こんばんは、プロフェソーレ・ランバルディ静岡の大橋です。

今日はどうしてこんなアペリティーボ(食前酒タイム)のような時間に記事を執筆しているのか?

ジャコモ・プッチーニのオペラ『ラ・ボエーム』を聞き、シャンパーニュの瓶に詰めた透明な液体……すなわち水を少しずつグラスに注ぎながら記事を書けば、私は上機嫌なわけです。

Or lo sciampagna
mettiamo in ghiaccio.

(水のボトルを帽子に突っ込んで)
さあ、シャンパーニュを氷で冷やそうじゃないか!

…さて、くだらないイントロに時間を費やしすぎましたね。

今日は皆さんに短い動画と共に、ナポリのサルトリアの小話をさせて頂こうと思います。

本当に型紙を使わず、直裁ちをしているのか

この話は有名ですね。ナポリのサルトリアでは型紙を使わずにフリーハンドでチョークを引き、それを裁断していくと言われています。

しかし果たしてそんなことがあり得るのか?そんな疑問を持った方もいらっしゃるでしょう。

英国ロンドンのサヴィルロウに行けば様々な体型に合うよう考えられた型紙が国立図書館よろしくずらりと並んでいるのを見ることができますし、日本のテーラーでも型紙を作らずに服を仕立てることは滅多にありません。

もし日本で型紙を使わないテーラーと出会ったとしたら、彼はおそらくナポリで修行をしていた職人でしょう。

そしてこの都市伝説めいた話は、全くもって本当なのです。

ナポリのサルトリアでは、カッティングを一番腕のいい職人が行います。例えばSartoria Piccirillo サルトリア・ピッチリーロであればGianni Piccirillo ジャンニ・ピッチリーロが裁断を行いますし、その他のサルトリアでも、裁断は一人のマスターカッターが担当することが多いです。

これはなぜか?

裁断には驚くほどの経験と勘が必要であり、しかもやり直しがきかないのです。

例えば縫い方を一つ間違えたとしても、それは糸を切ってやり直せば済むことです。しかし顧客が持ち込んだビンテージの生地を間違えた形で裁断してしまったら?それはもう対応のしようがありません。

それでいてその裁断は1mmの迷いも見せてはいけないほどシビアな世界です。

しかしその裁断をナポリのサルトリアは型紙を使わずに行うのです。

どうしてナポリでは型紙を使わないのか?

彼らが型紙を用いない理由はいろいろあり、考え方もサルトリアによって全く違います。

しかし一つ言えるのは、サルトリア・ナポレターナの全体的な傾向として、彼らが数値ではなく顧客の体型そのものを見ているということが挙げられるでしょう。

体型は常に変化しますし、体には実寸だけでは表すことのできない様々な要素が隠れています。また生地の厚さやしなやかさ、柄合わせなどでカッティングは変化させていく必要があります。

その全てをスーツのカッティングに含めていくためには、型紙と向き合うのではなく、経験と勘で裁断していくほうが良いのかもしれません。

またナポリのサルトリアでは仮縫いを必要なだけ繰り返して行います。その中で少しずつ調整して作り上げて行くため、最初に型紙を作った後スーツが完成するまでに何度も型紙を変更していかなければなりません。

そしてもう一つ。私はこれが一番の理由なのではないかと思うのですが、型紙を使わない方が彼らにとっては確実で、早いのです。

彼らは仕立て途中のジャケットやトラウザーズに直接チョークでメモを書きます。例えば「わたりを1cm小さく」と顧客ノートにメモするのではなく、「ここをこのくらい広げる」という目印を生地に直接打っていくのです。

仕事の効率がよくなること、これは決して豊かではなかったナポリにおいては非常に大切なことだったのではないでしょうか。

ナポリのサルトリアが型紙を使うのは、一度に何着ものスーツやジャケット、トラウザーズをオーダーしたときです。

私がナポリで3着のトラウザーズを一度にオーダーしたときには、1着で仮縫いと中縫いを行いサイズが決定したところで型紙を製作し、他の2着を仕立てていました。

皆さんがプロフェソーレ・ランバルディ静岡でビスポーク、メジャーメイドとしてオーダーされたスーツもまた、こんな風に直裁ちでカッティングされているのです。

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