Four Vintage Overcoats – 並外れた4つのビンテージ・コート

ラグジュアリーなものだけが全てではない、というのはどの世界でも共通している。

例えば楽器にしても金額が高ければよく鳴るかと言えばそうとは限らないし、車にしても値段とその車のフィーリングや官能性は必ずしも比例しない。

しかし難しい点は、こういう話をするときラグジュアリーという言葉の対義語には「庶民的」とか「安価な」とかそういう言葉は当てはまらないということだ。

ことビスポークの世界においては、ラグジュアリーの対義語は(誤解を恐れず言うなら)…..「ビンテージ」だ。

重厚な存在感やその時代にしかなかった風合い、そして色。こういった唯一無二の世界は、決して素材や織りがラグジュアリーでなかったとしても、驚くべき価値を持つことになるのだ。

そうして今日、ここに4つのビンテージ生地がある。どれも美しいポロコートやチェスターフィールドコートに最適な生地だが、これまでに紹介してこなかったようなものもある。Extraordinary Stock(並外れたストックという副題にはそういう意味が込められている)

ICE BLUE TWILL

こんな色に出会うのはこの生地が初めてだ。

美しく透き通った濃いアイスブルーのトーンは、まるでクリスタルのように冴え渡る光沢を持っている。大きめのツイル織りの中で、カシミアの繊維がキラキラと輝くのが見える。

これはいくらか昔のコロンボの作品で、ウールに30%ほどカシミアを混紡したコート地だ。500g/m相当の中厚の生地感に、サファイヤが詰まったような色合いだ。手触りはカシミアらしく滑らかだが、ウールの強さを感じる。コートで仕立てたときに、たっぷりとした胸囲とか、背中のプリーツとか、そういうラインを綺麗に描いてくれる信頼感がある。

ただしこの生地に限っては、こういう御託すらも差し出がましいといったところだ。

あまりにも美しいブルー。ボトムスはベージュと合わせても、グレーと合わせても気持ちが良い。エクリュ系のタートルネックのニットにこのコートを羽織って、ブラウンのチノパンで締めても良い。クラシックなゴールドのアクセサリーを身につけても、スポーティなシルバーの時計を巻いても最高だ。合わせる何もかもが、このブルーのおかげでエレガントな陰影となる。

残念なことに2.8m …… ポロコート一着分だけしかない。もしこれを買い逃したら、どんなに数多くコート生地のバンチをめくっても umsonst! 無駄だ。イタズラに手元のコーヒーを冷ますだけである。

DEEP GREEN (売切れ)

これはクラシックなローデンコート(狩猟用防寒具)のグリーンだ。あるいは、英国の伝統的なジャガー・レーシング・グリーンと言っても良いかもしれない。先ほどの透き通ったアイスブルーから一転して、今度は山の色である。

しかしこれほどまでに深く、色気があり、そして野暮ったさとは無縁で「洗練」すらも感じるグリーンは珍しい。ブラウンはもちろん、黒のアイテムと組み合わせて都会で着ても美しい。

これは今になって人気を博しているあのJOHN COOPERの正真正銘のビンテージだ。HOLLAND & SHERRYが世界最高の生地メーカーとして君臨していた時代に、その足元でせっせと生地を織り続けていたあの織元である。

このグリーンのコート生地は、あくまで非常に伝統的だ。重さは700g/m近くあり、ずっしりともたれかかるようなウールの重厚感からは往年の英国を感じずにはいられない。もはやどれほどの原料がこの一着分に詰め込まれているか、想像もつかないほどだ。あまりにも緻密で、まるでレザーを持っているかのような錯覚に陥る。

ということは…この生地で仕立てたクラシカルな雰囲気の漂うポロコートは、一生物どころか孫の代まで着られる一着になる。着込めば着込むほど柔らかくなり、くたっとした風合いが増していく。こういう生地はもう40年近く作られていないし、こんなに美しいディープ・グリーンとなればもう二度とお目にかかれないだろう。

残念なことに、こういうコート生地は人間よりも力強いといっても過言ではない。きっとこのコートが柔らかくなる頃には、着る人も随分と歳をとっていることだろう。それが良い。目一杯クラシックなディテールと、オーセンティックなシルエットで仕立てよう。このコートは、洋服を超えて人生の相棒のような存在になるはずだ。

