THE UNEXPECTED GIFT 思いがけぬ贈り物

人生とは面白いもので、絶対に出会うことはないだろうと思う物に出会ったりする。あるいは二度と出会わないであろうと思っていたものに再会したりする。

だがそういう出会いというのは実に意外なタイミングで、思いがけない場所でやってくるものだ。

果たして1ヶ月以上の沈黙を経て久しぶりのキャンペーンを開催しようとしていた昨日、私はこのような出会いを体験したのだ。

The Unexpected Gift

思いがけぬ贈り物

いつもの大袈裟な書き出しだと思われるかもしれないが、残念ながら今回は本物の贈り物だ。

今日紹介する生地は決して安くはない。しかしあまりにも特別で、生地という広大な世界の中で紛れもなく頂点に位置する生地である。

60% Vicuna, 40% Cashmere by Harrisons

この仕事をしてきて、これまでに一体何種類のビキューナ混生地を見てきたかはもう数え切れない。

素晴らしいカシミアにビキューナを混紡したロロピアーナやキートン別注の生地は、当店ではもはや定番と言っても過言ではない。

しかしことハリソンズのビキューナについては、見たことがないどころかその存在すら知らなかったのである。そしてこれは60%のビキューナ、40%のカシミアをウーステッドで仕上げた奇跡のような生地である。

そもそもビキューナのウーステッドというものが非常に珍しい。なぜならコート生地と違って一般的ではないし、比較的薄手の生地に仕上げるにしても相当な量の原毛が必要になるからだ。

これはそういう意味でまるで奇跡のような生地だ。極上のビキューナを60%も使用し、それをハリソンズが英国的な緻密なウーステッドに仕上げているのだから、美しくないはずがない。

重さは約370g/mで秋冬物としては申し分のない目付けだが、決して重くない。むしろふんわりと空気を含んでいるせいで軽くすら感じるし、ウーステッドの薄手の仕上げが非常に洗練された雰囲気である。

手の中でとろけるような極上の柔らかさと、息を呑むような美しいネイビーの色味。そして濡れたような光沢は深く、あまりにも上品だ。(それにしてもどうしてネイビーが残っていたかって?それはこの生地の前の持ち主が4メートル購入した後、そのうちの2mをずっと自分ために保管していたからだ)

これほどの生地は、触れるだけでも一つの経験になる。しかし幸運なことにこれを仕立てられる人もいる。ジャケットとして着用できるのは世界中でもごく限られた人数で、日本ではおそらく数人もいないだろう。

そして当店では……たった一人だ。残念ながらそれは私ではないが、少なくともこのブログを読んでいる人のうちの一人である。元々の価格ならばロシアの富豪しか仕立てる人はいなかっただろう。しかしキャンペーン価格ならばチャンスはある。

Sartoria Piccirillo ジャケット 仮縫い&中縫い付き 通常価格 1,203,400円 → 特別価格 799,000円(税込)

Sartoria Ciardi ジャケット トランクショー仮縫い 通常価格 1,295,800円 → 特別価格 859,000円(税込)

※注文時半金でのオーダー可能。

Pashmina, Guanaco, Baby Cashmere by Dormeuil

この生地はまったく愛すべき「うっかり」によって生まれた素晴らしいストック品だ。ずっしりとした550g/mのコート生地だが、手に乗せると今までの人生で触れたことのないような柔らかさである。

それもそのはずだ。この生地はあの世界最高のカシミア…パシュミナをなんと75%使用し、さらに今やビキューナよりも珍しいあのグアナコの毛を20%も使用したとんでもない生地なのだから。

このパシュミナについては以下に以前の記事を引用しておこう。

東洋の王女と呼ばれるPashmina パシュミナはカシミアの中でも、標高4,000mの山岳地帯に生息する希少なヒマラヤ山羊の毛だ。あまりにも貴重、そして少量しか取られないせいで、その価値はほとんど宝石のようである。世界で最も柔らかく、軽く、そして美しい獣毛の一つとして古くから愛されてきた。

補足しておくとこれはナポレオンがエジプト遠征のお土産としてジョゼフィーヌ皇后に渡した、あのパシュミナである。(インドの薄いスカーフをパシュミナと呼ぶ習慣があるが、それとは全く別物だ)

しかし正直に言って、この素材はもう二度と見かけることすらないと私は信じていた。それほどまでに珍しく、ナポリの生地屋でもロンドンの卸業者でも殆ど見たことがなかった。というより、生まれてから今日までで私がパシュミナを見たのはたったの二回だけである。

一回目は前回のキャンペーンのサマーパシュミナ、そして二回目がこの生地である。

さらに驚くべきことは、この生地がパシュミナとグアナコの混紡であることだ。世の中に存在する希少で高価な素材を高価な順に混紡した、といっても差し支えのない組み合わせだが……結果的には奇跡の美しさだ。

毛並みはゆったりと長く、まるで櫛でとかした乙女の髪のように麗しい。色はゴールドとクリームの間で、伝説上の動物のように神々しく輝いている。手触りは重厚で、そして信じられないほどに滑らかだ。コートにするのであればたっぷりとしたシルエットで、ラグジュアリーさを極めたいところだ。

で、なぜこのような生地がキャンペーン価格になるのか。ここには最初に書いたように、人類史に残る…は言い過ぎとはいえ服飾史に残る盛大なうっかりが関与している。

というのも、生地の耳をよく見ると Pashmina 70%, Guanaco 20%, Baby Cashmere 5%と織られているのがわかるだろう。

つまりこの生地は95%しか完成していないのである!はずはなく、Pashminaの75%が誤植で70%になってしまったのだ。このつまらないミスのせいで、世界屈指の最高級コート生地はロシアの富豪の元には行かず、こうしてランバルディのブログに掲載されて「からかわれて」いる。運命とは面白いものだ。

そういうわけで、この生地もキャンペーン価格だ。もう今後二度と出会うことはないPashmina パシュミナと、20%という明らかに贅沢が過ぎるグアナコの比率に改めて乾杯しよう。

Sartoria Piccirillo コート 仮縫い&中縫い付き 通常価格 1,802,900円 → 特別価格 880,000円(税込)

Sartoria Ciardi コート トランクショー仮縫い付き 通常価格 1,912,900円 → 特別価格 970,000円(税込)

※ポロコートは総額から10%UP

※注文時半金でのオーダー可能。

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