ビスポークスーツ 最高の一着が仕上がるビンテージ生地の選び方

こんにちは、プロフェソーレ・ランバルディ静岡の大橋です。

最近はビンテージを中心として大量に生地を入荷して浮かれておりますが、生地は仕入れるだけでは仕方ない。お客様にどんな生地があるのか、ブログで紹介しなければ意味がないのですね。

ところが先日もいらっしゃったお客様が、新入荷した極上の3PLYのモヘアウールをサルトリア・チャルディのために選んでくださり、結局ご紹介する間も無く売り切れてしまっていくのです。

そこで私は持ち前の怠惰な心と狡猾な思考をフル活用して、生地を一種類ずつ紹介するのではなく、ざっくりとビンテージ生地の選び方を紹介し、その中で当店をゴリ押しするという画期的な方法を思いついたのです。

ビスポークスーツでビンテージ生地を選ぶ理由とは?

しかし世の中にこれほどまでたくさんの生地メーカーがあり、星の数ほど生地が織られているのに、どうしてビンテージ生地を選ぶのか。

実際のところ、生地の製造過程はどんどん改良されています。昔よりも短時間で文句のつけようのない高品質な生地を織り上げることのできる機会が開発され、色柄も以前より細かかったり、繊細な表現ができるようになりました。

またSUPER 〜 に表現されるように、軽くて滑らかな生地も技術の改良で織ることができるようになりました。

全体的に見れば、スーツ生地のクオリティというのは非常にレベルが高くなったのです。

例えば当店で現在メインに扱っているHolland & Sherry ホーランド&シェリーはもちろんのこと、バンチから選ぶことのできる極上の生地は少なくありません。

しかしどうでしょう、生地一つを取ってみて、それを昔の上質な生地に比べてみると、どうも昔の生地に惹かれてしまうことがある。

それは、昔の生地にしかないクオリティがあるからです。

このクオリティは品質というよりは、性質と表現すべきものでしょうか。

例えばイタリア語のQualitàという言葉には品質の他に、性質や素質という意味がありますが、これらの言葉はどう違うのか。

品質というのは単純に表現すれば優劣の程度です。しかし性質はそのものだけが持つ固有性を指しています。

ビンテージ生地はゆっくりとした昔ながらの織機で、時間をかけて織り上げられる。その結果、生地は均一とは言えないものですが、しっかりと目が詰まっており、そのうえ表情豊かです。

それは完全ではないが、その不完全さが美しい。言ってしまえば人間的な仕上がりなのですね。

そして人間は言わずもがな、世界で最も人間的な生物ですから、こういう生地に親近感を持ちやすいのですね。

世界中の優れた職人を差し置いてイタリアの仕立てを好むような物好きな人々は特に…。

ビンテージ生地の選び方

しかしビンテージだからと言って、どんな生地でも良いというわけではありません。

ビスポークスーツにはそれにふさわしい品質というのもやはり必要ですし、その服の用途によっても選ぶべき生地は変わるでしょう。

では実際にどうやってビンテージ生地を選ぶべきなのか。

ビンテージ生地でビスポークスーツを作りたいという方のために、少し細かくお話していきましょう。

ビンテージ生地に関する情報を取り込みすぎないこと

このトンデモブログをお読みいただいているお客様には申し上げにくいことながら、実は一番大事なことはこれでしょう。

情報を取り込みすぎないこと。

まあこのブログに関しても大変な眉唾物なのですが、ここで言いたいのは「ドーメルの〇〇というシリーズが一番良い」だとか「〜年代以降には良い生地はない」などという情報を取り込みすぎないことが大事だということです。

ビンテージの生地は、基本的には非常に手に入りにくいものです。

在庫が限られているうえに皆が探していて、もはや残っていないものもある。その中で「これが良い」「あれが良い」という情報を追いすぎると、底のない沼にハマってしまう可能性があるのです。

しかしそういった情報を一旦置いておいて、いろいろな生地を見てみましょう。

すると無名なブランドでも、はたまた耳のついていないような生地でも、素晴らしいクオリティのものはたくさんあるのです。

ドーメルのトニックが有名だからといって好きでもないストライプのトニックを選ぶよりも、同じ時代に作られていた小さなメーカーの好きな色のキッドモヘア生地を選んだ方が、20年後の自分に感謝されるかもしれませんよ、ということです。

仕立てる用とに合った生地を選ぶこと

先日いらっしゃったお客様は仕事にも気兼ねなく着ることができるマスターピースが欲しい、とのことでしたので、この紺無地キッドモヘアの3PLYをお選びいただいたのですね。

もう何着も仕事用のスーツは持っていて、今度は少しいかにもビンテージ感の漂うような、とはいえ普通に着こなすこともできるスーツが欲しければ、ピンヘッドなんかも良いでしょう。

こちらは写真ではわかりにくいですが、ベージュの地にネイビーが入ったピンヘッド。3PLYでコシのあるしっかりとした生地ですし、見る人が見ればすぐにビンテージだとわかります。

ぶっちゃけこの生地はしばらくライティングビューローの後ろに隠しておいたあげく「売れなかったし、うんうん、仕方ない、うんうん」と何かしらケチをつけて自分のスーツにしてしまう予定なのですが。

探すのではなく、出会いを大事にすること

もう一つ、これはとてもおすすめなビンテージ生地との付き合い方なのですが、ある一定のブランドやシリーズを探すのではなく、その時々の出会いを大事にするのが良いのではないかと個人的には思うのです。

例えばある生地を執念深く探し求めたとすると、その途中でせっかく見つけた素晴らしい生地も見落としてしまいがちです。

しかしあまりこだわりすぎずその時々に「これだ!」と思ったものを選ぶと、結果的に納得のゆく素晴らしいスーツが仕上がってくるものです。

例えば上の写真はメーカーもわからない、ビンテージのリネンです。光沢と色合い、所々現れるネップが美しい生地ですが、もしアイリッシュリネンという言葉にこだわれば選ぶことのできない生地です。

もちろんこのリネンはアイリッシュリネンかもしれないし、そうでないかもしれない。しかしただ一つわかることは、重量感があって、素晴らしい風合いのリネンだということです。

これだけで十分に、選ぶ理由になります。

プロフェソーレ・ランバルディ静岡でビンテージ生地と出会う

今、プロフェソーレ・ランバルディ静岡にはたくさんのビンテージ生地がございます。ざっと数えて100着分以上はあるようです。(ああ、期末の在庫の恐ろしさよ)

この瞬間にしか手に入らないのはもちろんのこと、仕立て栄えするものを選んで入荷していますから、きっと次のビスポークスーツにぴったりの生地が見つかるはずです。

ちなみに生地代も、バンチから選ぶものとそれほど変わらないものが殆どです。

あなたも一生付き合っていきたくなるようなビンテージ生地と、プロフェソーレ・ランバルディ静岡で出会ってみませんか。

贅沢かつ力強いピュアカシミアでスーツを仕立てる

こんにちは、プロフェソーレ・ランバルディ静岡の大橋です。

カシミアという素材をご存知でしょうか。いや、ご存知ですね。こんな初夏もいいときに、なぜ真冬の友達であるカシミアなんて紹介し始めるのか?

