こんにちは、プロフェソーレ・ランバルディ静岡の大橋です。

今日は皆さんに、ときどき私が店頭でお客様に聞かれるナポリ仕立てに関する質問を5つご紹介いたしましょう。

謎とコマーシャリズム(lol)に包まれたナポリ仕立ての秘密、本当に知りたかったことが書いてあるかもしれません。

Q1. ナポリのサルトリアには、ランクがあるのですか?

ナポリのサルトリアの仕立てにランク付けをして、それを一位から順番に並べようとするのは大変ナンセンスなことです。なぜなら顧客は自分の好きな仕立てをするサルトリアを見つければ、それで良いのですから。

しかし確かに、ナポリのサルトリアにはクオリティの差が存在します。それはそのサルトリアがより上手い、下手というよりは、そこの職人たちが常に真面目に仕事と向き合っているか、あるいは数をこなすことばかりを考えているかという違いです。

Sartoria Piccirilloにて。見えない部分まで時間を掛けて丁寧にこなす彼らは、いかにも職人らしい。

ですから例えば非常に有名なサルトリアでも、数をこなすために職人たちの気持ちが入っていなければ、必然的にクオリティは下がってしまいます。無名なサルトリアでも、向き合って作られた服は素晴らしいクオリティなのです。

とはいえやはり、評価されているサルトリアはやはり素晴らしい技術と、職人としてのプライドを持ったサルトを抱えており、彼らが作る服はやはり素晴らしいことが多いですね。

大事なのは自分の目で、その仕立ての良さを判断することなのです。

Q2. ナポリのサルトリアは、どのような人を顧客に持っているのですか?

また仕立てにランクはなくとも、そこに集まる顧客や値段によって、サルトリアは自然と棲み分けがされています。

例えばLondon House ロンドンハウスはもはやサルトリアではなくハイブランドのような存在です。

Sartoria Ciardi サルトリア・チャルディやSartoria Panico サルトリア・パニコはナポリの上流階級がこよなく愛する老舗のサルトリアですね。

Sartoria Ciardi サルトリア・チャルディのアトリエ。英国調のチェスターフィールドソファ、マホガニーの内装と、イタリア式ルイ15世様式の家具。そして彫刻やブロンズに、ペルシャ模様の絨毯。全てナポリの上流階級が愛するスタイル。

あくまでこれは傾向ですが、老舗サルトリアは現地の富裕層(医師、教授など)と東アジア、ドイツ、イギリス等のファンによく愛されており、値段が比較的手頃で小さく古いサルトリアは現地の庶民(と私)の味方です。

値段が高くて新しいサルトリアは強いスタイルを持っていることが多く、むしろ海外のビスポークファン達の顧客を多く持っているようです。

そして値段が手頃で新しいサルトリアは、これから成長していくところ。その仕立てに共感するナポリの若いウェルドレッサー達と、世界中のナポリファンによって育てられていく存在です。

Q3. どうして老舗のサルトリアでは一着のスーツを仕立てるのに、2年も掛かることがあるのですか?

それはそのスーツに取り掛かるまでに1年7ヶ月かかっているからかもしれません。

スーツやジャケットは、もし一着をずっと作り続けているのであれば、いくら丁寧に作ったとしても、実際には数日もあれば作ることができます。

しかしサルトリアでは一着ずつ仕立てるのではなく、いくつものスーツやジャケットを並行して作っていきます。そのため、ナポリの現地で愛されているような標準的なサルトリアでは、だいたい1〜2ヶ月で一着のスーツが完成するのです。

Sartoria Ciardi サルトリア・チャルディは非常に丁寧に服を仕立てるが、納期は現地で約3ヶ月。

ナポリの現地では仮縫いまで1〜2週間、そのあと中縫いまで1〜2週間、そして完成まで1〜2週間という具合です。もちろん必要があればその間にもフィッティングをしたりします。

ちなみに老舗サルトリアでも、普通は3〜4ヶ月あればスーツもジャケットも上がってきます。

もし2年も掛かったとしたら、それは仮縫いに行くといって中々行けなかったり、受け取りが遅れていたり、あるいは1年7ヶ月の間その注文が忘れられていたからかもしれません。

Q4. ナポリではどのようなスーツが愛されていますか?

ナポリの紳士達はもちろんスーツを着ることも多いですが、やはりジャケットを愛しているようです。

スーツの場合には無地のネイビーやグレーが多く、強いストライプや派手な柄物の仕立て服を着ている人はそれほど多く見かけません。ただ秋冬になると、グレンチェックなど英国調のスーツを着ている人もいますね。

ナポリの高名な医学博士であったランバルディ教授のワードローブにあった服はこんなラインナップ。夏物はリネン100%のベージュやイエローのジャケット、合い物はカラフルなコットンスーツ、秋冬ものは英国調のチェック柄スーツ。

ジャケットの場合、春夏ではリネン素材のジャケットを着ている紳士がとても多い印象です。ベージュ、ブルー、グレー、ブラウン、ネイビーなど思い思いの色合いのリネンのジャケットを、ライトグレーのトラウザーズや、白のコットンパンツなどで着ている人を多く見かけます。

しかしやはりナポリは一人一人が好きなように生活している街です。

着こなしに好みはあれど、これを着なければならないというような決まりはなく、誰がどんな着こなしをしていようと基本的には気にしていません。

一つ気にすべきことがあるとすれば、日没後のナポリを一人で歩くときに、あまり裕福に見えない服を選ぶことでしょうか。

Q5. ナポリは本当に他の街よりもサルトリアが多いのですか?

イタリアにはたくさんのサルトリアがあると言われますが、やはりその中でもナポリは特殊です。これは街を歩いていれば感じることです。

例えば夏のローマを歩いていて、ジャケットを着ている人はそれほど多く見かけないでしょう。観光客が多いから、というのもありますが現地人でもそんなにジャケットを着る人は多くありません。

しかしそこから一時間、フレッチャロッサに乗ってナポリに到着すると、あまりにも多くの人が襟付きのシャツを、更にはジャケットまでも着ていること気づくのです。

「撮るなら彼を撮れよ!俺はなんにもこだわっちゃいないからさ」と左の男性。しかしすぐ乗り気になって、ベストショットまで何枚も繰り返し撮る羽目に。右の男性はもちろん仕立て服を着ているが、そうでなくても真夏にジャケットを着ている男性が非常に多いのに驚く。

そしてジャケットを着ている紳士達を見ていると、日本はもちろん世界中のどの場所と比べても高い割合で、仕立て服を着ています。

例えば今から静岡の駅前を5時間歩いても、仕立て服を着ている紳士には1人会えたら奇跡というほどです。しかしナポリのキアイア通りを5時間歩けば、きっと20人以上の仕立て服を着た紳士に出会うでしょう。

そして彼らを支えているのが、ナポリに数百と存在するサルトリアなのですね。

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