こんにちは、プロフェソーレ・ランバルディ静岡の大橋です。
今日は皆さんにある生地ブランドを紹介いたしましょう。といっても、ビスポークを愛する皆様にとっては既に定番中の定番とも言える生地ですから、あえて紹介する必要もないかもしれません。
しかし初めてDRAPERS ドラッパーズのファブリックに触れた方は、もしかするとその非常にと言っていいほどの高評価を不思議に感じられるかもしれません。
というのも、DRAPERS ドラッパーズの生地というのは一見して高級そうなギラギラの光沢感があるものばかりではなく、手触りも他のイタリアブランドに比べて恐ろしく滑らかというわけでもないのです。
ですからあまり見慣れていない方が、
「よし!巷で評判の高級生地ドラッパーズで仕立てるぞ、今ならプロフェソーレ・ランバルディ静岡のメジャーメイドが生地一律価格らしいしな。これであのヒゲ店主も大変な赤字になって、すっかりいじけてしまうことだろう。しめしめ……」
という具合でご来店いただくと、「あれ?思ったより地味?」ということになりかねないのですね。
それではDRAPERS ドラッパーズの魅力とは、どこにあるのでしょうか?
DRAPERS 世界最高の「目」ドラッパーズ
そもそもDRAPERS ドラッパーズは生地メーカーではなく、マーチャントです。すなわち生地を原毛から織りあげる生地の製造元ではなく、いわば卸売をする会社でしかないということですね。
そのためDRAPERS ドラッパーズというタグが付いているものは、イタリアの名門生地メーカーがドラッパーズのために織り上げた生地なのです。DRAPERS ドラッパーズの生地は様々なメーカーが作っていますが、中でもKiton キートン傘下にあるカルロ・バルベラの織ったDRAPERS ドラッパーズ生地などは有名ですね。
ですからDRAPERS ドラッパーズが良いというのは、すなわちこのマーチャントの別注が良いということになるのです。服で言えば同じナポリの仕立てブランドでも、このセレクトショップの別注が良い。という具合なんですね。
当然DRAPERS ドラッパーズが間に入るということは、直接生地ブランドから買うよりも割高になってしまいます。それなのにどうしてこれほどまでに高く評価されているか。
それは皆がこのブランドの「目」を信じているということです。
今の時代にどのような生地感や色柄が求められているか、どのような生地をどのメーカーに、どのように発注するのが一番良いものが出来上がってくるか。そういったことをどこよりも的確に判断するDRAPERS ドラッパーズ「目」こそが、評価されているのです。
DRAPERS ドラッパーズ生地の魅力とは?
さて、それでは実際にドラッパーズ生地の魅力とはなんなのか。そこが一番気になるところですよね。
例えばシルクのような光沢の繊細さ極まる生地が欲しければ、エルメネジルド・ゼニアやロロ・ピアーナの最高級生地にDRAPERS ドラッパーズのバンチから選ぶ生地はかないません。また昔ながらの重量感がある生地が欲しければ、やはり英国の生地メーカーのバンチにはかなわないでしょう。
しかしDRAPERS ドラッパーズには、選ばれる理由があります。
それはこのブランドならではの、いかにもイタリアの洒落者たちが好む色柄。それから滑らかで光沢感もあり、軽快さを忘れないにも関わらず、非常にハリコシが強く仕立て栄えする生地感です。
イタリアの洒落者たちは、行きつけのサルトリアで服を仕立てるとき、例えばブリオーニやゼニア・クチュールが用いるような繊細さを極めた生地は殆ど選びません。
彼らはイタリアらしい色柄と、光沢や滑らかさを求めながらも、根底では「せっかく仕立てる服を長く着たい」そして「シルエットや職人技がもっとも美しく表現される生地が良い」ということを常に考えているのです。
言ってしまえば繊細さ極まる生地でスーツやジャケットを仕立てるときには、職人ではなく生地が主体となります。常に生地の機嫌を伺いながら仕立てることになるのです。
しかしDRAPERS ドラッパーズはそうではなく、あくまで職人が主体にあります。
そのサルトリアの個性やスタイル、描きたいシルエットを最も美しく表現する。さらに洒脱な色柄や上品で奥ゆかしい光沢を持っている。さらには少しばかり英国的な重量感を持っており、これが英国贔屓のイタリア人(と彼らを信奉する私たち)にはたまらない。
そういうわけで、DRAPERS ドラッパーズは高く評価されているのです。