ナポリ仕立てはどうせ時間が掛かって今オーダーしてもどうせ冬になるから。

…ぐうの音も出ませんな。

いや、それは一理ありますが、しかしそうではないのです。

ウーステッドスパンカシミアという生地をご存知でしょうか。これが本日ご紹介するカシミアです。

最高級のカシミアを贅沢に100%使用し、それをさらりとしたウーステッドに仕上げたもの。春秋を中心にスリーシーズンで着られる合物生地です。

どうです、初夏に紹介するのに値する生地でしょう?

ウーステッドスパンカシミア

単に贅沢さで考えると、世の中にはたくさんの生地が存在しています。

かのビキューナに始まり、グアナコ、カシミア、そして繊維の細いウールも高級な素材です。

例えばSUPER 200’sのウールなどは成金趣味と言われていて(値段の高い順に生地を選ぶロシアの富豪でもない限り)ビスポークの世界では滅多に選びませんが、やはり贅沢な素材に憧れるのは当然のことです。

しかしいざ着用するとなると、正直あまり喜ばしい生地ではないのです。

例えばSUPER 200’sのウールやカシミア混などは繊細すぎて仕立て映えがしない。そのうえ一日着用するとシワだらけになってしまうとそういうわけなのですね。

そのためコスタンティーノやアントニオ・パニコなどもあまり繊細な生地を好まず、むしろ強い生地を好むのですね。特にアントニオ・パニコのビンテージモヘアやツイード好きは有名なところでしょう。

そのためナポリの老舗サルトリアに、そういった繊細さ勝負の生地を持ち込むのは無粋というのが常識です。

しかしこのピュアカシミアはいかがでしょう。

ウェイトは300グラム強、ものすごく打ち込みがよく、カシミア特有のナチュラルストレッチや贅沢な手触りがありつつも、一見するとウールのような強さがあるのです。

例えばこんな風にぎゅっと掴んで、離してみましょう。

  

まるで何もなかったかのように復元してくれます。

この目付の良さ、ハリ感、そして復元力。カシミアを売りにするだけでなく、実際にスーツとして仕立てたときのことを考えて織られたピュアカシミアの生地は本当に珍しい。

そういうわけで、売れるかどうかもわからないのに2着分限定で仕入れてきたわけです。

日本製の生地の良さ

実はこの生地は日本の老舗織元である長大毛織が織った特別なウーステッドスパンカシミアです。

日本ブランドでも最近ではインドや中国で生地を織ることが増えていますが、この長大毛織は頑なに日本製にこだわり続けているメーカーです。

個人的には特別日本製の生地に関心を持っていませんでした。

というのも日本製の生地はしっかりと織られている反面、風合いの柔らかさに欠けて、少し硬い雰囲気のものが多いというイメージだったのですね。

しかしこのカシミアではどうでしょう。その質実剛健な日本の織元らしいクオリティが功をなして、繊細さ極まる最上級のホワイトカシミアであることを忘れてしまいそうなくらいに頼れる生地感となっています。

カシミアは一般的にそのカシミアらしさを前面に打ち出すため、やわらかく織り上げることが多い。しかし最高に上質なカシミアをゆっくりと、しっかりと織り上げたもの。それ以上に贅沢なものはなかなかないでしょう。

今世界が夢中になっているのはビンテージ生地ですが、この生地はまるでビンテージ生地のような特性を持ったカシミアなのですね。

単に贅沢なだけでなく、一生大事にしたくなるようなカシミアのスーツをこの機会に仕立ててみませんか。

 

この生地ですが通常メートル単価29,000円のところ、5月12日までは1着分50,000円にて承ります。

2着分限定の入荷ですので、是非お早めにご検討くださいませ。

Dormeuil Super Brio キッドモヘアのしなやかな宝石

こんにちは、プロフェソーレ・ランバルディ静岡の大橋です。

今日は大変な寒さに、ここ静岡でさえもなかなかの冷え込み具合です。

こうも寒くなったときにどうするか。

安直に考えれば売れ残った秋冬のジャケットを必死に宣伝するのですが、最近はビンテージ生地ばかり入荷しているせいで押し売りする売れ残りジャケットさえないという状況になっているのです。

ただし他にも、私が数々のビジネス啓発本やマルクスの「資本論」やルソーの「法の精神」等を読んで吟味した結果、

派手なチェック柄のジャケットばかりを仕入れるのは良くない

という結論に達したことも、十分な理由として挙げられるでしょう。

それはそれとして、今回入荷したビンテージ生地の中にドーメルのスーパーブリオという生地があります。

実は先日もネイビー無地のスーパーブリオも追加で入荷し、現在なんと100メートル近くのドーメル を在庫している状態となりました。

今回はそのスーパーブリオを皆さんにご紹介したいと思います。

Dormeuil Super Brio ドーメルのスーパーブリオ

ドーメルのスーパーブリオにしても前回ご紹介したマジックにしても、やはり私は当時を知らないため、きっと皆さんの方がよほどお詳しいことでしょう。

スーパーブリオはトニック、スポーテックスと並びドーメルの三大シリーズとも言える生地です。

当時はまだ織るのが難しく一般的ではなかったキッドモヘアを、スーツ生地として一躍有名にしたのがドーメル のトニックです。

このトニックはキッドモヘアらしいコシと光沢がありながら、しなやかも兼ね備え素晴らしい生地なのですが、何につけても重い。春夏というよりは春秋の生地なのですね。

それに対してスーパーブリオは250gとやや軽量であり、春夏をメインに着られる重さです。しかもこの重さの現代の生地に比べると圧倒的にコシが強い。

そのため軽快でありながらも美しいシルエットを維持し、シワにも強いという奇跡的な特性を持つわけです。

現在モヘアを紹介するときにはシャリっとした、という言葉を使いますが、昔のキッドモヘアはしなやかでハリコシもあるので、どちらかというとモチっとした感じが強いですね。

ビンテージのスーパーブリオはどこが違うのか?

