春夏服をいつまで着て良いのか?
すっかり夏も過ぎ去り、夜には寒ささえ感じる季節です。
その割には私はモヘア混ウールの春夏ジャケットを、白のコットントラウザーに合わせて着ているのですから、洋服屋としては失格かもしれません。
しかし私はなんと申しますか、いわゆる暑がりでしてこれが快適なんですね。
そのときに快適な服を着ること。自然と手の伸びる服を着ること。
これは「ファッション好き」から「ライフスタイルの一つとして着こなし楽しむ」方へと進む第一歩なのではないかと私は思います。
この素材だから何月まで、背抜きだから何月まで、という決まりはありません。
冬が始まる前にツイードを着るもの悪くありませんが、私たちはもともと秋にクリスマスツリーを飾るのではなく、虫の鳴き声を聞きながら、中秋の名月にうさぎを見つけて楽しんできた人種なのです。
そのときどきをもっと自然に、素直に感じて、着こなしをしてみましょう。
立ち振る舞いや、その雰囲気に余裕が出てくるはずです。
リネンの着納めはいつなのか?
しかしそうは言っても気になるのが、リネンのアイテムの着納め時期でしょう。
モヘアならまだしも、リネンになると夏のイメージが非常に強く、10月に入って着るのもちょっと…という方が少なくないはずです。
リネンについてそんな心配があるなら、まずはリネンの厚さや重さに注目してみましょう。
例えばリネンシャツで大変薄手のもの、さらに色合いが夏を思わせるものを単体で着るのはもう難しいかもしれません。
これはシンプルに日没後に少し寒いこと、そして秋らしいのアイテムとの相性がよくない場合があることが理由です。
またリネンのジャケットについては、10月に着るのであれば少し工夫をしてあげると良いでしょう。
例えば綿素材のさらりとしたニットを組み合わせたり、ジレを挟んでみたり。ベージュやブラウンのリネンジャケットであれば、この方法であと数週間は楽しめるはずです。
またコットンのトレンチなど、軽めのアウターを羽織って楽しんでみるのもの良いですね。
Fabio Sodano ファビオ・ソダーノのモヘアジャケット
このジャケットはファビオ・ソダーノによるもの。ビスポークで仕立てられた一着ですから、もちろんハンドメイドです。
しかしナポリにおいてハンドメイドというのはある意味、最初の門でしかありません。流れ作業で縫製していくのではなく、数人の熟練した職人が手間をかけて、一着ずつ作ること。それがスーツやジャケットにおけるハンドメイドです。
その門を通ると、初めてナポリ仕立てという世界で評価されることができるのです。
そしてファビオ・ソダーノのジャケットは、単なるハンドメイドでは終わらない、強烈なスタイルを持っています。
試しに袖付け周りのカッティングに注目してみましょう。
普通キートンやアットリーニ、その他多くのサルトリアの場合、この部分は比較的なだらかなカーブを描いているはずです。
しかしファビオ・ソダーノのジャケットは非常に複雑な曲線を描いている。
まだ若手のサルトであるファビオがの仕立てが荒削りだという評価もできるでしょう。しかし個人的にはむしろ、彼がすでにある意思を持って服を仕立てていることをここに感じるのです。
彼にはもはや、実現したいスタイルがあるのですね。
今後が楽しみなサルトです。