VICUNA 着るためのビキューナ

さて、とてつもなく長いブランクの後の書き出しはいつでも難しいものだ。どんな言葉を選び、どんなシナリオで話を進めるべきか、決めあぐねるものである。

しかしそれに対して、長いブランクの後に紹介すべき生地は単純である。

ビキューナだ。

もうこれまでに何着のビキューナ混生地を受注し、製作してきたことだろう。もしかすると日本でこれほど多くのビキューナを在庫し、そして(わなわなと震えるような恐ろしいキャンペーンで)売っている店は他にないかもしれない。

ビキューナは希少だ。ビンテージ生地の数は明らかに減って枯渇しつつあるし、ナポリの特別なコネクションからも「いつ終わってもおかしくない」と言われて久しい。

私がいつものように、あの……ナポリの人々にとっては危険な香りのする手土産………うなぎパイの箱を積んでも、ビキューナが出てこなくなる日は近いのかもしれない。

だからこそ「着るためのビキューナ」を仕立てよう。そうすれば、ジャケットやスーツとなって、ずっとそばにいてくれるからだ。それに、生地でとっておいても思い出にならない。ビキューナのジャケットやスーツを着て過ごした日々は、きっと美しい思い出になるだろう。

1. Vicuna & Cashmere ブラウン ジャケット

ビキューナ混紡の生地の中でも最高級の、ウーステッドカシミア・ビキューナだ。もちろんこれも、あのキートン別注の生地である。

美しいブラウンだ。まるで何億円もするクルーザーの調度品に使われる、希少な木材の杢目を見ているかのようだ。光沢に富み、表情豊かなヘリンボーンだ。

気が遠くなるほど柔らかく、とろけるような手触りである。

そして都会的なエッセンスを感じる、実に絶妙な色合いとトーンだ。この色味はネイビーのジャケットの代わりに着ることのできる、最も適切なブラウンである。これ以上明るければカジュアルな雰囲気になるし、暗ければブラウンである意味が弱まる。

この生地のジャケットならネイビー代わりにグレーのトラウザーに合わせてもいいし、デニムにもチノにも合わせやすい。

そして何よりも、ウーステッドである。着込むごとに風合いを増すカシミア・ビキューナのウーステッドは、ある意味「それ以上」が存在しない生地だ。それにこの色合いなのだから…..逃す手はない。

2. Vintage Mohair & Vicuna スーツ

これはもうブログで何度も紹介している生地だから、見覚えのある人も多いだろう。

しかし私にとっては……幻の生地である。なぜならこのシリーズは遠い昔に、とっくに売り切れたとばかり思っていたからだ。

ビンテージモヘアにのみ存在する繊細な光沢と杢の美しさ、しなやかな腰の強さ。そしてカシミアとビキューナの組み合わせが生み出す、モヘアとは思えないほどの柔らかさ。

この組み合わせはあまりにも奇跡的過ぎだった。私はネイビーでスーツを仕立てたし、それ以外の色もたくさんストックしていたが、全部すぐに売れてしまった。それが当然だった。

だがどうしたことか……生地棚の一番奥に、まだ眠っていたのである。しかも最も人気だったグレーとは!

名古屋でお納めしたビキューナモヘアのスーツ(Sartoria Piccirillo)。

間違いでなければ、これと全く同じ色だ。なんとエレガントで美しく、そして軽快さのあるトーンだろう。

このスーツを納品するときに、「同じ生地が残っていれば自分も仕立てたのに…」とどれほど悔しい思いをしたことだろう。

え?なぜそれなのにキャンペーンに出してしまうのかって。発見されたのが6mのカットだったからだ。流石のキャンペーンとはいえ、ビキューナのスーツが2着売れてしまうということはないだろう。

1着は売り、残った1着分で美しいピークトラペルのディナーパーティ用スーツを仕立てるつもりである。

Vicuna 着るためのビキューナ

ということで、キャンペーンである。

どちらも(勿論)現品限りの生地だが、大変にお得にしておこう。円安による損失を埋め合わせるため、ここ数ヶ月は一層固く腹持ちのよいナポリアルデンテのパスタを食べているが、そのおかげで今回も特別価格だ。

①Vicuna & Cashmere

・Sartoria Piccirillo ジャケット (売り切れ)

②Vintage Mohair & Vicuna

・Sartoria Piccirillo スーツ 通常価格 598,400円 → 498,000円(税込)

・Nicora Giordano スーツ 通常価格 554,235円 → 438,000円(税込)

お問い合わせはコンタクトフォームから。

それではご機嫌よう!

 

※現在 ヨーロッパ内でのナポリ仕立て需要の高まりに人員不足や資材不足が重なり、納期が通常よりも長引いております。ご不便をお掛けいたしますが、予めご了承くださいませ。