なぜ同じように現在でもキッドモヘアを使った生地を作っているのに、風合いが異なるのか。

それにはモヘア自体の質と紡績方法の違いが関係しています。

まずはモヘアですが、現在は南アフリカが原産国として有名です。このドーメルのスーパーブリオが織られていた頃には、トルコ産のものが使われていたと言います。

それから、精紡機がフライヤー式で非常に低速で織られていたことは、この生地が非常に表情豊かで、しなやかなことに関係しています。

これを魅力と感じてしまうのが私たちビスポーク好きですが、この辺りは着用される場面にも合わせるべき部分でしょう。

キッドモヘアのしなやかな宝石

さて柄にもなく細かな話を色々としてきましたが、正直なところこんなことをいちいち覚える必要はありません。私もそこまでディテールに関心があるわけではないのです。

私がこのスーパーブリオを他のビンテージ生地よりもさらに多く入荷したのは、この生地が何よりも美しいからに他なりません。

キッドモヘアの光沢と、浮き上がる素材感。派手さはないが、織り上げる様子まで想像してみたくなるような味のある雰囲気。

例えば現代のスーパーカーを見たとき、確かに美しく魅力的です。しかし例えば1967年式のマセラティのクーペ、ミストラルを見たときにはむしろ何か物語性のようなものを感じてしまいます。

また完璧ではないが魅惑的で愛嬌のある車には、名前をつけたくなる。

私がドーメル のスーパーブリオを愛でる感覚は、そんなようなものです。

決して最近のSUPER 180’sやカシミアのような滑らかさや高級感があるわけではないし、色合いも最近のイタリア生地に比べれば落ち着いた発色です。

しかしそこには、懐かしい戸棚の中にすっかり忘れ去られていた宝物のような美しさがある。

単に古いから、味があるからというだけではありません。

最上級のキッドモヘアを贅沢に使用し、今では再現できないほどゆっくりと手間をかけて織られた生地はさながら、織り物でありながら宝石のような存在だからです。

是非皆さんも店頭で、この生地を手にとってご覧くださいね。

きっとこの感覚を理解していただけることと思います。

ちなみに色は全部で6色(写真のベージュは売り切れです)ございます。どれも1〜2着ずつといった具合ですから、お早めにお問い合わせくださいませ。

DORMEUIL MAGIC ドーメル・マジック(あるいはビンテージ生地で空を飛ぶ喩え)

古代ギリシャ、華やかなりしクレタ文明を開いたミノス王の時代。

ギリシャ一と言われるダイダロスという職人がいた。彼は王の信頼を得ていたが、あるとき王に疑いをかけられ息子のイカロスと共に幽閉されてしまった。

しかし彼は鳥の羽をロウで固め、牢獄から脱出できる大きな翼を作り上げた。

彼は息子のイカロスに言った。

「中空を飛びなさい。海に近づけば水しぶきで羽が重くなる。太陽に近づきすぎれば、ロウが溶け出すから」

二人は空を飛んだ。イカロスは父ダイダロスの背中を追うので必死だったが、次第に慣れてくると楽しくなって高く、空よりももっと高いところを目指そうと上空へと飛んでしまった。

すると太陽の熱でロウが溶け出し、イカロスは墜落してしまって、息絶えたのであった。

「イカロスの翼」 – ギリシャ神話

この話には色々な解釈があります。

人間の果敢さを讃えることがあれば、科学技術が急激に進歩していくなかで、身の程を知らずに大自然に挑戦していく人間を揶揄してこの言葉が使われることも少なくない。

「太陽を冷やす」と銘打って売り出されたドーメルのマジック。

この言葉を聞いて私が思い浮かべたのは他でもない、この教訓めいた話でした。しかしこの生地の現物を見たとき、ある考えがひらめいたのです。

人間がまだ答えを見つけ出していなかったとき、それこそが答えになると信じて一心不乱に追求した結果として生まれたものは、人の心を動かす美しさがあるのではないか。

すでに宇宙に到達しつつある現代の私たちがかの原始的なイカロスの翼を見ても、私たちはきっとそれを美しいと思うであろう。

そしてビンテージのドーメル、マジックという生地はまさにそんな生地なのです…。

なーんてまた定番のよくわからない書き出しをすると、読者の皆さんの目が回ってしまって、きっとうっかり来店の予約メールを送ってしまうことでしょう。(それならそれでしめしめ、という具合ですな)

そろそろ真面目に生地の紹介をすることにいたしましょう。

Dormeuil Magic ドーメル マジック

今回20種以上のドーメルやホーランド&シェリーのビンテージ生地を入荷することができました。

その中でも今回は、ドーメルのマジックという生地についてご紹介しようというわけです。

とはいえド平成生まれの私はドーメルが一世を風靡していた時代にはまだ、ビスポークはおろか細胞分裂さえままならない有様だったため、ビスポーク界がどんな状態かは存じ上げないのですな。

しかしやはりビンテージ生地を愛してやまないお客様のお話を伺えば、この生地がどれほど素晴らしい生地かは伝わってくるものです。

ドーメルのビンテージといえばトニックとブリオと言われ、今回ありがたいことにそれらも入荷したのですが、マジックもまた知る人ぞ知る名生地です。

最高品質のモヘアとウールを強撚糸にして、しかも縦糸と横糸の太さを変えて織ることで涼しさとシワに対する強さを生み出した生地。

シャリっとしたモヘアらしい雰囲気と上品な光沢が美しい。そして何よりも軽量でありながら仕立て栄えし、耐久性に富んでいるという春夏生地として奇跡のような特性を持っているのが、このドーメルのマジックなのです。

大ヒットしたトニック、ブリオ等と共に復刻もしましたが、やはりオリジナルまでの雰囲気は出ない。

そういうわけでビンテージならではの原毛の質の高さと、時間をかけた織りの風合いを求めて、マニアックな人々がこのオリジナルのマジックを探し求めているというわけです。

特に無地のブルー、ネイビー系などは早速使われてしまってなかなか残っていない。

今回入荷した生地にしても数着分に限られており、とても希少な入荷なのです。

人々がまだポリエステルやナイロンといった化学繊維に頼らず、天然素材の品質や織りの工夫でこれまでにない快適さを実現しようとしていた時代。

もちろんナポリ仕立てにしても、最初からストレッチ生地が存在していたら、ここまで独創的な文化を求めることはなかったでしょう。番手の低いウールでどこまで軽快な着心地を実現できるかを追求してきたからこそ、今の職人技があるのです。

