする時、それは単なる素材以上のものを手に入れることを意味する。その生地に一体どれほどの歴史と情熱が秘められているかを考えると、まさに一片の芸術品を手に入れたような感覚に陥るのだ。

しかしこれはただのカシミアではない。ただのウールでもない。グアナコでも、ビキューナでもない。

SHAHMEENA 60% – WOOL 30% – CASHGORA 10%

このシャーミナというものが今回の生地の主役である。

これはペルシャ語で「皇帝の羊毛」を意味する言葉だ。パシュミナに非常に近いが、それよりもさらに希少な素材である。ヒマラヤ山脈の標高4000m以上に住む中型犬のように小さなカシミア山羊の一番柔らかい部分の毛を手で刈り取って作られるが、あまりの繊細さから手で加工する必要があり、莫大な時間とコストをかけて織られる。

そしてそれを極上のウールと、カシミアとアンゴラの交配種であるカシゴラの毛と混紡したのが今回のHolland & Sherryの生地だ。

初めてこの二着のジャケット生地を混沌とした生地棚から引き抜いたとき、あまりの美しさに息を呑んだものである。ベンガル猫のような優雅な毛並みと二つの抒情的な色。

これはどれほどのフリークでも未だ見たことのない、まさにミュージュアムピース（芸術品）ある。

Taupe Brown

一つ目はビンテージトープブラウンだ。光の加減で変わるその色彩は、季節の移ろいそのもののように見る者を魅了する。秋の森の中で見つける静謐な風景を思い浮かべれば、それがこの生地の色合いである。

このトープブラウンはネイビージャケットのようにどんなシーンにも容易に溶け込むが、しかし常に独自の存在感を放つ。控えめながらも情感に溢れた色味で、常にエレガントだが奥ゆかしい物語性を感じさせてくれる。

都会的に着こなそうと思えば、黒やグレーとの着こなしでいとも簡単にコーディネートすることができる。まるで都市部に突然現れる静かな庭園のように、くっきりと輪郭を整えられたアースカラーとして着こなしに取り入れよう。

あるいはブラウンやイエローと合わせて目一杯にナチュラル感を活かしても良い。その日の用途や気分によって、このトープブラウンは変幻自在である。

Burgundy

一方でバーガンディのカラーは実に印象的で、二度と忘れることのできない鮮烈なインスピレーションを与えてくれる。透明なグラスの中で澱む深みのあるブルゴーニュ、あるいはその言葉の響きそのものの色合いだ。

これは決して着回しが簡単な色ではないが、その一方で代わりのいない色でもある。つまりバーガンディの持つ高貴な雰囲気、高尚な色気を手にいたいと思ったら、バーガンディのジャケットを仕立てる他ないのである。

しかし一つ言えるのは、これは決して飽きの来ない「挑戦」になるだろうということだ。まるで一杯の上質なワインのように、時間と共にその美しさと深みを増していく。だからライフスタイルに合わせて着こなしは変化するが、美しさが色褪せることはない。

バーガンディを選ばない理由は星の数ほどある。しかし選ぶ理由は一つだ。

それは深遠な趣を持つバーガンディ色のジャケットがアートピースであり、個性と美意識を表現する手段だからである。それは明確な意思表明であり、ビスポークの世界でも最も酔狂な選択だ。

The Museum Piece

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