【サマーセール特別企画】ランバルディの生地棚 #6《La Grande Bellezza》

«Perché non hai più scritto un libro?»
«Cercavo la Grande Bellezza, ma non l’ho trovata»
“なぜあれから一冊たりとも、本を書かなかったのです?”
“大いなる美を探していた……だが、見つからなかった。”
 – Jep Gambardella (La Grande Bellezza )

8月が終わる。

8月の終わりというのはいつも懐かしさや、焦燥感にとらわれるものだ。人はいくつもの思い出を作り、逆にいくつかの思い出を忘却し、この印象深い1ヶ月を毎年ひたすら繰り返している。

夏の「ランバルディの生地棚」シリーズも、これで終わりだ。印象深い生地をたくさん紹介し、たくさん選んでいただいた。

しかし……. La Grande Bellezza(大いなる美)を紹介せずに終わることはできない。全6回にも渡る一大キャンペーンの締めくくりにふさわしい、これらの生地を紹介せずには。

第一弾 《Blu Mistero》ミステリアスなブルー

第二弾《Breathtaking Vintage》息を呑むビンテージ

第三弾《Unique & Secret Classic》門外不出のクラシック

第四弾《Piccola Fantasia》小さな幻想世界

《Colore Impeccabile》非の打ち所のない色

(売り切れと表記が無くても既に商談済み、売り切れの物が多々あるので、まずはお問い合わせ頂きたい)

La Grande Bellezza No.1《Vicuna Worsted》

美しいブルーの生地は幾度となく、もはや3部作の長編小説が出来上がるほどに紹介してきた。しかしこの生地に関しては、今までに紹介したことのない部類のものである。

Super 150’s + カシミアのただでさえ価値のあるビンテージ・ウーステッドの美しいネイビー。そこにビキューナが混紡されているといえば、これがどれほど希少で価値のある生地であるか、容易に想像がつくはずだ。

なんと美しい光沢だろう。なんと滑らかな手触りだろう。それでいて決してルーズな生地感ではなく、タイトに引き締まった腰の強さを感じさせるあたりが流石ビンテージだ。

ROYAL KINGDOMと銘打ったこの生地について詳しく知ることは、今とっては難しい。しかしこれはおそらくHolland & Sherryが一部のビスポークテーラーやサルトリアに向けて限定的に生産した希少なウーステッドだろう。

ビキューナを混紡したコート生地やフランネル等は私も多くストックしている。しかしここまでクラシックなネイビー無地のスーツ生地で、ビキューナ混は後にも先にもこれだけだ。

多くを語る必要はない。なぜならその価値は、もう十分に伝わっているだろうから。

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Sartoria Ciardi スーツ Bespoke 生地・トランクショー仮縫い込み 

お待ちかね、サルトリア・チャルディのビスポークの特別セールだ。数日中にも詳細をご案内する10月末〜11月のトランクショー(静岡・東京)で仮縫い。ビスポークなので注文時半金、仮縫い時半金でオーダーも可能。
その他のサルトリアは要相談。

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La Grande Bellezza No.2《Super 150’s + Cashmere Herringbone》

だがもし自分が、最も格式高い類のビジネススーツを仕立てようとするなら、やはりこの1着を選ぶに違いない。

もう30年も前に織られた、Super 150’s + カシミアのウーステッド。それも340g/mの素晴らしい目付けと、パリッと角が立つような目付けの良さを持った、文句なしの英国製ウーステッドだ。

このウーステッドの美しさは、何よりヘリンボーンにある。一般的なヘリンボーンよりもぐっと主張を押さえ、抑揚を演出することに徹するドレッシーなヘリンボーンは逆に艶やかで色気がある。

まるで底知れぬ知性を秘めながらも、あえて語ることをせず、生き方そのものだけで表現している生粋の紳士のようだ。

光の当たり具合で表情を変える、限りなく黒に近いチャコールグレーも実に素敵だ。太陽光の下ではグレーを強く感じるシックなトーンに。夜のライトの下では一気に濡れたような光沢と深みが現れる。

この無名な英国製生地を使って仕立てるならやはりクラシックなスーツだが、ダブルも良い。この生地の腰の強さで究極のドレープを描くことができるからだ。

それにSuper 150’s にカシミアの入った最高級の贅沢品だが、これで仕立てたスーツは10年後もきっと活躍しているだろう。そしてその頃にはこの控えめな色気を湛えるクラシックスーツを、今よりもずっと深く愛するようになっているはずだ。

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Sartoria Piccirillo スーツ MTM 生地・仮縫い&中縫い込み

サルトリア・ピッチリーロは仮縫いと中縫いもサービス。ダブルブレステットの美しさはフィッティングを繰り返す度に増していく。

ニコラ・ジョルダーノでこの生地を仕立てた場合には、もう少し柔らかく包み込まれるような着心地になる。シングルならむしろこちらがおすすめだ。

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La Grande Bellezza No.3《Dobcross》

さて、ついにこの生地を紹介するときが来た。ドブクロスだ。

これは予め言っておくがビンテージではない。かといってどこでも手に入るような代物ではない。これはあの伝説的なビンテージ生地、Holland & Sherry Victoryの正統的な後継者とも言える生地なのだ。

Super 140’s & Cashmere & Silver Mink。

贅沢な素材を用いてドブクロスという低速の織機で生産されるこの生地は、通常の生地の6倍の時間をかけて織り上げられている。

艶やかな光沢のあるウーステッドでありながら、まるでフランネルのようにふんわりとした手触り。手で触れた瞬間、視覚と感覚の不一致に誰もが驚くはずだ。

この生地は掛け値無しの一級品だ。しかし更に素晴らしいことに……黒だ。私がこの店を始めてから随分と長い時間が経ったが、最高峰の黒はまだ片手で数えるほどしか発見していない。

これが、そのうちの一つである。

黒のスーツはよく勘違いされているが、光沢のある生地の場合には実に素晴らしいドレススタイルになる。

brioni.com

これはクラシックのルールがどうこう、という以前に現代の着こなしの基本になりつつある。イタリアでも誕生日パーティやレセプションで、エレガントなピークトラペルやスリーピースのスーツを着こなしている人がどれほど多いことか。

そこで黒のスーツを作るにあたって一つだけヒントを出すなら……この生地にすべきだ。全ての凡庸な黒や、退屈な黒と決別するために。

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Sartoria Piccirillo スーツ MTM 生地・仮縫い&中縫い込み

これほどまでに貴重な(そして高価な)生地を、このようなセール価格にすることは二度とないだろう。だがドレススタイルの需要からすれば早急に売れることはないだろうし、正直に言えば私はこの生地が最終的に私のピークトラペルスーツとなることを望んでいる。

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今回も1着分ずつ限定である。

お問い合わせはコンタクトフォームから。