そしてこのドーメルのマジックをナポリのサルトリアでスーツに仕立てること。これほど素晴らしい組み合わせはないでしょう。

なぜならそれは、あくまで自然のもとで限界に挑戦した職人たちの軌跡を辿り、目の当たりにすることなのです。

同じ快適なスーツを目指していても、アナログなビスポークという世界では、一見非合理的に見えるこんなアプローチが実にエレガントに見えるもの。

全ての人に理解してもらうつもりはありません。

どうせ空を飛ぶなら、鳥の羽をロウで固めた翼で飛んでみたい。

私はきっとそんなお客様に、ドーメルのマジックで作るナポリ仕立てをおすすめするでしょう…。

2018年春夏のビスポークにおすすめ生地3選

こんばんは、プロフェソーレ・ランバルディ静岡の大橋です。

年間積雪量0cmどころか、過去20年近く殆ど雪の降ったことがない静岡市中心部とはいえ、今日の寒波ではなかなか冷え込んでおります。

冬になると「どうせ冬もすぐ終わるだろう」という怠惰な理由で冬物ジャケットを仕立てない私は、わずかな数着のジャケットを着て、この寒波を過ごすこととなったのです。

しかし問題ありません。

なぜなら私にはイタリアが開発した素晴らしいインナーがあるのですから。

親愛なる読者様にだけはひっそりとお教えしますが、それは「グラッパ」というもので、身体を内側から温める、ユニクロのヒートテックやロシアのウォッカに匹敵する画期的な手段なのです。

さてこの寒さがグラッパで和らいできたら、グラスを片手に春夏生地の話をしましょう。今日は小春日和の装いを考えるのに、うってつけの日なのですから。

音楽はギル・エヴァンスのちょっとアクの強いジャズ・プレイリストで問題ないでしょう。

HARDY MINNIS ハーディ・ミニスのフレスコ

このフレスコは昨年チャルディのエンツォにお願いして、貰ったバンチです。

なぜこんなところに置くのか。それは目の錯覚でこの小さなバンチが大きく見えることを期待しているからです。ほら、ジュエリーボックスが腰の高さのチェストに見えてきたでしょう。するとバンチはA4サイズです。

フレスコはシワに強く、耐久性がある。

言葉ではご存知かもしれませんが、その強さは想像以上です。クリースラインはしぶとく消えず、細かなシワは驚くほどすぐ消えていく。着心地は少しざらっとしますが、軽やかでまとわりつくことがない。

なにしろ細かいことを気にして動く必要がないので、所作がエレガントになるでしょう。素敵な女性が外で鍵を落とした時に、「ごめん俺のズボンSuper180’sだから、地面に膝つけないんだ。本当にごめんね」と謝る必要がないのです。

春夏ならフレスコライトが良いでしょう。280g/mで9oz、ちょうどいい厚さと重さでスーツにはぴったりです。

写真は美しいネイビーブルーとネイビー。わずかなメランジ感もあり、上品ながら表情豊かな生地ですね。

もちろん非常に軽いジャケットにはなりませんが、いざと言う時には手でくるりと丸めて持ち歩けるようなジャケットが仕立て上がるはずです。

トラウザーズに関しては、この重さで真夏も着用できるはずです。

そもそも真夏でもあまり薄い生地でトラウザーズを仕立てるとすぐダメになってしまいますし、この重さでも足にまとわりつかないのでそれほど暑く感じないはずです。

トラウザーズだけで考えるなら、こんな色はどうでしょう。

春夏の軽快さを出そうにも、やっぱり紺ジャケットにグレートラウザーズの組み合わせから抜けられない。そんな方はグレーを軽くすることで、無理なく軽快な装いができるはずです。

ミディアムグレーはコンサバな雰囲気ですが、ライトグレーは少しリッチで余裕のある雰囲気になります。コツはトラウザーズのシルエットを攻めすぎず、多少ゆとりのあるシルエットにすることです。

スーツでおすすめなのが、このトーンのグレー。

ミディアムグレーにライトグレーが混ざったような雰囲気ですが、この絶妙なトーンがカジュアルにもビジネスにも合うスーツを作ってくれるのです。

ジャケット単体でデニムにネクタイ無しでも着られますし、もちろん白シャツにネクタイで着こなすこともできる。正直なところ、あまりグレーを着ない私が「作るからこれだ!」と思うのが、このグレーなのです。

希少な直輸入のアイリッシュリネン

このアイリッシュリネンに関するGrande Storia – 大変な由来については既にこちらで散々書き立てていますので、そちらをご覧いただくとして。

やはり私のおすすめはこのアイリッシュリネンです。

すでに何着かオーダーを頂いており、ネイビーなど大人気でどれほどストックが持つのか?という具合ですが、やはりアイリッシュリネンのネイビースーツは春夏の素晴らしいチョイスでしょう。

ご覧になったお客様には絶賛して頂いておりますが、やはりこの織元のアイリッシュリネンの独特の風合いと強さ、しなやかさはなかなか見つからないものです。

左が今回入荷のアイリッシュリネン。右はビンテージリネン。かなり近い風合いのものを見つけました。

私がどの色でスリーピーススーツを作ろうと考えているか?

もちろんクリームイエローです。理由は、店の壁と同じ色だから。壁と同じ色のリネンスーツを、ましてやスリーピースで着れば、どんな粗相をしてもお客様は見えず気付かないですからね。

230g/mと280g/mの二種類の織りがあり、ブラウンやカーキ、ベージュにアイボリー等も入荷しています。

CARNET カルネの『Blue』シリーズ

いつも重々しいロンドンの曇り空のような英国生地ばかり紹介しているので、たまにはイタリアの色気ある生地も紹介してみましょう。

イタリアにはドラッパーズやカチョッポリなど人気なブランドがありますが、個人的に気に入っているのがCARNET カルネ、日本ではつとにタリア・ディ・デルフィノという名前で有名なこちらのブランドです。

このブランドに写真のBlueというバンチがあります。これはなんと一冊が全てジャケット用のブルー系生地で集められているという、プロフェソーレ・ランバルディ静岡の店主のように偏ったバンチなのです。

