Sartoria Caracciolo 英国的なセットアップ(ご納品)

英国的な、という言葉に私たちはめっぽう弱い。

どうして旬野菜の天ぷらに高尚な抹茶塩をわずかに振って食べている日本人が、Fish & Chipsにアップルビネガーを大量に掛けて食べる英国人にこれほど強い憧れを抱くのか。

その謎の解明はまたの機会にするにしても、このグレンチェックへの憧憬はもはや無視できないものと言えるでしょう。

今回は最も英国的なミディアムグレーのグレンチェックを、チャコールグレーのパンツと合わせたSartoria Caracciolo セットアップのご納品です。

Fox Brothersの260g/mと軽快な春夏ウール『GOLDEN FOX』。シワにも強いハリ感のあるフレスコでありながら、しなやかさと上品さを兼ね備えた春夏の一押し生地です。

当店にいらっしゃったお客様が「真夏の東京でも英国紳士であり続けたいのですが」と仰った際には「GOLDEN FOXのバンチから生地を選び、サルトリア・カラッチオーロでお仕立てください。そうすれば英国かぶれのイタリア紳士にはなれるでしょう」と答えています。

このジャケットはまさにそのような一着。

英国的なグレンチェックに、ナポリ的な大身返し。ボタンと裏地のトーンでしっかりとブリティッシュなテイストを守りつつ、ナポリ仕立てらしい軽快さを感じさせます。

サルトリア・ナポレターナによって仕立てられたジャケットは、一見してそれとわかる雰囲気です。

その中でもサルトリア・カラッチオーロは伝統的な雨降らし袖、ダブルステッチ、バルカポケットのようなナポリ的ディテールは守りつつ、クラシカルな衿幅やゴージラインで実に優雅な雰囲気を醸し出しています。

さりげないところですが、ジャケット内側を見ても絶妙な柄合わせがなされています。

このようなグレンチェック生地を使用して破綻のない美しさを実現するには、熟練した職人によるカッティングが不可欠です。

トラウザーは遊び心のあるサイドアジャスター付き。

サルトリア・カラッチオーロは生地や仕立てに合わせて金具を選びますが、このアンティーク調の金具は実にクラシカルな雰囲気があります。

またサイドアジャスター部分も、当然ながら手縫いによって取り付けます。ビスポーク的なディテールだからこそ、この部分がミシン縫いだと説得力がありません。

引き算による美しさが比較的容易に実現可能であるのに対し、このような「加えることで得られる美しさ」は、クオリティを伴うことが必須なのです。

ボタンフライの手縫いホールの美しさは、ナポリのサルトリアでも随一です。

これは多くの古典的サルトリアがトラウザーの縫いを外注しているのに対し、サルトリア・カラッチオーロではジャケットと同じ職人が一貫して製作しているからでしょう。

またポケット周辺に関しても丁寧なハンドステッチが入ります。ふとジャケットをめくりあげ、ポケットに手を入れたとき。この素敵な手縫いステッチの存在を否応なく感じるでしょう。

それでは、ごきげんよう。