こんばんは、プロフェソーレ・ランバルディ静岡の大橋です。
最近は「大人になれる本」というやくざなウェブマガジンに寄稿しており、こちらの執筆が遅れてしまいました。
どうせ何か狙いがあってすごすごと記事を書き始めたんだろう…なんて思いましたね。思いましたでしょう。私には何の狙いもありません。
今回入荷した素晴らしいアンナ・マトッツォのシャツの魅力を紹介し、予約と店頭でどんどん売り切れていく中、まるで「誰も着てはならなぬ」と言わんばかりに売れ残るストライプが売れたりしないかな、と祈っているだけなのです。
「君のしていることを彼らが笑ったとする。それを君がやめれば彼らは嘲笑するだろう。しかし君が最後までそれを貫き通したら、彼らは感嘆するだろう」
エピクテトス(哲学者)
なぜ人々はストライプのシャツを避けるか。それはストライプのシャツというセレクトが、少数派のものであるからです。
しかし私はここにもう一言、古代ローマ時代に現代にも通じる真理を説いた、かの足の不自由な哲学者の言葉を借りましょう。
「自由な意思は、盗人の手の届かない財宝である」
エピクテトス(哲学者)
何ゆえストライプを恐れるのか。自由な意思によって着こなされるスタイルは、それだけで崇高なものなのです。
なーんちゃって、私がストライプを発注したのは派手なのが好きだからです。
Anna Matuozzo シャツの存在感を変えた独創性
シャツはもともと下着である、ということは皆さんすでにご存知のところでしょう。
ですが現在において、シャツはすでに下着というジャンルを飛び越しています。ましてこのAnna Matuozzo アンナ・マトッツォの生み出すシャツは、それ単体でもはやジャケットやスーツに勝るほどの存在感を放っています。
なぜAnna Matuozzo アンナ・マトッツォはこれほどまでに注目されるものとなったのか。
英国のターンブル&アッサーやフランスのシャルべは名門のシャツブランドですが、しかしそれ単体に数多くの解説がつけられたり、まるで伝説の一枚であるかのように語られることはありません。
それに対してAnna Matuozzo シャツは、その一枚でその場を圧倒するような力強さ、存在感がある。
そして見るものはすぐに悟るのです。
このシャツは確かに伝説のシャツと言われるほどの価値がある…と。
もちろん彼女がアントニオ・パニコと共にロンドンハウスで活躍した職人であることも、その価値の一つでしょう。しかしAnna Matuozzo アンナ・マトッツォは、その独創性こそが本当の価値なのです。
この独創性はAnna Matuozzo アンナ・マトッツォのシャツを世界一と呼ばせるだけにはおさまらず、ひいてはナポリシャツそのものの存在を世界中に知らしめたのです。
アンナ・マトッツォのシャツの仕立てを一つ一つ解説していくのは非常に難しい。
天使の羽のように軽い着心地、芸術的なディテール
あらゆる部分が体に合わせた独自のカッティングで作られるため、襟、アームホール、袖先などいたる所が複雑にカーブしている。まるで吸い付くようなシルエットは、計算されつくされたカーブが生み出すものなのです。
もちろんその結果として、着心地は天使の羽のように軽い。
美しさで言えば、やはりギャザーと手縫いに目がいくかもしれません。今でこそ一般的となった大胆なギャザーですが、しかしAnna Matuozzo アンナ・マトッツォのそれはやはり繊細で美しい。
また芸術的なステッチワークについては、誰もが一目でお気づきでしょう。
Anna Matuozzo アンナ・マトッツォのシャツはやや太めの糸で縫う星ステッチが非常に効果的に用いられている。ヨーク部分はもちろんのこと、襟前部分にもステッチが入るのが面白いですよね。私のようにセンツァ・クラバッタで着る人間には、とても魅力的な雰囲気です。
ですがそういったものを全て忘れさせてしまうほど強烈な印象を持つのが、襟。Anna Matuozzo アンナ・マトッツォのシャツの襟はもともと柔らかく綺麗な形をしていますが、今回は私が実際にビスポークをして生み出してもらった特別な襟型を採用しました。
ほんの僅かにカーブしたワイドスプレッド、大きめの襟でありながら芯無しで軽やかに。凄腕バイヤーよろしく実にかっこ良く仕様を申し上げておりますが、実は私の着こなしを参考にアンナ・マトッツォさん本人に決めてもらったのですな。
いや、真面目な話バイヤーの腕は、いかにそのブランドや職人の良さを引き出せるかにかかっているのです。彼の思い込みや執着を形にするために職人がいるわけではないのですから。
さあ、皆さんも是非この機会にAnna Matuozzo アンナ・マトッツォのシャツをお試しください。
私の遅筆のせいで、白は完売、青は残り一枚、全サイズ残るはストライプのみ。次回の入荷は未定で、早くとも来年の4月…?
でもこのストライプもアンナ・マトッツォさん本人に選んでもらった、特別な生地なのです。(私なら絶対に、このストライプを選ぶでしょう。何よりも、アンナ・マトッツォらしいじゃないですか)