【ナポリ人に学ぶ】Sprezzatura スプレッツァトゥーラ(力の抜けたエレガンス)の着こなし方

 

アントニオ・パニコの実に自然でリラックスした着こなし。ビスポークジャケットは昔の物で完璧ではない。シャツは着古したアンナ・マトッツォのポロ。

こんばんは、プロフェソーレ・ランバルディ静岡の大橋です。

最近は名古屋に行ったり東京に行ったりと出張が多く、ブログから遠ざかってしまい大変申し訳ありませんでした。

さて、よくファッションの世界では「隙のない着こなし」「完璧な装い」といった褒め言葉が用いられます。

ファッションのルールを熟知し、様々な優れたブランドを知り尽くして、スタイルを確立した人に対する賞賛の言葉として、これは適切な表現といえるでしょう。

しかし、ナポリに行くと、このような「隙のない着こなし」や「完璧な装い」といった言葉がぴったりと当てはまるような人が非常に少ないことに驚くはずです。

すごく美しいスーツを着ていても靴がなんとも不格好なものであったり、あるいは仕立てた服であっても肩幅や袖丈が完璧に合っているとは言えないものだったり。

また彼らが持っているバッグや小物類は、決してファッション性に優れたものばかりではありません。

しかしそれでもなお、彼らは非常にエレガントで魅力的に見えます。むしろその「力の抜けたエレガンス」はSprezzatura スプレッツァトゥーラと呼ばれ、世界を魅了しています。

身につけている物の一つ一つを見れば明らかに日本人の方がお洒落なのに、どうしてエレガンスでナポリ人にかなわないのでしょうか?

こだわりすぎないことのお洒落さ

ここにはある意味私たち日本人が陥りやすいトリックがあるのです。

それは、こだわり過ぎて逆にエレガンスから離れてしまうこと。

例えばこんな男性がいたとしましょう。

グレー系のグレンチェック柄スーツに、ひねりのきいたモンクストラップのビスポーク靴。最近話題のファッショニスタ愛用のイタリア製バッグ。そして裏地無しのセッテピエゲネクタイを立体的なノットで結んで、チーフを指している。

彼は考えられる限り最上のお洒落をしているはずです。しかし、どうしたことか隣に立った野暮ったい肩の落ちたスーツのナポリ紳士の方がお洒落に見えてしまうのです。

イタリア人だからお洒落に見えるということはありません。ナポリの人々は決して世界的基準のイケメンではありませんし、多くの人はスタイルもずんぐりしています。

注目すべきはお洒落をしている日本人が全ての物の「お洒落さ」「クオリティ」にこだわっているのに対し、イタリア人がアイテムとしては決して一番お洒落とも一流とも言えないが、なんとなく彼に似合っているものを身につけていることです。

「木を見て森を見ず」と言われがちな日本人、しかし個人的な意見では、日本人はトータルのコーディネートも上手で、非常にお洒落だと思います。

問題は、ひとつひとつのアイテムがお洒落すぎることなのです。

単体で見てお洒落なアイテム=香辛料

一つ知っておくべきことは、靴やバッグを全てお洒落なブランドで固めすぎるよりも、あるありきたりとも言えるセレクトにする方が自然で魅力的に見えるということです。

先ほどのグレンチェック柄のスーツの男性がお洒落というよりもやり過ぎに見えてしまうのは、一つ一つのアイテムに完璧なお洒落さを追求し過ぎているからです。

洒落っ気のあるスーツを着るときには、あえて他を比較的ありがちなアイテムにするとエレガントに見えます。

例えば先ほど例に出したグレー系のグレンチェック柄のスーツなら、普通の芯地入りのグレーのネクタイに、地味に見えるくらいシンプルな黒いフェラガモのブリーフケースと、ブランド名も覚えていない黒いオックスフォード靴を履いてみましょう。

案外こちらの方が、周りから見れば魅力的に見えているはずです。

逆にシンプルなネイビースーツにソリッドの心地入りネクタイを合わせて着こなすときに、細部にこだわったビスポーク靴と、雑誌でもファッショニスタが愛用するようなイタリア製バッグを合わせてみましょう。

これもまた、非常に魅力的に見えるでしょう。

単体で見てとてもお洒落なアイテムは、ある意味非常に香りの強い香辛料のようなものです。上質な素材でじっくりと調理したベースに加えれば素晴らしい料理になるでしょう。

しかし全てが香りの強いものであったら、料理はくどくなってしまうはずです。

「隙のない着こなし」に憧れてしまいがちな私たちは、どうしても全身をお洒落と言われるアイテムで固めてしまいたくなります。しかしそれは、ありとあらゆる珍しいと言われる香辛料を一つの料理に詰め込むのと同じことなのです。

自分を愛し、自分をよりお洒落に見せる物を選ぶ

往々にしてファッションが好きな人ほど、そのアイテム単体のお洒落さや評価で身につけるものを選んでしまいがちです。

例えばバッグは人気で雑誌にも出ていた○○にしたい、有名なファッショニスタが持っていた○○にしたい。ネクタイはお洒落な人が皆選んでいる○○にしたい……など。

しかし選ぶときにはむしろ、その大きさや形が自分の体型に似合っているか、持ち物のトーンが調和しているか、またそのテイストと自分の風貌や年齢が合っているか。そういう部分を注意深く検討しましょう。

(ちなみにそのときとても大きな助けになるのは、客観的な意見を述べてくれる女性です。彼女であれ、マンマであれ)

ナポリ人は「お洒落な物を愛してお洒落なものを選ぶ」というより、「自分を愛し自分をよりお洒落に見せてくれるものを選ぶ」のです。

そしてその自分をお洒落に見せてくれるアイテムを、自然な気持ちで身につけているとき、彼らはなんともエレガントで魅力的に見えます。

物のお洒落さで選ぶのではなく、自分を自然にエレガントに見せてくれるアイテムやその組み合わせを選ぶ。

ぜひそんな視点で、身につけるものを選んでみてくださいね。

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