バスケットやホップサックからメッシュ系、サマーツイードにピュアシルクまで。適度な光沢と華やかさ、そしてハリ感を兼ね備えた春夏ブルー系生地。250g/m〜270g/mを中心に、軽いものは200g/m、サマーツイードは310g/mの生地も。

合物から盛夏までイメージに合わせて選べます。

ベーシックな紺から水色までありますが、生デニムのようなインディゴネイビーも美しい。

こんな深い色合いと素材感の特徴的な生地も良いですね。(なんとなくフレイムメープル化粧板を使用した、PRSのエレキギターを思わせますな)

さて、本当はもっとご紹介したかったのですが、すでに文字数オーバーとなってきました。

また明日目覚めたら、もう少し春夏生地について思いを巡らせることといたしましょう。

Rambaldi’s Linen ランバルディ教授が愛したアイリッシュリネン

こんにちは、プロフェソーレ・ランバルディ静岡の大橋です。

先日「デッドストック生地を巡る冒険」という村上春樹ファンの方に弾劾されてしまいそうなタイトルの記事で、少しだけ触れていたアイリッシュリネンが到着しました。

実はこのアイリッシュリネンは、ドラッパーズでもなければ、スペンス&ブライソンでもない。恐らく日本で知る人はいないであろう小さな織元から直接購入した生地なのです。

ランバルディ教授が愛したアイリッシュリネン

ランバルディ教授のジャケット。ヴィンツェンツォ・アットリーニと同時代のマエストロ、ウーゴ・マッサがアイリッシュリネンで仕立てたジャケット。

ランバルディ教授がどんな方かは、きっとご存知でしょう。(まだご存知ない方はこちらをどうぞ)

ナポリでランバルディ教授の着ていたジャケットやスーツを全てランバルディ夫人から譲り受けた時、私は一つのことに気がつきました。

それは彼のワードローブが非常に考え抜かれたものである、ということです。

秋冬スーツはライトツイードの英国チェック柄で、秋冬ジャケットは無地のブラウン系カシミアウール。

ネイビージャケットは必ず紺のダブルブレステッドに貝ボタンで、シングルはない。

合物はベージュから煉瓦色までカラフルな色合いだが、必ずシングルのコットンスーツ。

そして春夏物は、必ずアイリッシュリネンのジャケットだったのです。

アイリッシュリネンのジャケットは彼のワードローブに数着ありましたが、どれもUgo Massaというマエストロの仕立てで、素晴らしい雰囲気を持っていました。

生地もちろん30〜40年前のビンテージリネンですが、決して重くない。

今ビンテージ的として人気のある360g/mとか、480g/mとかそういったリネンではありません。240g/m〜270g/mのミディアムウェイトで、まるでモヘアシルクのように輝き、リネンとは思えないほど強いコシとハリ感を持っているのです。

そのときから私は、自分の店で扱うリネンについては悩んでしまうこととなりました。

せっかくプロフェソーレ・ランバルディ静岡で扱うからには、こんなリネンを扱いたい、と強く願っていたからです。

リネンの良さは重さだけじゃない

左が今回入荷したリネン。右はランバルディ教授のジャケット。

そこでそれこそドラッパーズやホーランド&シェリーなどのバンチを貪るように探し始めたものの、何かが違う。それらのリネンはもう少し軽快な雰囲気で、ランバルディ教授の愛したリネンとはまた少し異なるものだったのです。

スペンス&ブライソンはさすがアイリッシュリネンの定番だけあり、とても良い。

特にこのブランドの重量のあるヘビーウェイト・リネンは人気もあります。

しかしそこまで重い生地ではないのです。重さではなく、むしろ生地自体のコシや、もっといえば麻素材自体の強さが少しだけ違うような感覚がありました。

そこで私はアイルランドのリネンを製造する織元を片っ端から当たっていくことにしました。

ご存知の通り、アイリッシュリネンは現在アイルランド産の麻ではなく、ベルギー等の国外の麻を使って織られています。それが数十年も前のリネンと同じはずがないのです。

しかし同じアイリッシュリネンでも有名どころでは中国や南アフリカで紡績されているところも少なくない。

それなら、できるだけ昔ながらの方法を維持しながら生地を作る織元を探せば良いのではないか、とそう考えたわけです。

そしてついに見つけたのが、今回のアイリッシュリネンなのです。

左が今回新入荷のリネン。右はランバルディ教授のジャケット。

もちろん色や目の大きさは多少違います。

しかしこの手触り、ハリ感、そして光沢…これは間違いなく、今手に入るアイリッシュリネンの中で最も、ランバルディ教授の愛したアイリッシュリネンに近いものだと確信したのです。

アイリッシュリネンを愛用すること

どんな商売上手な人が考え出したのか、私たちファッション業界は良質な生地を売る時には「世代を渡って愛用できる」なんてことを言います。

実際にはお子さんと身長が30cm違う可能性もありますし、なんとも言えないのですが、ですが一つだけ言えることがあります。

それは確かに、良質なリネンは何十年経っても魅力的な生地であるということです。

そしてアイリッシュリネンは奇しくも、着れば着るほどに美しい風合いになっていく。もちろん擦り切れなどは仕方がないのですが、その風合いはどんどん増していくものです。

今回、ベージュだけでなくネイビーやブラウンなどいくつかの色を入荷いたしました。

生地は二種類、280g/mのランバルディ教授のジャケットと並べて写真に写っている生地と、上の写真のインディゴネイビーとブラウン、やや軽めの230g/mの生地です。

