前回はブラウンという色にフォーカスをしてキャンペーンを開催したが、今回は全く別の切り口でいこう。
“The Legendary” Cashmere Suiting & CashSilk Jacketing
伝説的なカシミアスーツと、カシミアシルクジャケット。なんとも大袈裟な書き出しなのはいつも通りだが、もう少しお付き合い頂きたい。
このブログでは数あるカシミア生地を紹介しているが、その中でも「伝説的な」という形容詞が最も相応しいのは、他ならのあのブランド….そうKiton キートンが用いる生地だろう。
ご存じの通りキートンは世界で最もラグジュアリーな生地を使う既成服ブランドだ。そのカシミア生地は、ロロピアーナやコロンボなどの超一流メーカーから、特に上質なもの、上澄を掬い上げたコレクションというべきものである。
この辺りはレザーブランドで言うところのエルメスが近いはずだ。
しかしこのKitonの生地はある意味門外不出であり、一般のテーラーはもちろんナポリのサルトリアでも選んでオーダーすることは不可能だ。
なぜそれがこんな東の果ての国の、静岡なんて田舎の街の小さな洋服屋でキャンペーンになっているのか?
…大人の事情である。
①The Legendary Cashmere Suiting
ブリオーニやブルネロクチネリをはじめとして、世の中にはラグジュアリーで贅沢な生地や素材を使うブランドはいくつも存在する。しかし中でも生地自体を売りにしているブランドはキートンだけだ。
だからこそどんなカジュアルジャケット一着をとっても、キートンが生地をおろそかにすることはない。最高峰のラグジュアリーを貫き絶対にそのクオリティを落とすことがないのである。
そこでこのカシミアだ。
当店ではまるでウールかのように話題にしているウーステッドカシミアだが、中でもキートンのカシミアはとろみが強く柔らかい。だがその最上級のラグジュアリーの中に、サルトリアが求める「芯」を感じる強さがある。これがキートンの生地だ。一度手に取ればもう絶対に忘れることはない。
だが私がそんな平凡な魅力だけでこの生地を推していると思ったら大間違いだ。(そこはナポリ裏口入店、もう一癖ある)
これはスーツ生地なのである。
極上のスーツ生地を追い求めれば、さまざまな素晴らしい生地が見つかることだろう。昔紹介していたJOHN COOPERのドブクロスとか、あるいはその元ネタのVictoryとか、あるいはSuper 180’sの4PLYとか、まあとにかく色々なものが存在する。
だがウーステッドカシミア100%のスーツ生地というのは、殆どキートンの専売特許だ。繊細すぎるのではないかって?もちろん毎日着るスーツではない。だが、スーツ生地という観点を持ってこの色柄を見て欲しい。
美しいネイビーとブルーのワントーンで織られた、モダンとクラシックを兼ね備えた美しいグレンチェックだ。決して懐古主義的ではなく、むしろデザイナーズ的な洗練されたエレガンス。しかし控えめなサイズの格子柄と抑えたトーンのおかげでスーツになってもクドさがない。
そしてウーステッドカシミアの光沢と滑り感だ。正直に言って、街中では少々気を遣うはずだ。しかしそんなことがなんだって言うのだろう?
ダークネイビーかミディアムグレーのハイゲージのタートルネックを着て、このスーツでデートに行こう。溢れ出る贅沢さ、そして優雅さ、ふと触れたときの肌触りの良さ。これを完璧と言わずになんと言おう。
それに先ほども書いたようにキートンのカシミアは芯がある。マエストロ・ピッチリーロの立体的なハンドワークか、チャルディのTradition 伝統 に掛かれば、スーツであってもカノーヴァの彫刻のような美しい造形を描いてくれる。
②The Legendary Cash Silk Jacket
というわけでこの伝説的なスーツ生地と合わせて紹介するジャケット生地といえば、やはりキートンしかないだろう。
だがこの生地もまた、普通ではない。これは知る人からすれば「最もキートンらしい」生地と言っても過言ではないとっておきの一着だ。
すなわちウーステッドカシミアにシルクとリネンを混紡した合物ジャケット生地で、しかもホップサックである。
まずカシミア、シルク、リネンという生地自体が殆ど存在しない。サマーカシミア、という詩的な響きは実質キートンが独占しているといっても過言ではない。
(もしもバンチでそんな生地があるのなら、私は全財産とオンボロのマセラティを投げ売ってそれを買い占めよう。全部投げ売っても1.7mしか買えないって? 悲観することはない。ピッチリーロでやや着丈の短いジャケットを一着仕立てよう)
この美しいジャケット生地は、背抜きのパッチポケットが最もよく似合うカシミアだ。世界の頂点に立っても恥ずべきことのない極上のカシミアなのに、公園で犬の散歩をしていても優雅なジャケット生地である。
シルバーグレーの美しい色からしてもブルー系のデニムに非常によく似合うし、ホップサックの雰囲気がチノパンにも合うし、チャコールのトラウザーでビジカジに着こなすことも出来る。まとめ方でいくらでも異なる雰囲気を演出できるのである。
ライトグレーまではいかない絶妙な明るいトーンもまた着こなしやすい。そしてシルクとリネンのほんのわずかな素材感のおかげで、サマーカシミアらしさがわずかな洒脱感を出してくれる。
実際は300g/m近いウーステッドなので夏向けというよりは、むしろインナー次第で冬も着れそうなスリーシーズン生地だが、この表情の豊かさこそがキートン的なLa Dolce Vitaである。リネンだから夏とか、カシミアだから冬とか、そういう世界観ではない。
少し暖かい風の吹く冬の昼間に、あるいは涼しげな晩夏の夕べに。カシミアシルクリネンというのは、そういう風に普段のライフスタイルの中で「一瞬の美しさ」をさらに楽しむための服なのだ。
L’emozione e la paura. Gli sparuti incostanti sprazzi di bellezza. – Jep Gambardella
情緒と恐れ。不規則な美しさのわずかなほとばしり。
これがカシミアシルクリネンだ。なんと漠然とした商品紹介だろう。しかし親愛なるこのブログの読者の皆さんには、きっとどんなに長い解説よりも深く響くはずだ。
“The Legendary” Cashmere Suiting & CashSilk Jacketing
①The Legendary Cashmere Suiting
Sartoria Piccirillo ビスポークMTM スーツ 通常価格 647,900円 → 特別価格 440,000円(税込484,000円)
②The Legendary Cash Silk Jacket
Sartoria Piccirillo ビスポークMTM ジャケット 通常価格 543,400円 → 特別価格 370,000円(税込407,000円)
※いずれも仮縫い、中縫いサービス付き。
※東京、静岡どちらかで初回採寸、仮縫いが可能です。
※ニコラ・ジョルダーノ、サルトリア・チャルディでお仕立てをご希望の方は別途お問い合わせください。
お問い合わせはコンタクトフォームから。