リネンのスーツは美しい。
それは春夏における究極のエレガンスだし、この季節を実に思い出深いものにしてくれる。どれほど軽いウールをもってしても、彼と同じフィーリングを描くことはできない。リネンのスーツは他の全てのスーツ異なる唯一の価値をもっているのである。
にも関わらずこのブログでリネンのスーツが紹介されることは圧倒的に少ない。
理由は簡単だ。それは極上のビンテージリネンがスーツ用尺で残っている、というシチュエーションがほぼ皆無だからである。
そもそもビンテージのリネンは半幅で織られている。ということは通常のスーツに必要な3mの倍、6mの生地が必要になる。6mもの貴重なビンテージアイリッシュリネンが、まったく手付かずのまま残っている様子を想像してみよう。”あるいは路上に落ちた輝かしい500ユーロ札を誰も拾わない世界線になら、そんなものが存在するかもしれない”
ということでビンテージリネンのスーツ生地というのは、このブログでも数えるほどしか紹介してこなかった。70年代とか80年代の本物のビンテージリネンに限って言えば、もしかすると紹介したことがないかもしれない。
果たしてこれが——それである。
Unexpected Arrival 思いもよらぬ入荷
別れは往々にして月並みだが、出会いはいつも突然かつ運命的である。
私が先日のナポリ出張でサルトリア・ピッチリーロを訪れていたときのことだ。いつものように大量の仮縫いや中縫いのスーツを目の前にジャンニと打ち合わせをしていると、小さな紙切れを持った男性が工房に入ってきた。
彼はどこかに店を持つわけでもなくオンラインで販売するわけでもなく、ただ入手した生地をサルトリアに売って回る「ストック屋」だった。
そして今回彼が手に持っていたのは、リネンのスワッチだった。それは私がずっと探してきた……いや、もっと正確に言うならば世界中が探しているビンテージアイリッシュリネンのスーツ生地だったのである。
私はすぐさま黒とグレーを6メートルずつ購入した。彼は一旦スクーターにまたがってどこかに消えていくと、20分ほどしてカットされたビンテージアイリッシュリネンを抱えて戻ってきた。それがこの2着である。
あまりのしなやかさと、煌びやかな光沢に息を呑む。手で触れればまるでウールのように腰があり、シルクのようなさらりとした滑らかさを持つ。これは旧式の織機でゆっくりと緻密に織り上げられた「あのアイリッシュリネン」である。今までにもいくつかの本物のアイリッシュリネンというものを紹介してきたが、それらの中でも格別に柔らかくしなやかで、目が詰まっている。
細かな年代はわからないが、少なくとも私が生まれた頃にはどこかの生地屋の棚で惰眠を貪り始めていたことだろう。
この目の詰まった風合いは、現行のリネンでは見つからない。ぎっしりと凝縮感があるにも関わらず、生地自体は薄手で重さを感じさせない。
あの最上級のウーステッドのような「ひんやりとした目付けの良さ」だけがある。これはゆっくりと旧式の織機で織られたリネンにしかない質感で、これがジャケットになったときにはそれこそ英国製のウールのように力強いシルエットを描く。
だがこのビンテージ・アイリッシュリネンの奇跡は続く。というのものこのリネンは今回入荷した黒・グレー以外にまだいくつものカラーバリエーションがあるということだ。
(1) ホワイト
(2) サンドベージュ
(3) キャメル
(4) ミディアムブルー
(5) インディゴ
(6) タバコブラウン
(7) ブラック
(8) ミッドナイトネイビー
+ ランバルディ在庫のブラック & グレー
あまりにも豊富なカラー展開だが、いずれも在庫は1着〜2着分のみ。こうしているうちにもナポリで売り切れになっている可能性があるので、まずは在庫確認からする必要がある。
これほどのボリュームでビンテージのアイリッシュリネンが現れたことは今までにないし、ましてスーツの用尺で出現するなんて誰が予測できただろう?
自分の好きな色でリネンのスーツを仕立てるならこれが最後のチャンスということだ。しかも今回はもし在庫があれば多めに生地を買ってスペアトラウザーを仕立てたりもできるが、こんな好機はもう訪れない。
Sartoria Piccirillo Bespoke MTM スーツ × ビンテージアイリッシュリネン 各色
通常価格 642,400円 → 特別価格 480,000円(税込528,000円) 仮縫い・中縫い付き
ビンテージアイリッシュリネンはとにかくすぐに売り切れてしまうし、今回はナポリ中のサルトリアと生地の取り合いである。興味をお持ちの方にはとにかく早くお問い合わせ頂きたいところである。
お問い合わせはコンタクトフォームから。