他にもダークネイビー、キャメルやカーキ、アイボリーなど人気の色がいくつかございます。

すでにスリーピーススーツでご検討頂いているお客様もいらっしゃいます。私もベージュでスリーピースを仕立てようかな、と考えております。

アイボリーでダブルのジャケット、ネイビーでややドレッシーなスーツも良いですね。特に280g/mの方はビジネスでもお使い頂けるような端正な雰囲気です。

希少なリネンではございますが、2月10日までは春夏生地キャンペーンもやっておりますので、ぜひお問い合わせくださいね。

デッドストック生地を巡る冒険

ある日夢を見た。

それは遠く離れたロンドンの東、インド人やら若者やらがたむろする騒々しいBrick Laneブリック・レーン地区である。

埃かぶったキャンバス生地しか売っていないようなしがない生地屋に入ると、店主の親父が何やら必死に隠し事をしているようであった。

「最後にもう一度聞きますよ。紳士服向けの素晴らしい生地を、あなたは隠していますね」

私は聞いた。

すると親父は観念して、店のカウンターの奥にある扉を開いたのだ。

そしてそこでは今では手に入らないフィンテックスやウィリアムハルステッドの最高級デッドストック生地が、神々しい光を放っていたのである…。

私は次の日目を覚ますと、その生地屋を現実に探すことにした。それがデッドストック生地をめぐる冒険の始まりだったのである。

こんにちは、プロフェソーレ・ランバルディ静岡の大橋です。

なんと久しぶりの更新になってしまいました。なぜこれほどまでに執筆から遠のいて居たのか。それはどれだけ記事を書いても、一向にお小遣いがもらえないからなのです。

しかしかと言ってずっと放っておくわけにはいかない。

そこで私は観念して再度ブログを書き始めるとともに、あるものをブログ読者の皆さんに無料配布することを決定いたしました。

おだちん袋です。

このおだちん袋を受け取った読者の方は、その日の夜に財布に余った小銭を入れてご返送ください。なお、おだちんはブログの運営とモチベーションの向上に役立てられます……。

デッドストック生地とは何か?

私はよく生地を紹介するときに、デッドストックとビンテージを区別しています。最近ではごちゃ混ぜに紹介されてしまうことも多いこの二つですが、実際には違うものとして私は考えています。

ビンテージ生地は、それこそ大体30年以上の年月がたった生地です。その色柄は決して使いやすいものばかりではなく、ともすると日焼けや傷等があって使い物にならないことも多いです。

私もビンテージ生地はいくつか持っていますが、重かったり、色柄が難しかったりであまりお客様にオーダーを頂くことはそれほど多くありません。

例えばこれは現在ストックしているグレーのビンテージ生地ですが、ベネシャンの雰囲気は好みの分かれるところでしょう。(ならラインが横向きになるように仕立ててもらいます)

私の持っている生地の多くはデッドストック生地なのですね。

これらの生地は現行のバンチには載っていないものが殆どですが、作られたのは20年〜5年ほど前であることが多く、ビンテージというほどには古くありません。

バンチの切り替えや廃盤などによって、メーカーから生地が大量に売りに出されることがあります。そういうときに生地小売店や仕立て屋などが、通常よりも安い価格でそれを買い占めるのです。もちろん単に普通に仕入れた生地が余ってしまうこともあります。

それが数年、数十年とたってデッドストックとなるのです。

まずデッドストックの生地は、バンチで買ったらとんでもない値段になってしまうような上質な生地が、お手頃な値段で買えてしまうことが多いことが魅力です。

例えば現在プロフェソーレ・ランバルディ静岡にはウールカシミアやウールシルク、Super 150’sなどのデッドストックがありますが、だいたいバンチで選ぶ際の1メートルの価格で、ジャケットやスーツが作れます。

またデッドストック生地には、その時々にしか出会うことのできない希少さがあります。

こちらはホームスパンのツイードに見えますが、実はシルク混ウールの春夏生地。バンチで探してもなかなか見つからない生地でしょう。

これを逃したらもう二度と出会えないかもしれない。しかもその色合いや生地感は独特であることも少なくなく、強烈な個性に一度惹きつけられたらもう逃れられなくなるというわけです。

デッドストック生地を巡る冒険

さて、それではどうやってそういったデッドストック生地を見つけてくるのか。

探す方法はいくつかあります。まずはサルトリアに尋ねること。サルトリアはやはりいい生地を持っていることが多い。例えばサルトリア・チャルディはとても良い生地のストックを持っていて、例えばドラッパーズの素晴らしい生地を比較的手頃な値段で売ってくれたりします。

もう一つは生地屋に聞くことです。

ナポリの生地屋には何度通ったことでしょう。彼らには顔を覚えられて、一緒に揚げピッツァを食べる仲になってしまうほどです。

しかしもっと面白いものはないかと常に目を光らせる。そしてついに私は英国の生地屋に問い合わせをすることにも至ったのです。

Dear Great Fabric Shop,

(偉大な生地屋どの)

There is no hope that you sell those dead-stock fabrics in London.

(もうそれらのデッドストック生地をロンドンで売れる望みはない)

Since London is already under serious pollution of Suitsupply.

(なぜならロンドンはすでにスーツサプライによる深刻なダメージを受けているからである)

We kindly ask you to send them all to Japan ASAP.

(至急それらの生地を日本へお送りいただくよう)

Grazie,

Signor Japanese
(どうも、ミスター日本人より)

実は英国にはまだまだ、その存在を知られていない生地がたくさん眠っています。

そして私は1週間もしないうちに紹介することになるでしょう。これまで日本では手に入らなかった、美しいアイリッシュリネンの生地も…。

ニコラ・ラダーノ所有のビンテージ生地でコートを仕立てる

こんばんは、プロフェソーレ・ランバルディ静岡のランバルディです。

またしてもNicola Radano ニコラ・ラダーノとの怪しい日本語が飛び交うチャットの中で、素晴らしいビンテージのカシミア生地の話題が出たために、私はこの生地を執筆しています。

Don’t tell anyone about this shop… (この生地屋は、誰にも教えてはいけないよ) No worries, I can never find this smallest shop again. (なに、ご心配なく。こんな小さい店、二度と見つけられないから)

先日、私がSartoria Ciardi サルトリア・チャルディのスーツを仕立てた際に、ニコラに譲ってもらったビンテージのカシミアで仕立てたことは、既にお伝えしましたね。

実はニコラはクレイジーな生地収集癖を持っており、ただのビンテージではなく、「最上級のビンテージ」ばかりを集めているのです。

ポルティチの自宅には生地だけを寝かせる部屋が一室あるほどです。

そして彼の集める生地は本当に最高級のビンテージだけです。

例えば彼はビンテージだからといって、30年前ならどこにでも落ちていたような生地は絶対に買いません。それは古いだけであり、なんの価値もないからです。

彼が買うのはその時代に素晴らしいとされていたもの。極上のカシミアやシルク混、モヘヤ、そして最高品質のウールなどです。

そしてそんな彼に譲ってもらったカシミアで仕立てたSartoria Ciardi サルトリア・チャルディのスーツは、間違いなくマスターピースになりました。

これがそのファブリックの写真です。1980年代のカシミア生地で、特にブランドの記載もないものです。

そして今回、またニコラが手持ちに素晴らしいカシミアがあるから、コートを作りなよ、と私に連絡してきたわけです。

それが、このピュアカシミア。

このカシミアは1986年に織られたもの。約30年前の生地で、あるナポリ近郊の生地店がその時代に購入した、正真正銘のビンテージです。

やや毛足の長めのカシミアですが、美しい光沢感としっとりとした手触り、そして何よりもビンテージならではのコシの強さを兼ね備えた生地なのです。重さはちょうどよい約450g/mです。

