The Alternate Classic もう一つのクラシック

夜に雨が降って、朝には雨がやんで、私たちは朝のひとときをコーヒーで終えてからワードローブに手を伸ばす。

月並みな瞬間だ。土曜日の朝に比べれば、仕事の日の朝の洋服選びは随分とオートマチックで、半ば惰性のようなものである。

しかし困ったことに外はまったくのお洒落日和で、まるで仕事用のスーツを着て出かける自分だけが取り残されているかのような感覚だ……。

そんなときには、ある種のスーツが必要である。クラシックでありながら、まるで休日のような高揚感をもたらしてくれる特別なウーステッドスーツ。The Alternate Classic もう一つのクラシックとも言うべき、美しく格別で、ラグジュアリーなコレクションである。

Elegant Brown by Loro Piana

Super 150’s Worsted Wool 300g/m

ブラウンのスーツは決して簡単ではない。かといって非常に難しいとは限らない。大事なのはトーンと、エレガンスだ。ブラウンでありながらも洗練された雰囲気と、知性を感じさせることができれば、もうネイビースーツはお役御免である。

さて、ここで今回のエレガント・ブラウンだ。ここに Elegant(優雅な)という枕詞をつけているのには理由がある。

これは決して、黒と見分けがつかないようなダークブラウンではない。かといって浮ついた雰囲気を全く感じさせない。ソリッドで隙がなく、グレーやネイビーの持つシックな印象を全面的に持っている。

メランジ感が少なく、その代わりに濡れたような光沢を放つのは、これが極上のウーステッド… Loro Pianaのウーステッドで、Super 150’sのウールを贅沢に織り上げた合物だからだ。50m先から見てもロロピアーナであることがわかりそうな位に上質である。そのうえしっかりと腰があり、美しいドレープを描くポテンシャルを秘めている。

この生地ならばダブルが良い。シンプルなフラップポケットもしくはチェンジポケット付きのダブルブレステッド。長めの着丈に、控えめの雨降らし袖。そしてクラシックなトラウザーでオーダーしよう。

着こなすときは簡単だ。この時だけはマローネ・エ・アッズーロも忘れて、考えられる最高のシックさで装おう。白シャツ、炭黒のソリッドタイ。それに黒に近いダークブラウンの靴、それからゴールドのアクセサリーだ。

Faint Glenplaid by Drago

Super 160’s Worsted Wool 280g/m

もしブラウンのハードルが高いのであれば、ここに素晴らしいAlternative(選択肢)がある。

まるでコーティングされているかのように美しく光るこのウーステッドは、イタリアでも高番手の極上生地ばかり作ることで有名なDrago ドラゴが、幾分か昔に織り上げたSuper 160’sである。

Dragoの高番手生地は、他のラグジュアリーなブランドと比べても異なる質感を持っている。というのは、先ほども書いたようにドラゴの生地は、表面が硬質なガラスに覆われているような美しさがある。手触りも同じくである。原毛が細いだけではなく、細い糸をぎっしりと詰めながら織り上げたような緻密な風合いだ。

しかしこの生地の最大の特徴といえば、このFaint Glenplaid おぼろげなグレンチェックだ。

夜の闇の中で息を潜めるシルバーのアストンマーティンとか、そういう類の存在感だ。色もトーンも素材も光沢も全てが完璧なのに、グレンチェックは決して目立とうとしない。

結果としてルネサンス時代の鉛筆の素描のような掠れたペーンが、実にアバンギャルドかつ控えめなエレガンスを生み出しているのである。

この生地は春秋メインの3シーズン物だが、このスーツを最も活かすのはこの組み合わせだ。

シルバーグレーのチェスターコートを合わせたときに、このスーツよりも美しいものはそう多くないだろう。(大抵の場合、ブログ掲載後にたくさんの質問メールが届くので記載しておくと、これは次回のキャンペーンで紹介されるであろうErmenegildo Zegnaのビンテージカシミアである)

無地のように沈まず、かといって通常のグレンチェックほどクラシック色が前に出過ぎない。シングルブレステッドのシンプルなジャケット、トラウザーまでピッタリのビスポークフィットで仕立てるのがおすすめだ。

Grand Cru by Harrisons of Edinburgh

Super 150’s Worsted Wool 330g/m

これほどまでに美しいウーステッドたちを、惜しげもなく一度に紹介してしまうなんて、私からしれも正気の沙汰ではない。(まるで閉店セールのような勢いだ)…もちろん酒の勢いに他ならない。

このハリソンズのGRAND CRUという酔狂な生地は、バンチから買おうとすればなかなか度胸のいる高級生地だ。ハリソンズ屈指のラグジュアリーウーステッドと言っても差し支えないだろう。

GRANDE CRUが今回紹介した他の2つの生地と完全に異なるのは、同じSuper 150’sという高番手の贅沢なウールを使用しつつも、あくまで英国的な哲学の上で織られた生地である点だ。つまり繊細な原毛を太めの撚糸に仕上げ、それを力強く打ち込むスタイルで作られている。

結果としてこの生地は、圧倒的にラグジュアリーな手触りと美しい光沢を持ちながらも、伝統的な英国ウーステッドの腰の強さを兼ね備えているのだ。

だがそれだけでは、Alternate Classicとは言えない。私がこのGRAND CRUをこのブログに選んだ理由は、この象嵌細工のように幻想的なピンヘッドだ。グレーの艶やかな光沢感やトーンとも相まって、シルバーの糸がまるでプラチナのジュエリーのような美しさを見せている。

シングルかダブルのクラシックなフラップポケットのスーツ。

合わせるべきは高貴な黒だ。クロコダイルの小物とか、ベルトも良い。シャツは白かペールグレーでも良いだろう。中庸な青を合わせるならば、いっそ限りなく薄いピンクの方が良い。

このお洒落日和な気候の平日には「夜」に焦点を当ててスーツを選ぶのも良いだろう。どうせ秋の夜は長い。長い夜には肌触りの良いチャコールグレーのスーツが必須である。

The Alternate Classic

Sartoria Piccirillo Bespoke MTM スーツ

通常価格 565,400円 → 特別価格 380,000(税込418,000円)※仮縫い、中縫い付き。

NICOLA GIORDANO MTM スーツ

通常価格 489,500円 → 特別価格 300,000(税込330,000円)※仮縫い付き。

※2023AWオーダーキャンペーン対象生地
※Sartoria Ciardiは応相談。
※各一着ずつのみ。

東京オフィス、静岡店で現物をご覧いただけます。

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