Holland & Sherry サルトリア・チャルディの宝物

予想に反して、というべきか想像通りか、先日のキャンペーンのビンテージ・シルクリネンに関してはすぐに問い合わせを頂いて、一瞬にして売り切れとなってしまった。

ありがたい限りだが、困ったのは今年2回目のナポリ出張中の店主である。とにかくナポリで地味な仕事に奔走している最中はこのキャンペーンで凌ごうと思っていたからだ。

そこで今回は今週末に紹介予定だったサルトリア・チャルディの美しい2つのビンテージ生地を、早速紹介していこう。

Treasures from Sartoria Ciardi

サルトリア・チャルディのアトリエは宝箱のようなものだ。

それこそレナート・チャルディの時代から受け継がれた数々のビンテージは勿論、最近になっても多くのビンテージ生地商たちがサルトリアを訪れ、素晴らしい生地から順番にサルトリア・チャルディに置いて帰るからだ。

勿論ビキューナや、半世紀以上も経ったビンテージに関してはランバルディの生地棚も決して負けていないと自負している。しかし店がいくら頑張ったところで、決してサルトリア・チャルディには敵わないものがある。それがHolland & Sherryのストックだ。

サルトリア・チャルディとホーランド&シェリーには、驚くほど強い絆がある。バンチに載ることのないような限定生地や、目を見張るようなビンテージが、直接このアトリエに持ち込まれるのである。

今日はその中でも最も印象的な二つのHolland & Sherry生地を紹介しよう。

1. Brown “Gaberdine” Spun Cashmere

この生地については語らなければいけないことがたくさんある。

まずはこれが、もはやバンチに載っていたかすら怪しい100% Worsted Spun Cashmereであることだ。ホーランド&シェリーの数ある生地ラインナップの中でも、スパンカシミアは圧倒的にラグジュアリーな存在だ。

極上のカシミア原毛を英国的なウーステッドとして織り上げたこの生地は、滑らかかつ薄手で非常に軽やかな風合いでありながら、腰が強く実に美しいドレープを描く。

しかしそれだけではない。この生地の最も珍しい点は、100%カシミアでは見たことのないような煌びやかなギャバジンであることだ。

一見すると普通の無地の生地だが、近くで見るとギャバジンならではの斜めの織柄が美しく浮かび上がる。艶やかなウーステッドカシミアでなければ、ここまで色気ある雰囲気になることはない。光の当たり方で表情を変えるのも面白い。太陽光では輝くが、室内のライトではシックな雰囲気でビジネスシーンにも問題なく着用できる。

なんと美しいブラウンだろう。イタリアの夏の木陰で食べるジェラートのような、Cioccolato Brownだ。単体のジャケットとして、最高のチョイスだ。白やアイボリー系のトラウザーと合わせても美しいし、チャコールグレーやダークブラウンとの組み合わせも素晴らしい。あるいはデニムでカジュアルに着こなすのもたまらない。

決して沈んだトーンではないブラウンだが、控えめの彩度と上品かつ艶やかな光沢の組み合わせで独特な陰影を描いてくれる。

この質感、素材、色、そしてHolland & Sherryのビンテージ。他に一体なにが必要だろう?

ネイビー以外で最高のベーシックジャケットを求めている人に完璧な答えだ。

2. “Untold Victory” Super 160’s + Cashmere + Silver Mink

ホーランド&シェリーのヴィクトリーという生地について、改めてくどくどと解説する必要はないだろう。

Victoryは数あるビンテージ生地の中でも幻のような扱いを受けている、至高のウーステッドだ。Super 160’sの極上ウールにカシミアと、シルバーミンクという希少な獣毛を織り込むことによって、重厚さのあるウーステッドにまるでビキャッシュやシルクのような柔らかさをもたらしている。

特に起毛感のあるSupreme Victoryは、その質感の良さからナポリでも「史上最高のフランネル」と言われることが多い。

だが残念ながらVictoryシリーズは廃盤で、そのビンテージ生地もすっかり採掘されつくしてしまった。

しかしここに……サルトリア・チャルディのアトリエに美しいネイビーのフランネルがある。その耳にはSUPER 160’s 2 PLY WORSTED WITH CASHMERE & SILVER MINKと刻まれた、極上の生地だ。

あのSUPREME VICTORYと全く同じ滑らかなかつ重厚な質感で、素材も織りも全く同じ。そもそもSILVER MINKを使ったウーステッド生地というだけで、他にほとんど例がない。

しかしこの生地にはVictoryとは異なる名前がついている。Chequers。それがこの生地のタグに書かれた名前である。

果たしてこのChequersという名前は、デタラメも良いところだ。

なぜならホーランド&シェリーの愛好家ならご存じの通り、Chequersというバンチは280g/m程度の全く様子が異なるフランネルで、良質ながらこれとは到底関係のないバンチだからだ。

さて、ここにどんな事情が隠されているのかは分からない。

だが目の前にあるこの美しく、永遠のクラシックともいうべき極上のネイビーをたたえるこの生地。この生地は明らかに化けの皮を被った、SUPREME VICTORYである。

今時になって無地のネイビーのSUPREME VICTORYなんて、サルトリア・チャルディのアトリエで出会わなかったら、ただの出来の悪い冗談である。しかしこの生地はここにある。今、目の前に……。

Treasures from Sartoria Ciardi

1. Brown “Gaberdine” Spun Cashmere
Sartoria Ciardi JK トランクショー 仮縫い付き ビスポーク ¥613,800 → 特別価格 ¥550,000

②”Untold Victory” Super 160’s + Cashmere + Silver Mink
Sartoria Ciardi SUITS トランクショー 仮縫い付き ビスポーク ¥702,900 → 特別価格 ¥670,000

・生地の長さからスリーピースも可能。スリーピースの値段はご相談ください。

・東京(渋谷オフィス)もしくは静岡にて次回トランクショーで仮縫い。初回の方は事前に初回採寸が必要です。

※Sartoria Ciardiは半金でのオーダーが可能です。希少な生地のため生地のみのお取り置きはできませんが、ご了承くださいませ。

お問い合わせはコンタクトフォームから。