なんて、ニコラがそう言っているだけなのですが、実際彼の言うことに間違いはありません。

そして今回は私がすでに十分なだけのコートを持っていることから、

「FUYAが作らないなら、プロフェソーレ・ランバルディ静岡でこの生地の注文を受けても良いよ」

ということになったのです。

そういうわけで、世界中で唯一当店でこの希少な生地のオーダーを受注することになりました。

もちろんグレーとネイビーで各1着ずつしかありませんので、先に決めて頂いた方に。

仕立てはSartoria Caracciolo サルトリア・カラッチオーロもしくはSartoria Ciardi サルトリア・チャルディにて承ります。

生地の価格は、ビンテージカシミアとは思えないお得な値段です。お問い合わせください……なんてのは当店らしくありませんね。メートルあたり€320、だいたい43,000円です。

ホーランド&シェリーのピュアカシミアが大体メートル80,000円ですから、なかなかお買い得ではないでしょうか。

何よりも、ニコラのプライベートストックで仕立てるコート。この上ない楽しみだと思います。

是非お問い合わせくださいね。

 

【ナポリ仕立て】秋冬におすすめのビスポークスーツ生地5選

こんばんは、プロフェソーレ・ランバルディ静岡の大橋です。

いきなり寒くなってしまい、まるで真冬のような装いで街を歩く人々を見かけます。なんのことはない、私も急な気温差で体調を崩し、「風邪を直すにはツイードのブランケットに包まってスコッチを飲む」という恐ろしいスコットランド的民間療法に頼って、未だ復活しきれずにいるところです。

さて今日は、Sartoria Caracciolo サルトリア・カラッチオーロならまだ間に合うかもしれない秋冬ジャケット、それにプロフェソーレ・ランバルディ静岡がおすすめする秋冬のビスポーク生地を5つ紹介します。

HOLLAND & SHERRY Classic Flannel HS1775 Suiting

まずおすすめしたいのはやはり、Holland & Sherry Classic Flannel ホーランド&シェリーのクラシックフランネルというバンチ。無地のフランネル生地というなんともクラシックな生地だけで何十種類も用意されたバンチは圧巻です。

このフランネル生地はベーシックなウール100%に始まるのですが、後半はSUPER 140’sウールのフランネルや、SUPER 160’Sにカシミアとシルバーミンクを混紡したフランネルも現れ、上質かつバラエティに富んだバンチと言えます。

そして私のおすすめはやはり前述の、SUPER 160’Sにカシミアとシルバーミンクをプラスした生地。上の写真の生地がそれにあたります。

この生地は毛足の短めのフランネルで、光沢が美しく、しなやかな手触り。比較的軽めの生地感でありながらも、コシがあってスーツにぴったりなんですね。

CACCIOPPOLI Flannels & Cottons Nr.5703

同じく無地のフランネルでおすすめなのが、ナポリの名門生地卸商であるカチョッポリのフランネル。

Flannels & Cottons フランネル&コットンという名前のバンチで展開されているカチョッポリのフランネルですが、非常にベーシックな色合い、ビスポーク向きの比較的しっかりとした目付け、なめらかな手触りが秋冬のナポリ仕立てにはおすすめなのです。

もちろん生地のクオリティだけで言えばホーランド&シェリーには敵わないかもしれません。なぜってホーランド&シェリーは非常に高級な生地なのです。

しかしその色合いと風合いはやはりイタリアを感じさせるもの。

どうしてもホーランド&シェリーや他の英国生地にはないこの雰囲気が欲しくなってしまったら、お土産を買ったつもりでカチョッポリを選ぼうじゃありませんか。

ERMENEGILDO ZEGNA i preziosi

珍しくイタリアのメジャー所のファブリックです。

基本的にエルメネジルド・ゼニアのような生地はナポリのサルトリアで使われることは多くないのですが、しかしこのカシミアに関して言えば、流石としか言いようのない出来なのです。

内モンゴルで採れるカシミアを使い、上質な濡れたような光沢を持つブルーやグレーに仕上げた生地。

カシミアの生地にも色々ありますが、絶対的な存在量が少なく、流通経路がものを言う上質なカシミアはやはりロロピアーナやエルメネジルド・ゼニアが有力と言われていますね。

280g/mと軽めの生地でピュアカシミアですので、スーツというよりはジャケット向きです。

HOLLAND & SHERRY Sherry Alpaca HS1790A Jacketing

さて、再びホーランド&シェリーですが、今回のおすすめはSherry Alpaca シェリー・アルパカというアルパカを中心としてふんわりと柔らかい生地を揃えたバンチ。

の最後の方になぜか入っているウールカシミア、すなわちアルパカとはてんで関係のないこの生地こそが、今回のおすすめです。

こちらもスーツではなくジャケット向きの生地ですが、何よりもこのビンテージ感溢れる色柄!この感じが気分の方は少なくないはずです。

SUPER 110’Sウールにちょこっと%のカシミアが入った生地のため、繊細過ぎず日々の着用でも痛みにくいですし、それでいて柔らかさも兼ね備えている。つまり大変使い勝手が良いわけですね。

そのわりにその雰囲気はまるでビンテージの生地です。

本物の秋冬のビンテージ生地など、まるきり着ていられないほどゴワゴワのものも少なくありませんが(そうでないものはむしろ上質で希少です)、これならストレスなくビンテージテイストの着こなしを楽しむことができますね。

PURE ESCORIAL

さて、最後のおすすめはプロフェソーレ・ランバルディ静岡がどこからともなく仕入れている怪しく簡素な生地サンプル

実はビンテージとまではいかないものの、最新のコレクションとも言えない一種のデッドストック生地。英国のある老舗ミルが織った、ピュアエスコリアルの生地です。

エスコリアルといえばカシミアの1%以下の生産量しか作られない、幻のウールなんて言われています。

ブリオーニ等のプレタポルテでは100万円近いプライスがつきます。

こちらは秋冬ものというよりは合い物でかなり軽めの生地ですが、クォーターミルドといった具合でしょうか、わずかに起毛感があり、主に秋冬春に着て頂けるファブリックですね。

何よりの特徴はエスコリアルらしい光沢とハリ。

ウールにもエスコリアルより華々しい光沢を持つものはたくさんありますが、しかしこの英国製エスコリアル生地はそれにプラスして、非常に強いハリを持っています。

このハリはシワに強いだけでなく、サルトリアが目指す立体感を鮮明に再現する力となるのです。

繊細すぎる生地は立体感が出づらく、なんとなく抑揚に欠けるスーツになりがちですが、このエスコリアルなら最高級の美しさを持ちながら、ビスポークスーツならではの美しいシルエットを実現してくれます。

ぜひ、試してみませんか。

【ナポリ仕立て】ビスポークに適した生地の条件とは?