FOX BLUE

今日のストック生地は、実に個性的だ。これまで数多くのコート生地を紹介してきたが、これほどまでに個性の強い生地ばかりを揃えてキャンペーンを開催するのは初めてだろう。

これはFOX BROTHERSの、ある意味最もフォックスらしいブルーをまとったフランネルだ。これはウールのウーステッドで550g/m程度で「あの」フォックスらしい重厚感が溢れるような生地である。

手触りはパリッとしていて硬い。どんな天候にも、どんなシチュエーションにも負けない強さがある。言うまでもなく美しいドレープと、彫刻のような荘厳なショルダーラインを描いてくれる生地だ。しかしフォックスはそれだけではない。薄いのである。驚くほど重厚なのに、生地自体は決して厚さを感じさせない。

果たしてこの「薄さ」には非常に大きなメリットがある。それはコートらしい重厚感はそのままに、ディテールを非常にキレよく洗練された雰囲気に仕上げることができるということだ。

例えばポロコートの場合、パッチポケットの上にフラップをつけたり袖先にターンナップカフを付けたりする。生地が薄いと、全てのディテールが驚くほど鋭角に、まるで人間国宝の作るレザーアイテムのコバのように薄く仕上がってくる。これが実にエレガントな佇まいなのである。

決して派手なコートではない。しかしベーシックなものを長く着たいのであれば、これ以上に良い生地はなかなか無い。それにこれは折紙つきのFOX BROTHERSのビンテージフランネルだ。20年着ても擦り切れることはない。

MIDNIGHT PIACENZA(売切れ)

最後の生地は今回のストックの中では、ある意味いつものランバルディらしい生地かもしれない。非常にラグジュアリーで柔らかなピュアカシミア、それも希少なピアチェンツァのビンテージである。

これだけでも選ぶ理由としては事欠かないが、しかし今回はもっと別の切り口で言ってみよう。そう、この限りなく黒に近いミッドナイトネイビーだ。

先ほどのフォックス・フランネル(右)と比べていただければ色の違いは歴然だ。フォックスにしたって決して青すぎるということはないが、並べると左のピアチェンツァは黒にも見える。

しかし陽光の元では確かにブルーを感じさせる。この光の過言で表情を変える絶妙なミッドナイトネイビーは、チェスターフィールドコートの究極形だ。

もともとチェスターフィールドコートは、最も格調高い外套と言われるアイテムだ。他の実用的なコートに比べれべば装飾も少なく、ほとんどジャケットと同じ形をしていることからも、このことはすぐにわかる。

そしてその格調高さに最も寄り添う色と言えば、室内灯で「黒よりも黒く見える」ミッドナイトネイビーに他ならない。

スーツに合わせるコートとして、このミッドナイトネイビーのピアチェンツァで仕立てたダブルのチェスターフィールドを超えるものが存在するだろうか?

美しい光沢、滑らかでとろけるような手触り。そして深く、淑やかで優雅なネイビー。ビジネスでもパーティでも、きっと一瞬でその場の主役を奪うだろう。それも誰よりも控えめに、決して悪目立ちせずに。美しいチェスターフィールドコートにはそのような効果があるものだ。

Four Vintage Overcoats – 並外れた4つのビンテージ・コート

さて、そうは言ってもキャンペーンだ。これだけ力を入れて紹介したところで、結局これらの生地は破格で売れてしまうのである。だがそれも良いだろう。もうすでに何十年も眠ってきた生地なのだ。これ以上寝かせておくわけにもいかない。

全ての生地が一律プライスである。(Sartoria Ciardiは応相談)

① NICOLA GIORDANO MTO チェスターコート or ポロコート 通常価格 445,000円 → 特別価格 270,000円(税込 297,000円)
※既成サイズ、好きなモデルを選んでオーダー可能。(納期が最短なのもメリット)

② NICOLA GIORDANO MTM チェスターコート or ポロコート 通常価格 499,000円 → 特別価格 300,000円(税込 330,000円)
※仮縫い付きMTM

③ Sartoria Piccirillo Bespoke MTM チェスターコート 通常価格 565,400円 → 特別価格 350,000円(税込 385,000円)
※仮縫い、中縫い付きMTM

④ Sartoria Piccirillo Bespoke MTM ポロコート 通常価格 620,000円 → 特別価格 400,000円(税込 440,000円)
※仮縫い付き、中縫いMTM

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