Vintage Mohair Collection 終わりのない夏のモヘア

真夏に比べれば随分と暑さが和らいできたが、なかなかこの季節は終わらない。

ふと夕方とか、夜更けとか一瞬の時間に涼しげな風が吹いて、この終わりのない夏の向こう側で秋がすっかり待ちぼうけをくらっていることを仄めかすばかりだ。

こんな時に思いを馳せる生地は決まって、モヘアである。それも柔らかくてしなやかで、美しい光沢と枯れた色合いの魅力的なビンテージ・モヘアだ。

ナポリ仕立て、特にNicola Giordanoの軽やかな仕立てがよく似合う素晴らしい生地を3つ紹介しよう。

Dormeuil – Silver Kid

さて、ドーメルだ。もはやドーメルのビンテージというだけでも、まるで幻の生地かのような扱いだ。そしてその扱いは決して大袈裟ではなく、あるいは妥当と言うべきかもしれない。

なぜならビンテージ生地の需要は増していく一方だが、供給はあまりにも少ないのである。その中でもドーメルは、もう15年以上も前から「乱獲」に遭ってきた。今では美しい生地はほとんど残っていない。

そんな中で、このSilver Kidは文字通り輝かしい存在だ。私自身も心からアイスブルー・グレーの色合いに、ビンテージモヘアだけが持つ素晴らしい杢目。

Silver KidはSuper Brioに比べるとほんの少しウールの割合が多く、ウーステッドらしい上品さと煌びやかさをに比重を置いた生地だ。その質感がまた艶やかである。

背抜きや大身返しで軽快に仕立てて、さらりと白シャツで着こなした時のエレガントさは、言葉では到底表現しきれない。あるいはボルドー系のネクタイや、パンツとの組み合わせは実にイタリア的だ。アットリーニやキートンのLOOKBOOKで必ず見かける色使いである。

光が当たった時のトーンは明るいが色は決して派手じゃないから、スーツで着てもいやらしさはない。基本的にはミディアムグレーのスーツと同じ気持ちで着用できる。

パッチポケットで、ジャケット単体でも使えるように仕立てるなら迷わずこの生地だ。

John Foster – Excellent Gray

ミディアムグレーのモヘアには、他の生地にはない独特の存在がある。

ウールにもリネンにも、はたまたカシミアにもない、モヘアだけの硬質の光沢感。そして光の当たり具合で変幻自在にトーンを変えるグレー。この二つの組み合わせが、実にエレガントでありながらも決してドレッシー過ぎないスーツを生み出してくれる

グレーのモヘアに関してはこれまでにも幾度となく、このブログで紹介してきている。その一つ一つが、絶妙に異なるトーンを持っていて美しい。

このJohn Fosterについて言えば、特筆すべきは整った緻密な織り柄だ。数あるウールモヘアの中でも、細い原毛を美しく丁寧に織り上げたような非常に滑らかな表情だ。

この生地で仕立てるなら明らかに、クラシックなフラップポケットのスーツだ。シングルステッチに、堂々としたショルダーラインで仕立てよう。

リネンの白シャツを合わせるよりも、高番手のポプリンを使ったエレガントなシャツを合わせるべきでもある。控えめなクロコダイルのベルトとか、ホワイトゴールドのドレスウォッチとか、そういうものが似合う生地だ。

ENGLAND – CLASSIC NAVY

最後は大袈裟なくらいにクラシックなネイビーだ。これは織元こそ不明だが、ドーメルのスーパーブリオやスキャバルのモンテゴベイと同じ時期に、イギリスで織られた生地であるのは確かである。

ネイビー無地のビンテージ・モヘアは、もう枯渇してから驚くほど時間が経っている。どこかのサルトリアとか生地屋とかで、スーツ着分のカットを探そうものなら、生きた恐竜を探しているかのごとく奇特な目で見られることだろう。

これが、それである。ダークネイビーにほんの少しだけ青を足した様な実に美しいネイビーに、ビンテージモヘアのしなやかさ。そして上品で煌びやかな光沢。

正直私個人としては、モヘアスーツの主人公はグレーだと思っている。なぜならグレーのモヘアには先ほども書いた様なある種の「カリスマ性」が宿っている。

しかしネイビーのモヘアにはある決定的な利点がある。それはビジネスやそれなりに堅いシチュエーションでも着られる普遍性だ。モヘアならではの彫刻的な立体感や、あの涼しげな着用感や、シワになりにくい特性をそのままに、ほとんど普通のビジネススーツのように着こなすことができるのは、ネイビーだけである。

決して派手な生地ではない。だからこそ、オーセンティックなシングルやダブルで仕立てよう。きっと春から秋にかけて手放すことのできない相棒になるはずだ。

Vintage Mohair Collection

今回のモヘアは、生地感を最もよく生かしてくれるニコラ・ジョルダーノの仕立てで。軽快でアンコンストラクテッドな仕上がりは、モヘアとの相性が最高だ。

NICOLA GIORDANO Suits × Vintage Mohair Collection
通常価格 456,500円 → 特別価格314,000円(税込) ※仮縫い付き。

こちらは【2023 AW オーダーキャンペーン】対象生地 ※期間中のみ

 

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