様々な色合いやトーンで遊ぶことのできるネイビーに対し、選択肢の少ないグレースーツ。中でもチャコールグレーに限定するのであれば、もはや「生地感」と「仕立て」だけの世界になります。
ネイビーのスーツがイタリア人にとって遊びの場であるならば、チャコールグレースーツは限定された中での美しさを競う「Concours d’Elegance エレガンスのコンクール」です。
そして私は心の中で、この一着に名誉ある賞を贈ったのです。
このスーツはフルハンドメイドのNicola Giordano ニコラ・ジョルダーノで、EUROTEX ユーロテックスの極上カシミア混ウールを用いて仕立てた一着。
艶やかな乙女の髪を思わせる光沢と、カシミアの存在を確かに感じさせる滑らかな手触り。やや重量感のある目の詰まったウールは、ハンドメイドの仕立てと相まって極上のラインを描きます。
チャコールグレーとは言え地味さを感じさせないどころか、ドレッシーな華やかさすら感じさせます。
ドアを跳ね上げた派手な原色のスーパーカーよりも、隣に佇む手入れの行き届いたクラシックカーの方に目を奪われるような感覚です。
これほどまでに美しいチャコールグレーのビスポークスーツをさらりと着こなしていたら、どんな派手な着こなしよりも目を引くことでしょう。
雨降らし袖はNicola Giordano ニコラ・ジョルダーノだけが持つ独特な雰囲気。ふんわりとした寄せ方で、優雅さとラグジュアリーさを感じさせます。
また肩のシームラインはぐっと後方に逃げ、前肩に合わせた立体が生まれています。
襟から肩にかけてのラインを少し下から見ると、わずかにコンケープしているのがわかります。これは肩パッドではなくカッティングの為せる技です。
目付の良い生地であることも相まって、肩から胸ポケットに至る部分のマスキュリンな立体感も出ています。男らしく、色気を感じさせる部分です。
ゴージラインや襟のシェイプは非常にクラシック。ナポリ的な軽快さを持ちつつも、堂々たる風格を携えています。
ジャケットの見えない部分に至るまで手縫いでこなしています。ハンドメイドであることはもちろんのこと、その手作業のクオリティの高さもまたNicola Giordano ニコラ・ジョルダーノの魅力です。
トラウザーもまた、細やかな手縫いによって作られます。ポケット周辺はもちろんのこと、側面のシームラインにもステッチが施されています。
トラウザーは立体的なシルエットのために丁寧なクセ取りを行っています。ユーロテックス生地の濡れたような光沢感と、それを際立たせるアイロンワーク。そして細かく隙のない手縫いのステッチ。最高峰のビスポークスーツであることが一目でわかります。
このスーツはクラシックな雰囲気に合わせてベルトループ付きの2プリーツで仕立てています。
チャコールグレーのスーツはダークスーツとして、結婚式等でも着用することのできる格式高い一着です。
そしてその中でも、ユーロテックスの極上カシミア混ウールを使ってNicola Giordano ニコラ・ジョルダーノで仕立てた一着。
一度この美しさを見たら、もう忘れられないことでしょう。