美しいアイリッシュリネンのビンテージ生地を見つけるのは、落とした一本の鍵を月明かりの下で見つけるよりも難しいでしょう。
しかしそれがリネン混となれば話は別です。
ビンテージのリネン混生地には、人々が隅から隅まで探し回っているアイリッシュリネンに匹敵するクオリティの極上リネンが使われているにも関わらず、まだ在庫が残っていることが多いのです。
今回のビンテージ生地も英国製のウールリネンですが、この極上の手触りを体感すると、これが「只者ではないリネン」を含むことは想像に容易いのです。
光沢、しなやかさ。全てにおいて極上品です。そんな素晴らしいビンテージ生地を、サルトリア・カラッチオーロにて仕立てた一品。
作りはニコラ・ジョルダーノと同様のハンドメイドですが、まだブランド創設前のオーダーでしたのでカラッチオーロネームです。
すっきりとしたショルダーラインとクラシカルなラペル、ふんわりとした風合いのマニカ・マッピーナ。すぐにこのサルトリアの仕立てだと分かります。
アームホールはお客様の肩幅に合わせて複雑な曲線を描きます。型通りのカッティングでは絶対に実現することのできない、芸術的なラインです。
襟から肩へと下っていくなだらかなライン、わずかに後方に逃げていく肩線。非常に多くの要素が折り重なって出来る造形です。
オーダーシート上では「肩幅」という数値でしか表されない部分ですが、当店では写真と言葉によってお客様の身体に合わせていきます。ここが一般的なMTMともっとも異なる部分でしょう。
この前身頃の立体感も圧巻です。しなやかで柔らかいリネン混春夏生地であるにも関わらず、ふんわりとした胸周りのフォルムが美しい。
トルソのサイズが大きくお見せできないのが残念ですが、ウエストの絞りは実にナチュラルかつドラマチック。イタリア的な美意識が自然と現れている部分です。
ボタンホールをはじめとするディテールも最高の仕上がりです。
きめ細やかで、繊細な雰囲気。カジュアルなジャケットではありますが、全体からは洗練された優雅さを感じます。
リネン混の生地では、サルトリア選びが非常に大切です。とにかく軽快に着こなしたいのであれば、このようにサルトリア・カラッチオーロのジャケットを。
副資材を最低限に抑え、美しいシルエットで包み込むような彼らの仕立てであれば、真夏でも手放すことのできないジャケットに仕上がるはずです。
それでは、ご機嫌よう。