【ナポリ流】良いドレスシャツの条件とは – Camiceria Piccirillo

こんにちは、プロフェソーレ・ランバルディ静岡の大橋です。

最近「いつもブログ読んでます!」というとても嬉しい声を聞きます。

日頃より下らないことばかりを書いており、実際にお客様がいらっしゃったときに随分恥ずかしいのですが、喜ばしいことです。

特に当ブログの書き出しの杜撰さと言えば、ほぼほぼ天下御免と言えるもので、非常に高いレベルでマンネリズムを追求していると評判です。

そういうことで今日は滅法真面目に記事を書こうと思います。

『良いドレスシャツの条件とは』

今日皆さんにお話したいのは、良いドレスシャツの条件について。

もちろん私がお話しようと思っているのは、どの襟型が一番だとか、どのブランドが最高級だとか、そういう話ではありません。

もっと基本的で、しかし忘れてしまいがちなドレスシャツの基本を解説できればと思います。

着たときに襟がしっかりと決まること

ドレスシャツにとって襟は大事なポイントです。色々な形がありますが、まず大事なのは着たときに襟そのものが美しいかどうかという点。

例えば襟の仕上がり、ステッチの正確さ、エッジの処理、そして立体感などです。

ビスポークと同じ工程で作られるCamiceria Piccirillo カミチェリア・ピッチリーロのシャツを見てみましょう。美しい襟ですよね。

よく襟に接着芯を使っているか、あるいはフラシかということが語られます。実はこのシャツは半フラシです。

ナポリのシャツといえば、フラシや芯無しで柔らかいというのが定番と言われます。しかし実際のところ、ナポリでは半フラシで表面には接着芯を使うことが多いです。これはシンプルに、襟が美しく決まるから。

ナポリのお洒落な紳士達は、私たちが思っている以上に「ピシッと決まる服」が好きです。

もちろん私たちの持つナポリの軽快、リラックスした雰囲気も間違いではありません。

しかし彼らはそれを愛すると同時に、高く凛々しい襟のシャツを選び、必要に応じて肩パットを使った堂々としたショルダーラインを好み、そして芯地の入ったしっかりとしたネクタイを結ぶのです。

ですから、芯の仕様に関わらず美しい仕上がりのものを選びましょう。

例えばアンナ・マトッツォのビスポークシャツは、芯無しとは思えないほど美しいカーブを描き、これはこれで「決まる」シャツに違いないのです。

また襟のステッチワークやエッジの処理については言うまでもありません。エッジはぼってりとせず、ある程度繊細な雰囲気が良いでしょう。

またもう一つ大事なのは、自分の着方との相性です。

例えばジャケットとネクタイを合わせるシャツで襟が小さすぎると、襟が跳ねてしまうことがあります。その場合は少し大きめの襟をしてあげると、収まりが良いですね。

他にもカッタウェイの広いシャツは、ネクタイの結び目がシビアに現れます。ホリゾンタルのようなカッタウェイの場合には、その点に留意して着こなすのが良いでしょう。

十分な袖丈があること

シャツの着心地を左右するのは、意外にも袖丈であると言われます。

例えばナポリのシャツを購入したとき、袖丈が随分と長かった経験はありませんか。バルバのシャツを買って「やっぱりイタリア人は手足が長いんだ」なんて、思うことがあるかもしれません。

ですが実際には、シャツの袖丈には全く別の意味があるのです。

実はシャツの袖丈は気をつけの姿勢の状態に合わせるのではなく、腕を前に出したり動いたときに合わせるものです。

袖ボタンをしっかりと止めて着たとき、袖丈が直立した状態の手首にぴったりの長さだと、腕を前に出したときに袖がつっぱってしまいます。

すると着心地が悪く感じ、動きが妨げられてしまうのです。

ですから袖丈は袖ボタンを外して伸ばしたとき、自分の親指の第二関節まで垂れる程度の長さで仕立てたり、選んだりするのがおすすめです。

それから袖ボタンの位置を調節し、手首の位置でぴったりと止まるように調節しましょう。

またこの長さにすると、手首のあたりにふんわりと袖がたまって、クラシカルな雰囲気になります。

見た目が美しいこと

しかし何よりもドレスシャツを選ぶときに一番大切なのは、その見た目が美しいことです。

そのシャツを着て鏡の前に立ったときに、それが美しいと感じるかどうか。その一見の印象は、実はありとあらゆるディテールよりも大事なのです。

ナポリでよく言われるのは、日本人は非常にディテールに厳しいということ。

例えばこの部分はこのように仕上げ、この部分は手縫いにして、というような指定が非常に多いことで日本人は有名です。

しかし色々なディテールを事細かく指定して出来上がったシャツと、彼らが経験と直感でなんとなく生み出したディテールのシャツをいざ並べてみると、後者の方が魅力的に見えたりするものです。

それは彼らがミクロの世界で各部が美しいシャツを目指すのではなく、人が着たときに全体で美しくエレガントなシャツを目指しているからなのですね。

ですからシャツのぱっと見たときの美しさは、どれだけ職人がそのシャツと向き合って作っているか、どれだけ高い技術を持ったカミチェリアが手がけているかという印のようなものです。

私がCamiceria Piccirillo カミチェリア・ピッチリーロのシャツを見て惚れ込んでしまったのも、最初はやはりその美しさでした。

そしてその美しさはやはり着心地の良さ、そしてそのシャツに宿る本物のビスポーククオリティを、したたかに示していたのです。

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