【サマーセール特別企画】ランバルディの生地棚 #2《Breathtaking Vintage》

さて、第二弾である。前回の記事はこちら

これほどまでに早急に第二弾をやるのには理由がある。

大量の生地在庫で足の踏み場がないからだ。昨日も新しくナポリから巨大なダンボール二箱分の生地が届き、もはや黙示録の兆候である。

今回紹介するのは、Breathtaking Vintage 息を呑むようなビンテージ生地の2着だ。

Breathtaking Vintage No.1《The Enigmatic》

エニグマティック、すなわち不可思議なビンテージというものは少なくない。しかしこの生地に関してはもう5年ほど前に手に入れてからずっと、見惚れてきた最上級のMistero(ミステリー)だ。

端的に言えばカーキに青のほんのりとしたチェックだか、しかし見る人を惹きつけるこの魔性の雰囲気は、そんなに簡単に説明することはできない。

あるときは無地のように沈み、あるときはアバンギャルドなチェック柄を浮かべる。そしてこのビンテージウールカシミア特有の光沢感だ。

生地はパリッとして力強く、手触りは相反する滑らかさだ。ツイルの織り柄が堅実なキャバルリーのように美しい….かと思えばチェック柄が浮かんで、急にラグジュアリーなジャケット生地に表情を変える。

これはもはや何年前のものか分からない。グアベロの生地だということはわかるが、あの実直な老舗生地メーカーがこれほどまでに不可思議で、力強くも退廃的なジャケット生地を作っていたとは想像し得ない。

全てが謎に包まれている。私はずっとこの生地で自分のジャケットを仕立てよう、と企んできた。しかしどう仕立てたら良いか、これまでは分からなかったのである。

今では答えがわかるような気がする。この生地はシングルジャケットで少しだけゴージを下げ、ラペルを通常よりも1cm細くし、スクエアでクラシックな肩周りを注文して、Vゾーンの深い2つボタンか3つボタン段返りの2パッチポケットで仕上げるべきだ。

このふてぶてしいまでに細かい注文内容は、洋服屋の直感である。

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Nicola Giordano ジャケット MTM 生地・仮縫い込み

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No.2《T&L Heavy Worsted》

もう一つの生地については、むしろ王道の真ん中を行くビンテージ・ウーステッドと言って良いだろう。しかしこの重さ、この目付け、そして堂々たる腰の強さは普通ではない。

テーラー&ロッジがその名を轟かせたのは、数多くの有名生地ブランドの最高級ラインを裏で織っていたからだ。その活躍ぶりは聞けば驚くほどである。

しかし本当に価値のあるテーラー&ロッジの生地というのは、あのMOXON モクソンに通じる感覚を持っている。重厚なウーステッド。そして失われたビンテージウールの感触。愛すべき遺産だ。

何よりも素敵なのは、この遺産が平凡さとかけ離れた生地であること。そしてその非凡さが決していやらしくなく、むしろ好印象なことだ。

大抵このような「究極のビンテージ・ウーステッド」で現代まで惰眠を貪っているのは、キテレツなストライプか、あるいは晩年のピカソですら放棄するような色柄だ。

しかしこれは最高にクールだ。熟成された上品かつ知的なブラウン。まるで砂のように細かなメランジェ。そして控えめ….姿を隠しているかのように控えめでありながら、見る人が見れば希少なビンテージであることがわかるグレンチェック。

完勝だ。秋冬のスーツをこれほどに面白くしてくれる生地は他にない。

勿論 350g/m以上あるヘビーウーステッドだから、仕立ての美しさは説明不要だ。しかし付け加えるのなら、重さ=厚さであはなく、この生地は重さにしてはむしろ薄手だ。これが何を意味するかって?

スーツになったとき秋冬物にありがちなもっさり感がなく、シャープでエレガントなラインを描いてくれる。シワに強く、着込むことで風合いを増すのもこのタイプの特徴だ。

この生地の仕立て方は簡単だ。ダブルブレステッドにチェンジポケット付きの英国的なスーツ。私ならこれ一択だろう。

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Nicola Giordano スーツ MTM 

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今回も1着分ずつ限定である。

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