Sartoria Ciardi サルトリア・チャルディで仕立てたビスポーク麻ジャケット

こんにちは、プロフェソーレ・ランバルディ静岡の大橋です。

今日は非常に真面目な面構えで、新しく仕立て上がったSartoria Ciardi サルトリア・チャルディのジャケットをご紹介いたしましょう。というのも先日の真面目極まる短編記事に対し「君は一体どこで布を売っているのだ?」というメールを頂いたからです。

その日のことについて、洋服屋の店主はこのように記しています。

の日私はベオグラードからアラブ首長国連邦に向かう飛行機に乗っていた。

しかしどういうわけか飛行機がアブダビ空港についたとき、その時刻は予定よりも一時間以上遅れていた。かくして私が航空会社のカウンターに行くと彼らはこのように言ったのである。

「あなたのナリタ行きの飛行機は、もう間に合わず乗り継ぎができません。24時間後の飛行機とホテルをあなたにご用意いたしましょう。では、アラビアの風があなたに癒しを運ばんことを」

彼らはそう言うと私を3つ星の宇宙基地のようなホテルへと連れていった。

すでに24時を回っており、食事も出ない。私は仕方なくホテルのバーでいじけたようにビールを飲んでいた。すると疲れで酔いが想像以上に回ってしまったようだった。

その後のことはよく覚えていない。

次の朝、意識がはっきりと覚めたとき、私は砂漠にいた。

それは果てしない砂の土地で、残酷なほどの静寂が耳に突き刺さり、ときより風が砂を巻き上げるだけの場所だった。

酔った勢いで「アラビアの砂漠へ連れていってくれ」とホテルのカウンターで喚いた私を、翌朝彼らの手配した砂漠ツアー業者が「私自身の希望通り」砂漠へと連れていったのである…。

Sartoria Ciardi サルトリア・チャルディのジャケット

どうです、視覚効果で実に自然豊かなオアシスのように見えるでしょう。もちろん店の前の階段ですよ。

今回はSartoria Ciardi サルトリア・チャルディのアトリエで見つけたグリーンのアイリッシュリネンで、夏物のジャケットを仕立ててもらいました。

このジャケットは実にSartoria Ciardi サルトリア・チャルディらしい一着でありながら、同時に私の好みを強く反映したものでもあります。

リネンで仕立てるジャケットは常に春夏のベーシックですが、そこに数十年前のナポリのビンテージ感を少しだけ追加する。それが今回の狙いでした。

シルエットはいかにもSartoria Ciardi サルトリア・チャルディのハウススタイルを感じるものですが、通常よりもさらに少しだけボタン位置が低くなっています。シルエット全体は殆どエンツォに任せて決めてもらっていますが、ボタン位置と着丈に関してはほんの僅かに低く、そして長くしてもらっています。

結果としてはダイナミックな躍動感を手放し、替わりにエレガントな落ち着きのあるラペルと、お釣りで美しいウエストのくびれを頂いたという具合です。この辺りは個人の好みで決めるべきことですし、仕立てるサルトリアでも変わってくるかもしれません。

わずかにカーブした大きめの上襟と、直線的な下襟。この組み合わせがSartoria Ciardi サルトリア・チャルディの特徴です。肩幅はあくまで人によって異なりますが、強いて言えば通常よりもやや狭めに取るのがハウススタイルと言えるかもしれません。

控えめでエレガントな雨降らし袖は、ナポリ仕立ての中ではかなりクラシックな部類に入るでしょう。しかし、極端すぎるものはエレガンスから外れている。それが彼らの考え方のなのですね。

肩のシームラインは後ろへと逃げるため、正面からだと途中で消えるように見えます。この点については、いかにもナポリらしいディテールと言えるでしょう。

今回のSartoria Ciardi サルトリア・チャルディジャケットで私が指定したのは、ボタンとベントです。袖口のボタンは30年前のナポリ仕立てジャケットに見られるような一つボタンです。

今では色々なジャケットで一つボタンにされているのを見かけますが、春夏物ならリネンやコットンのパッチポケットのジャケットの際におすすめの仕様です。

ちなみにSartoria Ciardi サルトリア・チャルディは特に希望がない場合、ダブルステッチもパッチポケットのジャケットのときだけ用いるのが基本です。

また今回のジャケットをノーベントで仕立てているのも、30年前のナポリ仕立てに着想を得ています。

ノーベントはもともとドレッシーな仕様と言われており、立ち姿に重点を置いたディテールと言えます。これは柄ものに合わせるのではなく、無地のリネンやコットンジャケットに合わせるのがおすすめです。

また動きが想定される起源を持つスポーツジャケットには合わない場合があります。

例えば最近人気のあるサファリジャケット、狩りに起源を持つハンティグジャケットは機能上センターベントが普通です。

乗馬のために考案されたハッキングジャケット(ライディングジャケット)は馬に跨ぐ前提なので着丈は非常に長く、センターベントをかなり深めにするのが一般的ですね。

現代で頻繁に馬に乗る人は少ないかもしれませんが、二輪車に乗る方などが着ても目的と仕様がマッチしていてお洒落でしょう。

その他のジャケットは基本的にサイドベンツが良いですが、特別クラシカルな雰囲気が欲しいときにはノーベントも良いでしょう。ただしノーベントはウエストから裾にかけてのシルエットを出すのが難しいので既製服では合わない場合があり、仕立てる際にも得意なサルトリアで頼むのがおすすめです。

今回Sartoria Ciardi サルトリア・チャルディのジャケットに合わせて着ているのは、Camiceria Piccirillo カミチェリア・ピッチリーロで新しく仕立てたグレーイッシュなグリーンのビスポークシャツ。

常時プロフェソーレ・ランバルディ静岡でMTMオーダーを受け付けているシャツで、(数字が苦手なため)しっかり数えたことはありませんが、およそ10〜12工程を手縫いでこなしたものです。

通常グレードのイタリア製コットンで37,040円にてオーダーできるので、リピートしてくださるお客様が多いです。プロフェソーレ・ランバルディ静岡の運営を独力で支える人気商品といえばどれくらい人気かわかりますね。

美しくたっぷりといせ込んだ袖付け、手縫いのステッチが美しい肩シームやヨーク、襟付け。その他にも多くの部分を手縫いでこなしています。そして手縫いのボタンホールと、美しいパールのボタン。

これほどまでに美しいシャツはなかなか見つからないと思います。

グリーンの生地はCanclini カンクリーニのもの。今回のように同系色はもちろん、紺ジャケットと白パンで着こなしてもお洒落な、実に使い勝手の良い色合いです。

それでは、ごきげんよう。

ナポリの風が皆さんに癒しを運ばんことを…。

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