【売り切れ】La Meraviglia 驚くべきカシミア by Piacenza

過ぎしクリスマスイブの夜のことだ。

田舎の洋服店の店主は赤ワインの栓を抜いて、冷え過ぎたグラスを石油ストーブに照らしては温めていた。それは数日間かけて準備したブログを公開する段取りがついたからであった。

彼には生地があった。それはとっておきの生地で、あのキートンから拝借した素晴らしいカシミアだった。彼はこの生地を、今年を締めくくるキャンペーン品として公開する予定だったのである。

というわけで、ブログを公開すると彼は早速ワインをグラスに注ぎ、いわゆる「仕事納め」の瞬間に酔いしれようとしていたのである。

その10分後の様子は周知の通りである。早速1件目の問合せメールが届いたかと思えば、それから怒号のように問合せメールが届き、大慌てでブログに売り切れの追記をした後、ワインには一口も手をつけず「売り切れお詫びメール」を大量に送って過ごす夜となったのである……。

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私にしたって、まさか3日間も掛けて用意したRegalo di Natale(クリスマスの贈り物)が、ブログ掲載から10分も経たずに売り切れてしまうとは夢にも思わなかったのである。

Il mondo è pieno di meraviglia.

世界は驚きに満ち溢れている。

まさにこの言葉の通りだ。

このような驚きの後に再びキャンペーンを行うのは、簡単ではない。

なぜなら前回ほどの驚きを生み出すのは難しいし、私にしてもこれ以上「お買い得!」を続ければ正月におせちを食べるどころか、2月末まで餅の入っていないお雑煮を食べて過ごす羽目になるからである。

そういうわけで私は決意を決めた。「あと一回だけ馬鹿げたキャンペーンを行おう。そして仕事納めとしよう…..」とそういうわけである。

アザミの実、ピアチェンツァの驚くべきカシミア

チェスターフィールドコートを注文しようという考えが浮かんだときに、美しいネイビーのピュアカシミアの無視することはできない。

なぜならそれは永遠のクラシックであり、もしも持っていないのであれば(あるいはアップグレードしたいと願うのであれば)早急に手に入れるべきものだからだ。

しかしそうでなかったとしても、ピアチェンツァのピュアカシミアを無視することのできる人はいないだろう。なぜならばこのカシミアはあまりにも美しく、豪奢で、官能的だからだ。

驚くべき美しさだ。これほどまでに美しい生地をどうして私が手元に残していたのか、一層謎が深まるばかりである。

ピアチェンツァのカシミアは数あるメーカーの中でも頂点のクオリティと言われている。ここに並ぶカシミアはロロピアーナと、ゼニアのインナーモンゴリアンカシミア位のものだ。

しかしその三つの中でもピアチェンツァのカシミアには、他のカシミアにはない圧倒的なメリットがある。それは創業から300年近く経った現在にも、アザミの実を使って仕上げをおこなっているということだ。

アザミといえば菊科の植物で、スコットランドの紋章にもなっているあのトゲの多い植物だが、これを使ってカシミア生地の表面を起毛させるのが、伝統的な生地の織り方なのである。あまりにも古風で時間とコストが掛かるため、多くにメーカーは現代的な機械でこの仕上げを行なっている。

しかしピアチェンツァは今なおこの古風な製法にこだわっている。すると何が良いかといえば、無駄に生地を繊細にしなくても極上の風合いを出すことができるのである。

つまりピアチェンツァのカシミアは見た目では濡れたように輝き、ヴィーナスの肌のように滑らかで官能的な手触りであるにも関わらず、しっかりとした強さがあるということだ。

このコート生地も軽快だが、しかしその質感はむしろ凝縮感があり、毎日身につけたくなるような安心感がある。(フェラーリの外観をしたトヨタのようなものだから)ある意味、これほど贅沢な生地はないだろう。

毎日使えるエレガントなチェスターフィールドコート。しかも美しいロイヤルネイビー。普段の私ならば「悩む理由が値段なら買うべきです、なぜなら20年後にも着ているでしょうから」と真顔で言うことだろう。

しかし今回はおちゃらけているので、このように言おう。「買うべきです。なぜなら20年後にも着ているでしょうし、非常に間抜けなキャンペーン価格だから」

La meraviglia(驚くべきカシミア)

さて、1着分しかない生地だ。しかし2.4mある。つまり大柄な人でもたっぷりとしたチェスターフィールドコートを仕立てられるし、小柄な人ならポロコートも作れる。

今回のキャンペーンはこのようにしよう。

Piacenza 100% カシミア2.4m 通常生地代 118,800円 → 売り切れ

つまり、このコートは実に馬鹿げたことに生地代無料、そして通常の工賃から更に2万円引きでお仕立て可能ということだ。もちろん早いもの勝ちである。

これは年末の気まぐれ、非常に間抜けな思いつきから開催されたものである。もし売れないうちに正気に戻ったら、早速取り下げて真顔で次のキャンペーンを開催する予定である。

(コートの価格はサルトリアやデザインにもよるが、多くの場合スーツと同額もしくは+20%なので、価格表をご参照あれ)

ご注文、お問い合わせはコンタクトフォームから。

 

PS. 私ならばサルトリア・ピッチリーロでシングルのチェスターコートを仕立てることでしょう。フラップ付きのクラシックなポケットに、美しい水牛のボタンを合わせて。