こんばんは、プロフェソーレ・ランバルディ静岡の大橋です。

今日はこの静岡市鷹匠と周辺2つの地区が合同で「みてたバル」という、前売りチケット制のイベントが開催されています。

プロフェソーレ・ランバルディ静岡もこの超絶ローカルイベントにさりげなく参加しており、ニュイ・エトワーレという高級紅茶とプロフェソーレ・ランバルディでお客様にお出ししている珈琲(ランバルディブレンド)を販売しております。

今なら紅茶をご購入の方に、+26万円のアップチャージでカラッチオーロのMTMスーツをプレゼント!!

皆さまのお越しをお待ちしております。

さて、何はともあれ今日は皆さんにビスポークの際の生地選びについて、ひとつお話させていただければと思います。

ビスポークには、どんな生地が適しているのか?

ナポリ仕立てのビスポークスーツを作るとき、大きく悩むのは何か。

一番悩むのは間違いなく「その資金をどのように集めるか」、そして次に悩むのは「どのようにして家族にバレずにワードローブに加えるか」。

そして、どんな生地で仕立てるか。

家にいるときには何か明確なイメージがあったはずなのに、いざ店まで赴いて仕立てる段になると急に迷い始めてしまい、挙句に全く違う雰囲気のものをオーダーしてしまう。

そしてそれが吉と出るか凶と出るかは、スーツが上がってこないことにはわからない。

そういうわけで、ビスポークをするのがちょっと怖いと感じる人もいるでしょう。

ですから今日は皆さんに、私がニコラ・ラダーノに教わったことを中心に、ビスポークに適した生地の選び方を紹介します。

繊細すぎず、こしの強さがあること

まずビスポークの際に重要なのは、その生地が繊細すぎず、ハリコシがある生地であること。

既製服ではラグジュアリーな生地を使うことが少なくありませんよね。

Super 180’sのウールやピュアカシミアの生地。もちろんそういったものが悪いというわけではありません。むしろそのようなラグジュアリーな生地で仕立てれば、やはり贅沢なビスポークスーツが出来上がるのです。

注目すべきは、同じ呼ばれ方をされている生地(例えば同じSuper 180’s)でも、織り方やメーカーなどによって全く異なるということです。

ビスポークをするときには、こしが強くて目の詰まった生地を選ぶのが大切です。

それはビスポークスーツを長持ちさせるという意味もありますし、仕立て栄えをよくするという目的もあります。

柔らかな生地には、まるで滑り落ちるようなしなやかさがあります。

そういったしなやかな生地はもちろん美しいのですが、ビスポークスーツのように体に対する完璧なフィッティングを目標としてスーツを仕立てる場合には、立体の再現力が足りない場合があるのです。

逆にコシのある生地は、アイロンワークや縫い方で自由に立体を作っていきます。つまり体のあらゆる部分をしっかりと包み込むような、美しいシルエットが生み出せるのです。

ちなみにその点で、ホーランド&シェリーは大変バランスが良いですね。

厚すぎず、重すぎないこと

 

しかしここに大きな誤解が生じます。

それはビスポークスーツを仕立てるのには、コシがあって重量があり、目が詰まって厚さのある生地が仕立て栄えして良い。そしてそれはビンテージ生地こそが持っている特性なのだ…と。

もちろんその気持ちはわかるのです。

厚手の生地であれば着ているうちに風合いも増していきますし、長く着込んでいきたいビスポークにはぴったりでしょう。

しかしそういったいわゆるビンテージ生地的なヘビーさを持っている生地が、一概に良いとは言い切れません。

なぜか。

まずはその「仕立て栄え」です。もちろん先ほども書いたようにハリやコシのある生地は立体感を生み出しやすく、体に沿った美しいシルエットを作り上げるのに向いています。

ですがシンプルに重厚な生地を使ったジャケットを見て、それが「美しい」と感じるでしょうか。

例えばドーメルのSPORTEX VINTAGEのような分厚い生地を使った場合、ジャケットは全体的にぼってりとした雰囲気となります。ラペルやフロントカットのエッジが厚くなり、ステッチワークやアイロンワークが生み出す陰影は感じにくくなります。

もちろんその丸みがある雰囲気も素敵なのですが、「仕立て栄えがする」といっても、この雰囲気をよしとするかはその個人によります。

ですからその点は自身で判断して、選ぶようにする必要があります。

例えばナポリ仕立ての手縫い感を楽しみたいのであれば、むしろ薄めの生地の方がその軽快さが際立つでしょう。冬物であれば260g/m 〜 280g/mのフランネルなども良いかもしれません。

また合い物であれば、長い期間に着られるのもやはり軽めのものですね。

逆に全体的に丸い雰囲気、重厚な感じが欲しければやはりビンテージ調の重量がある生地にしましょう。

自分に合う色を選ぶこと

最後に意識すべきなのは、その色が自分に合うのか、はたまた自分の好きな色であるかどうかです。

何を今さら、という感じもしますがこれは大事なことです。

例えば生地のバンチや、どこかのショップがストックしている生地のコレクションなどを見ていると、その生地の希少性ゆえにそれで仕立てたくなってしまうことも少なくありません。

しかし特にビンテージの生地などでは、お世辞にもオシャレとは言いかねるような色合い、柄のものが少なくありません。

ビンテージの生地は難しいよ。だって…ビンテージなんだからね。こっちに好きな柄で質もなかなかの生地があるのに、ビンテージだから、という理由でこっちのヘンテコなチェック柄を選ぶのは無意味なことさ。(ナポリのある職人)

非常に珍しく、価値のある素材であったとしても、仕立て上がったときの色柄が好みのものでなければ、それは間違ったビスポークと言えるでしょう。

 

ですからまずは自分に似合う色や、柄であるかを最優先しましょう。

そしてそんな中に、上質な素材で織られた、豊かな光沢とコシの強さがある、希少な生地があったら…それはとても幸運なことなのです。