こんにちは、プロフェソーレ・ランバルディ静岡の大橋です。

最近自分のスーツを追加でオーダーすべく、色々と生地を悩んでいるのですが、これは果てしなく難しい問題ですね。

いつもどの生地にするか悩んでいるお客様に「まあ、いいじゃないですか、スリーピーススーツいっちゃいましょうこのラベンダー色で」など、出鱈目なことばかり言っていたのを一瞬反省したほどです。

いやしかし、色は楽しんだ方が得なのです。

先日美しいブルーグレーのモヘア生地で仕立てたFabio Sodano ファビオ・ソダーノをお納めしたお客様は、(間違いなく静岡で一番お洒落な色彩感覚をお持ちの方ですが)次のスーツの生地を探していて、この生地に惚れ惚れとしていらっしゃいました。

写真だと表現しにくいですが、本当に美しいメルローのような色合い。ですが驚くべきなのはその素材。Super 160’s ウールにわずかなカシミアとシルバーミンクを混紡した、しなやかで上品な光沢のあるフランネルです。

いつもの癖で「〜円で仕立てられますよ」なんて生地の仕入れ値を言ってしまいましたが、普通だったら生地だけでスーツが買えるような値段になってもおかしくない極上のフランネルなんですね。

いや正直私もこの生地には一目惚れしてしまって、もしお客様が別の生地をお選びになったら、この生地で一着仕立てようか、なんて思っています。

さて、そんな美しい生地を織っているのが、今回紹介させていただくHolland & Sherry ホーランド&シェリーです。(なんと長い前置きでしょう)

Holland & Sherry ホーランド&シェリー

Holland & Sherry ホーランド&シェリーは、1836年にロンドンのボンド・ストリートに創業した高級服地マーチャントです。ビスポークをする人であれば、知らない人はいないというほどの名門です。

英国、そして世界のスーツの聖地と言われるロンドンのサヴィルロウの全てのテーラーがバンチをストックし、さらに世界中の著名な仕立て屋がこぞって取り扱っているのがHolland & Sherry ホーランド&シェリーなのです。

当店もまたメジャーメイドやビスポークのための生地はHolland & Sherry ホーランド&シェリーのバンチをメインに扱っています。日本でも有名なテーラーさんや、イタリアで修行をされた職人さんのお店では、必ずと言って良いほどHolland & Sherry ホーランド&シェリーの生地バンチを置いていますね。

しかしそれにも関わらず、街中のスーツ店やセレクトショップに行って、Holland & Sherry ホーランド&シェリーの名前を見かけることはそれほど多くありません。

それはなぜか? 2つ理由があります。

まず一つに、Holland & Sherry ホーランド&シェリーの生地は既製服に使うには高価すぎてしまうのです。一般的な既製服に使われている生地から比べれば2倍〜4倍という値段にもなるこの高級生地を、価値を理解してもらえるか確証のない既製服に使うのは、ある意味賭けのようなものです。

もう一つは、Holland & Sherry ホーランド&シェリーが既製服向けに生地をあまり売らないブランドだからです。

オーダースーツのための注文、すなわちカット・レングスでの販売をメインにしているHolland & Sherry ホーランド&シェリーは、ビスポークの世界に入らねば知ることさえもない、エクスクリューシブな生地なのです。

私の知るところでも、既製服でHolland & Sherry ホーランド&シェリーを使用しているところはあまり多くありません。(そういった意味でも、Luigi Grimaldi Napoliの既製服はHolland & Sherry ホーランド&シェリーを多用しており、特別です)

しかし逆に言えば、ビスポークの世界ではHolland & Sherry ホーランド&シェリーは欠かすことのできない存在です。DRAPERSやCARLO BARBERAなど、最高級の生地ブランドと呼ばれるところはたくさんあります。しかしHolland & Sherry ホーランド&シェリーを扱っていないのであれば、それは本当のビスポークスーツ屋ではないと言われてしまうでしょう。

それどころか、ナポリのサルトリアに行くとその殆どがHolland & Sherry ホーランド&シェリーをメインとしており、その他の生地のバンチは棚の上の方に追いやられているのです。

なぜナポリの仕立て屋はHolland & Sherryを愛するか

ナポリのサルトリアに訪れるのは、非常に良い機会です。なぜならサルトリアではサルト達の着こなしを間近にみることができますし、彼らにどんな生地で仕立てたのか聞くこともできます。

そして尋ねると、彼らは示し合わせたかのように答えます。

「Holland & Sherryだよ」

さてどうしてこれほどまでにHolland & Sherry ホーランド&シェリーが愛されているのか。それは生地のクオリティそのものが答えです。

Holland & Sherry ホーランド&シェリーの生地はどれをとっても非常に目が詰まっており、仕立て栄えのするコシの強さがあります。それでいてしなやかであり、上品な光沢もある。

特にビスポークの世界ではあまりにもこれ見よがしな光沢は嫌われています。むしろ職人が仕立てを引き立てるような控えめなエレガンスの漂う生地こそ、彼らナポレターノの好みなのです。

しかも色のバリエーションも多く、非常に多彩なコレクションを展開している。

英国贔屓の彼らからすれば Holland & Sherry ホーランド&シェリーの英国感(?)漂う柄物もまた魅力的ですし、英国生地ならではの深い色合いはビスポークの楽しみそのものとなりつつあるのです。

肉厚なウールならではの力強い風合いに、しなやかで気持ちの良い手触りと品のある光沢。そして英国的な色合いや柄。全ての点で、Holland & Sherry ホーランド&シェリーは彼らの好みにぴったりと適合しています。

なぜ当店でHolland & Sherry ホーランド&シェリーを扱うか

Holland&Sherryの生地で仕立てたFabio Sodano

当店にいらっしゃるお客様には、Holland & Sherry ホーランド&シェリーを中心に取り扱っていることを褒めて頂いています。さすが、ビスポークをわかっているね、なんて仰っていただくのです。

確かに個人的にも一番好きなのはHolland & Sherry ホーランド&シェリーの生地感なのですが、いや、Holland & Sherry ホーランド&シェリーを店のメインにしているのには別の理由があるのです。

一つは、Holland & Sherry ホーランド&シェリーで発注するとサルトが喜ぶこと。

彼らも人間ですから、自分がせっかく服を仕立てるのに、ビニールのような低品質の生地(失礼)でオーダーされれば、機嫌も悪くなるものです。その点Holland & Sherry ホーランド&シェリーでオーダーすると、彼らはご機嫌で良いスーツを仕立ててくれるのです。

もう一つは、ナポリからHolland & Sherry ホーランド&シェリーのバンチしか一向に送られてこないこと。Fabio Sodanoにお願いしたDRAPERSのバンチは輸送中にHolland & Sherryとすり替わって届き、いつかSartoria Caracciolo サルトリア・カラッチオーロにお願いしたCaccioppoli カチョッポリのバンチは青春の夢と共に、思い出の彼方に消えたのです。

そこでSartoria Ciardiに「バンチを頂戴」と頼んだところ、彼ら兄弟は喜んで私に一冊のバンチを手渡してくれました。

「さあ君には特別に、一冊しかないチャルディ別注のホーランド&シェリーのバンチをあげよう。ここの生地は世界一だよ」

と…………。

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