当店が『ナポリ製』の『ナポリ仕立て』にこだわる理由

こんにちは、プロフェソーレ・ランバルディ静岡の大橋です。

今日はとても気持ちの良い日和で、先日到着したリネンスーツを早速着用しております。

230g/mのアイリッシュリネンで仕立てたものですが、大変目の詰まったしっかりとした生地で遠慮なく着ることができるのが嬉しいところですね。

仕立てはルイジ・グリマルディ、手縫いのボタンホールでお願いしたものです。

さて、最近は色々なお客様にお越しいただいて、このようなことを聞かれます。

「どうしてナポリのものにこだわるのですか?日本人でも、現地で修行した良い職人さんがたくさんいますよね」

「ナポリの雰囲気をそのままに、日本製のセレクトショップ・オリジナルみたいなのはやらないんですか?」

といったことです。

確かに「ナポリ仕立て」をそのままに、あの「ナポリ人」たちと取引をしなくて済むようになるなら、どれだけ楽なことかと、この商売をすれば誰もが考えるでしょう。

しかし当店はあくまでナポリで作られるアイテムにこだわっております。

もちろん今後ソレントやサレルノ、もしかしたらシチリアやローマなどのアイテムも少しずつ入ってくるかもしれません。

それでもこのプロフェソーレ・ランバルディ静岡という店では、現地の人が仕立てるもの、作るものを取り扱うつもりでいます。

それはどうしてなのか、少し書いていこうかと思います。

ナポリ以外にも良いスーツはたくさんある

これは私の本音ですが、ナポリ以外にも素晴らしいスーツは山ほど存在していると思います。

たとえばサヴィル・ロウのスーツも是非仕立ててみたいと思いますし、ミラノのN.H.サルトリアやティンダロ・デ・ルカのスーツも機会があればぜひ体験してみたいところです。

ローマにはジョバンニ・チェレンターノやガエターノ・アロイジオといった素晴らしいサルト達がおり、フィレンツェにもリベラーノ&リベラーノを始めとした素晴らしいサルトリア が継承するフィレンツェ仕立てがあります。

また国内に目を向ければ、最近話題の東徳行さんが独立して開業したサルトリア ・ラファニエッロや小野雄介さんのアングロフィロ、そして上木規至さんのサルトリア ・チッチオなど、ナポリで修行された仕立て職人が大活躍されています。

トラウザーでは五十嵐トラウザーズ、そして尾作隼人さんの作品など惚れ惚れするほど美しいですね。

ちなみに先日ビンテージ生地をお求めでお越しくださったお客様はサルトリア ・イプシロンにて仕立てられたジャケットを着ていらっしゃいました。

これがあまりにも美しく、私はお客様と職人さんがとても良い関係を築かれているのだなあ、と妙に感動してしまったものです。

正直なところ、現在ではナポリのサルトリア の間でもクオリティの差がかなり目立っています。できるだけ手間をかけずに大量生産をしようとするところ、つまり「いかにして売るか」ばかりを考えているところもあれば、本当にいい服を作ることしか考えていないところもある。

今は空前のビスポークブームということもあって、ビスポークやハイエンドな既製服を扱うお店も増えていくことかと思います。

ですがもし新しくお店ができるなら、ナポリのものを闇雲に扱うのではなく、むしろ国内の素晴らしい職人さんたちとコラボレーションするようなお店ができて行くと良いなあとひとり空想しています。

ナポリの服にこだわる理由

そんなことを考えながらも、私があくまでナポリの服を扱おうとする理由は、プロフェソーレ・ランバルディ静岡が単なるセレクトショップではなく、ナポリの文化を伝える場所であってほしいと願うからです。

ナポリの服だからといって、他よりも優れているということはありません。

もちろんナポリは非常に多くのサルトリアがひしめき合う場所であり、そのおかげでレベルの高い職人技が継承され、育っているのは間違いありません。

しかし最終的に服のクオリティは、仕立てる人の向上心と真摯な向き合い方でしかないのですから。

ですがナポリの空気感は、ナポリにしかありません。

ギリシア人が入植して以来、いやそれよりも前から様々な人種や民族すなわち文化が交錯してきたナポリには、他とはまた違った空気があります。

そしてプロフェソーレ・ランバルディ静岡は「その空気をできるだけフレッシュなまま日本に持ってくること」を第一に考えながら、バイイングをしています。

ですから既製服を取り扱うのであれば、ナポリで職人たちが縫っているのを想像できるようなスーツを取り扱いたいのですね。

また例えばジャンニ・ピッチリーロのスーツなどは、私と同い年やもっと若い職人たちが仕立てを手伝っており、その結果、いささか完璧はいえないステッチになってしまうことも少なくありません。

しかしだからといって「熟練した職人に縫わせてくれ」と言ったら、若い職人たちはいつまでたっても成長していかない。ナポリの文化を応援する意味でも、そのままオーダーをしています。

ナポリは、ナポリ

歴史と文化、生活と自然、職人と洒落者たち。

ありとあらゆるものがごちゃまぜで、ナポリの魅力に取り憑かれた権力者たちが作り上げた、荘厳で美しい街並みの中に生きている。

ナポリはナポリ、常にそのルールに従って生きており、自分の思うようにいかないことは驚くほど多いが、さして気にしていない。その代わりに生活の一瞬一瞬には決して妥協しない。

ヴェスビオ火山や地中海といった大自然を常に目にしながら生活している彼らは、ある意味人生の儚さを知っているように見えます。

そしてその象徴とも言えるのが、職人たちです。

人生そのものをかけてスーツを仕立て、50年、60年と続けた後のわずかな期間が黄金期と言われる。

そんなナポリ仕立ての文化をできるだけ近くに感じてみたいという方は、ぜひ当店にお越しいただければ幸いです。

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