こんにちは、プロフェソーレ・ランバルディ静岡の大橋です。

今日は珍しくこんな時間から記事を書いており、不思議に思いましたね。

「きっと今起きたのだろう、ちょうどイタリアも朝になった頃だし」などと勘ぐってはいけません。

私は朝からこれまでずっと、驚くべき集中力で作業をしていたのです。店のありとあらゆる壁を額縁でぴったり埋めていくという作業を…。

そんなことをしているうちにルイジ・グリマルディのご予約も何件か頂きました。

本当にありがたいことです。

さて、そのルイジ・グリマルディについて、時々こんなことを聞かれることがあります。

すなわち「既製服をナポリ仕立てと呼べるのか」ということです。

今回はそれについて、少し書いていこうと思います。

そもそもナポリ仕立てとは何か?

時間を掛けて一着ずつ確実に裁断を行う、サルトリア・カラッチオーロのカッター。

さて、ナポリ仕立てとはそもそも何なのか。

これは以前もブログに書いたことですが、しかし大切で本質的なことですので、再度考えていくことといたしましょう。

一般的には「ナポリ仕立て」は、ナポリ風の仕立て方や、ナポリで作られたスーツ全般を指して使われることが多いです。

しかし前者の場合にはアンコンでマニカ・カミーチャ、裾まで切った前ダーツの全てのスーツをナポリ仕立てと呼び、後者の場合には€100のマシンメイドスーツから、サルトリアのビスポークまで全てナポリ仕立てということになってしまう。

本当のナポリ仕立ては、やはりそうではないでしょう。

ナポリには仕立てとは、ナポリの文化です。

ナポリに何百、何千も存在する職人たちがそれぞれの師匠に学び、独自に工夫し、時には違いに影響しあって生まれたナポリ特有の仕立て方と、そこに携わる人々が生み出す文化。それこそがナポリ仕立てなのです。

ナポリには全くギャザーの寄らない袖付けのスーツも数多く存在しますし、ゴージが低いものに高いものもあります。決してダブルステッチを用いないサルトリアもあれば、フォーマルウェア以外は必ずダブルステッチにするサルトリアもある。

しかもナポリの顧客にもそれぞれの思うエレガンスがあり、それが複雑に作用しあって一着の服が出来上がる。

仮縫いを行うジャンニ・ピッチリーロ。

これらを全てひっくるめて出来上がったものを、ナポリ仕立てと呼ぶのです。

また皆さんを混乱させるような喩え話を致しましょう。

日本人の「祭り」を、イタリアで開催したとします。出店や飾り付けも忠実に再現すれば、それは物珍しく、人気を博してイタリア各地で開催されるかもしれません。

しかし思い出してみましょう。

自分の地元の神社で開催されるあの小さな夏祭り、その地域一帯が何となくそわそわと落ち着かない雰囲気になり、青っぽい夕闇に浮かぶ提灯を見て耐えきれず走り出してしまうような祭り。

あの「祭り」とそれは、全く同じではないはずです。何が違うのかを明確に示すのは難しい。しかしローマのスペイン広場で開催される「Matsuri Festa」と本物の祭り、その空気感の違いは伝わるのではないでしょうか。

ナポリ仕立てもまた同じです。

いくら仕立て方を真似たり、そのディテールを取りいれたり、またメイド・イン・ナポリの事実を作り上げたりしても、そこに「ああ、これこそナポリ仕立てだ」と感じるような文化性と空気をまとっていなければ、それはナポリ仕立てではないのです。

既製服をナポリ仕立てと呼べるのか?

ルイジ・グリマルディとそのスタッフ。いつも家族のように仲良く仕事をしている。

ではサルトリアでビスポークしたわけではない既製服をナポリ仕立てと呼ぶことができるのか。

これについては、物によると言わざるを得ないでしょう。

例えばナイロンやポリエステルを10%でも混じった生地を使ったナポリ製のジャケットが、ナポリ仕立てと呼べるでしょうか。私は呼べないと思うのです。

ナポリのサルトリアに行ってポリエステル混の生地を選んでビスポークする人がいるでしょうか?少なくとも現地のサルトリアに親しく付き合っているナポリのウェルドレッサーたちは普通選ばないでしょう。

その点に、ナポリ仕立てと呼べるかどうかのヒントがあるのです。

私がルイジ・グリマルディをナポリ仕立てと呼ぶ理由の一つは、彼らがまさに現地サルトリアで選ばれているような生地を使用して、既製服を使用しているからです。

また既製服ではセミハンドメイドのものも、ナポリ仕立てと呼ばれている場合があります。まさにルイジ・グリマルディもその通りです。

ここで大切なのは、ナポリ仕立ての文化の担い手である本物のナポリの職人たちが服を仕立てているかどうか、ということです。

ルイジ・グリマルディは本当に高い技術を持った職人たちが一着一着縫い上げています。だからこそ、その工程がセミハンドメイドだとしても、素晴らしいクオリティの服に仕上がるのです。

ナポリの工房にも、水準の違いがあります。スタッフのほとんどがバイトのおばちゃんということもあれば、ルイジ・グリマルディのようにサルトリアでも通用する技術を持った職人が集まって既製服を作っているということもある。

そこはナポリの服がお好きな皆さんなら、きっと仕上がりを見れば感じられるはずです。

既製服をナポリ仕立てと呼べるのか。

当店で扱う既製服については、「間違いなくナポリ仕立てだ」と言いきってしまいましょう。

あの服たちはナポリの文化と空気、素晴らしいクラフトマンシップを背負ってやってくる。

もちろん彼らは数々の仕様ミスや、あるときには別の色柄を背負ってやってくるのですから、これをナポリ仕立てと呼ばずして、何と呼びましょう…。

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