美しいグリーンを巡る冒険が終わることはない。
あの魅惑的な緑のリネンが売り切れてからというもの、私たちはひたすらにグリーンを探し求めて彷徨ってきた。まるでダヴィデ王が彷徨い続けたような不毛な土地をひたすらに探し続けてきたのである。
しかし冒険には常に中継地点がある。それは往々にして砂漠の真ん中に突如として現れる、想像もしていなかったような美しいオアシスである。
旅人が砂漠でオアシスを見つけたときのように、私たちが元気を取り戻します。涙を蒔く人は、やがて喜びを刈り取ります。種を手にし、泣きながら出て行った人々がやがて収穫の束をかかえ、歌いながら帰って来るのです。– 詩篇
私たちがあの「売り切れ」という数々の涙を蒔いて刈り取るのは、ウーステッド・ピュアカシミアである。しかもこれは数ある生地の中で最も上質なカシミアの一つと言って差し支えない。
なぜならこれはあのKiton キートンが2011年にエクスクリューシブで作った生地だからである。
Voyage Verde 緑を巡る冒険
もしあのグリーンのリネンをもう一度手にいれることができるのであれば、私は店にある貴重なカシミアを喜んで投げ出すだろう。私はそう考えていた。それくらいにあのリネンは求められ、私は壊れたレコードプレイヤーのように「売り切れ」という言葉を繰り返してきたからである。
だからこそ、このカシミアを見つけたときの驚きといえばもう言葉にはならないほどである。まさかカシミアを投げ売ってでも手に入れたかったグリーンが「カシミアになって帰ってくる」とは思いもしなかったからだ。
美しく鮮やかな緑に、黒に近いネイビーの組み合わせで織り上げた深いグリーン。あのリネンと全く同じ雰囲気だ。光の加減で無限に色とトーンを変えていく。
光が強く当たったときに見せる色合いはクラシックなボトルグリーンだ。実に洒脱だが包容力のある、落ち着いたカラーである。しかし一旦日陰に入ればネイビーが姿を全面に表して、実にエレガントな雰囲気となる。
これは何が良いかと言えば、1日同じジャケットを着ていたとしても昼と夜で異なる表情を見せてくれることだ。二面性のある恋人は危険だが、二面性のあるジャケットは実に心強いし、いつまでも新鮮な気持ちをもたらしてくれる。
そしてこのカシミアにはあのリネンのジャケット生地とは決定的な違いがあり、それが最大の魅力でもある。
キャバルリーを連想させる優雅なツイル模様だ。
ウーステッドカシミアの生地は当然ジャケット向けのものが多いが、かといってジャケットらしさに満ち溢れた生地ばかりかと言われればそんなことはない。あくまでトラウザーに合わせる前提で、フォーマル感の強いジャケット生地も多く存在するのである。
しかしこの生地は、このツイル模様で一見してジャケット生地であることがわかる。ということはブルーのデニムでも、ベージュのチノパンでも、あるいはトラウザーでも優雅に着こなすことができるというわけだ。
最後におまけのように説明しておくならば、これはキートンが15年前に発注した最上級の生地で……とろけるような柔らかさのウーステッドカシミアである。約300g/mで軽やかでありながら美しいドレープを描くジャケットになるだろう。カシミアの上質さについてくどくど説明するの無粋だろう。キートンのウーステッドカシミアというだけで、もう十分だ。
だが一つだけ付け加えたい情報がある。それはこの生地が2011年に27.29メートルで納品されたこと。それからすぐに11.40メートルになり、そして今ここに最後の2メートルだけが存在しているということである。
もちろん早い者勝ちだ。これが売り切れればこのグリーンのオアシスとは永遠のお別れである。
もちろん、果てしないVoyage Verde(緑を巡る冒険)をこれからも私と共に続けるのも良いだろう。だがそれは四十日四十夜の試練どころか、数年単位の冒険になることだろう……。
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